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しおりを挟む「…何に困ってる?」
尋ねられ、答えていいものか考えあぐねて首を振る。
「すみません。……」
「ん?」
光彦の手が固く握りしめた葉人の手を包み込む。
「頼りない?」
「いえ…そうじゃ…」
「俺は恋人を守りたいけど?」
恋人と言われ、くすぐったくてついはにかむと、光彦は小さく笑った。
「泣き顔よりいいね。小田切はよく笑う生徒だったのに、近頃は悩んでるみたいだったから」
「え…」
「悩みを分け合いたいって思うのは駄目か?」
…分け合う…
甘い響きだと思った。
あの日の放課後、教室で起こったことを、誰かに話してしまいたかった。
自分の事を拒否しない、受け入れてくれる人に聞いてもらいたかった。
受け入れてくれるだろうか?
そのことを聞いて、光彦はどんな反応を示すだろうか…と、考えて葉人は小さく首を振った。
昨日のことを、光彦は知って尚、自身を受け入れてくれたことを思い出す。
「オレ…お……」
握りしめた手に力を込めると、光彦は葉人の背中を優しく撫で始める。
「…っ……脅されてて…」
「……脅す?」
怪訝な表情をする光彦に目をやると、ふいにぽろ…と涙が溢れて手の上に落ちた。
「…オレっ……っ」
葉人は光彦の胸板に顔を埋め、泣きじゃくりながら、放課後に教室で起こったことと、そのことで脅されていると言うことを告げた。
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