放課後教室

Kokonuca.

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嘘1

3

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 威の胸を叩き、悲鳴にならない声を上げ始めた葉人の口を、威はとっさに両手で碗の形を作って塞ぐ。 

「ひ、…ぅ…っ……ひっ……」 
「腹で息をして。ゆっくり…ゆっくり…」 

 掠れそうになる意識の端で、葉人は威の声を頼りに呼吸を繰り返す。 

「ぅ……っ…、はっ…」 
「………落ち着いたか?」 
「…ぅん……も…大丈夫…」 

 階段で崩れ落ちた葉人を支えている威は、葉人の様子が落ち着いたのを確かめて少し距離をとった。 

「………」 
「…いつから?」 
「え?」 
「羽鳥と」 

 微かに痺れたような感覚のする手で手すりを掴み、震えないように力を込める。 

「威に…関係ないよ…」 

 こちらをじっと見つめてくる威の顔が見れなくて、顔を伏せたまま呟くように言う。 

「羽鳥のことが好きなのか?」 

 威に問われ、葉人はすぐに返事ができず、一呼吸分置いてうなずいた。 
 それを見て、威が眉間に皺を寄せる。 

「…なんで嘘つくんだ」 

 小さな頃から傍にいた威には、葉人のその答え方が嘘を言う時の癖そのものだとすぐに分かった。 

「え…」 

 嘘と指摘され、戸惑いながら首を振る。 

「葉が嘘つくときの癖くらい…知ってるよ」 

 その言葉に、葉人はもう一度首を振りながら心の中で繰り返す。 

 光彦のことが、好きなはず… 

「……何があった?保健室で葉は俺に好きだって言ったよな?」 
「………あんなの…ノリだよ」 

 足元を見つめ、視線を合わせないままボソボソと言うのは、嘘が後ろめたいものとしている葉人らしい行動だった。 

「葉が嘘ついてるかどうかわかるって言ったろ?」 
「っ……」 
「何があったんだ」 

 じりっとこちらに近寄られ、咄嗟に壁に身を寄せる。 

「……ぅ…嘘ついてないとか、オレの何を知ってるんだよっ!!」 
「葉?」 
「ずっと一緒にいたからって、威の知らないことだってあるんだっ……」 

 声が上ずり、涙が滲み始めたのが恥ずかしくなって目を乱暴に擦る。


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