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携帯電話
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しおりを挟むトイレに入り、口をゆすいで口内の苦味を拭う。
顔も司郎から掛けられたモノでベタベタだった。
滑りが取れるまで洗っていると、剣道着を着た浩平が扉を開けて入ってくる。
鏡越しに目が合うと、ぎょっと驚いた顔をした。
「あ、あれ?」
顎から垂れる水を拭いながら振り返ると、ああ…と納得したような声を漏らす。
「小田切かぁびっくりした」
「え?」
「いや、空手部の一年かと思ってさ」
そう言うと、葉人を通りすぎて小便器へと向かう。
「後ろ姿良く似てるねー」
光彦がそんな一年生がいると言っていたな…と思いながら、曖昧にうなずく。
「たけっち待ってるの?帰宅部だろ?」
懐っこい笑顔で尋ねられたが、司郎と屋上でコトに及んでいたとは言えず、軽く思案して答えた。
「よく分からないとこがあったから…質問しに行ってたんだ」
「相変わらず真面目だねー」
ばしゃばしゃと手を洗うと、じゃね…と言って出ていく。
トイレに一人ぽつんと残され、光彦に会いに行くか自分自身に問い掛ける。
できるなら、会わずに帰ってしまいたかった。
自分を『恋人』と言ってくれている光彦を裏切るような事をした後に、会いに行くには抵抗がある。
帰りたかったが、放課後になっても来ない事で、心配している光彦を放り出して帰ってしまう事もできなかった。
ポケットの中の壊れた携帯を握りしめる。
「……」
せめて携帯が使えたら、心配ないと伝えることができるのに…と唇を噛む。
二つに別れてしまった携帯から手を離し、葉人は化学室へ向かうためにトイレのドアを開けた。
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