放課後教室

裏切り

13

　右に曲がり、住所を確認する。 

　携帯電話のディスプレイに映る住所と同じ町内だった。 

「番地……」 

　そうは言っても全く知らない町内ですぐに分かる訳もなく、葉人は最後に書かれていたアパート名を頼りに深夜の住宅街をふらつく。 

　不審者だろうな…と思いつつも、アパートを探し続ける。 


　空には星ばかりがあり、新月のせいも相俟って暗い闇がどこまでも続く。 


　闇の中で目的地が見つからないと言う不安が神経を磨り潰してはいたが、葉人は気付かれないように抜け出してきた威のマンションに戻る気はなかった。 

　怒るだろうか？ 

　そう思うも止められない。 

　もっとも、怒られたところでこれから悠哉が訪ねてくるあの場所に居たくはなかった。 


　自分があのまま眠り続けたら、威は悠哉を抱いて次の日の朝には何事もなかったかのように顔を合わせたのだろうか？ 


　そう考え始めると、威の行動が裏切りに思えて首を振った。 

「違う」 

　威の事は責められない。 
　自分はさらに酷い事をしたのに… 

　けれど、 

　気付かれなければ……何をしてても分からない。 
　そう威が思う事にじわりと嫌悪感が頭をもたげた。 

「違うっ」 

　何か事情があるのだと思い込もうとするも、すべてが徒労に終わる。