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朝
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しおりを挟む「ドキドキしてる」
「うん」
「触って、いい?」
「もう、触ってるよ」
「…うん」
威の背中に手を回し、きゅっと力を込める。
「平気?」
「…うん」
その返事を聞き、威はそろりと葉人の背中へと手を伸ばす。
滑らかな背中にひたりと掌が触れた途端、葉人は微睡から急に醒めたように飛び上がった。
「っ」
「ごめん」
「…ちが……こっちこそ…ごめん」
無意識の行動とは言え、葉人は自分のしてしまった事に唇を噛んで俯いた。
自分で決めたはずだった。
威に抱かれると。
改めて、やり直すために…
「大丈夫…」
それは威に伝えると言うよりも、自らに言い聞かせる意味合いの方が強かった。
大丈夫。
もう、威は自分を傷つけない…と、理解しているつもりだ。
手を取って、緩慢とも言える動きで自分の胸に触れさせた。
「ドキドキしてる」
「さっきオレが言った」
「……」
ぷっとどちらとなく笑い出す。
小さなくすくすとした笑いに押されて葉人はもう一度威の体へと寄り添う。
「触って」
「いいのか?」
「うん」
「…肩、触るからな」
告げてから葉人の肩をそっと包むように抱き締める。
じんわりと、外気に触れて冷たくなった肌にその体温が沁み渡ってほっと息を吐く。
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