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朝
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しおりを挟むきしりとベッドが軋むと、それだけで葉人は大袈裟に飛び跳ねた。
「怖い?」
繰り返される問いかけに、微苦笑を口の端に浮かべて葉人は首を横に振った。
正直に言うと、恐怖は…ある。
ひゅ…と跳ね上がりそうになった呼吸を息を止めて堪えると、自分から手を伸ばす。
以前威に押さえつけられた時に起こした過呼吸は、奥底に閉じ込めた恐怖心からだったのだろうと、今なら理解していた。
記憶の蓋が閉じたままなら何気に触れる事も出来たが、あの時の事を思い出した葉人にそれは苦行に近い。
「……」
威に触れられ、押し倒されることに対する恐怖は拭えない。
「キス…して良い?」
ベッドの上で姿勢を正したまま向かい合い、そう許可を取る。
今更なその行動は、けれど違和感は感じない。
「うん。…葉のしたいようにしていいよ」
触れるか触れないかの部分で止めていた手を、そっと威の胸の上に置いた。
とくん
跳ね上がった心臓の音が、指先に響いてはっと身を引く。
「怖い?」
「…びっくり……した」
改めてそっと手を胸板に置くと、どくんと脈打つ音が聞こえてくる。
テンポの速いそれに耳を傾けるように、そっと口付けて寄りかかった。
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