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朝
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しおりを挟む「………場所変えるぞ」
土下座したままの威の首根っこを掴んで引きずり上げると、おろおろとする葉人へ顎をしゃくる。
その先にあるのは司郎がさぼる時にいつもいる屋上で、確かに今からならば人気もない。
無言で先を行く司郎の背中に申し訳なさを感じ、葉人は唇を噛んで重い足を上げた。
司郎が二人を見て何を悟ったのか、それを考えると気が塞ぎ、裏切ったのだと心の清い部分が責めてくる。
「…で?」
「あの……」
「見たままか?」
振り返った司郎の先にいる二人。
葉人を庇うように立ち、まっすぐ見てくる威を睨みつける。
「はい」
「ハナト。お前、知ってるんだろうな?」
「……はい」
司郎の言葉が重くのしかかる。
威が何をしたか、鷹雄と懇意の司郎が知らない筈がなかった。
初めて向けられるきつい視線に、知らず知らずのうちにぶるりと体が震え、足が笑う。
「先輩…ごめんなさい」
先程昇降口で威がしたように、葉人は膝を折って頭を垂れた。
「『好きだ』って言ってくれて、凄く嬉しかった。ちょっと乱暴だったりするけど…優しくしてくれてるって分かる」
じり…と音を立てて視界に入った司郎のスリッパを見つめて、「でも…」と続ける。
「先輩の一番じゃないから」
司郎がしゃがんだのか、影が動いて視界が暗くなる。
覗き込む、険しい目。
―――険しいけれど、真摯だ。
威の事を嫌いになれていたならば、迷わずその手を取った。
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