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放課後の教室で…
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しおりを挟む「葉!葉!大丈夫か?」
「ぅ…んっ」
見上げた亜矢子の手に握られたカッターナイフは大ぶりの物で、その姿だけで葉人は眩暈を起こしそうだった。
ずくずくとした刃の痛みは、なんともないと言おうとした葉人の言葉を奪い、血の気を下がらせる。
「お前っ!!何やってんだ!」
「なに…って……復讐?」
影に沈んだ瞳が虚ろから現へと変わり、かつてはきらきらとしていた双眸に憎悪の感情が満たされていく。
「復讐…かしら?」
どこか他人事のように言う亜矢子は、まともじゃないとはっきりと見て取れる。
「うぅん……そうね、…腹いせ、かな」
キチリ…とカッターナイフが音を立て、伸ばされた部分が光に当たってきらりと光りを零した。
「別れたのは…悪かったと思うが…」
「からかうなんて…酷いよ?」
「…なんのことだ」
「二人して、私の事笑ってたんでしょ?からかって、笑ってたんでしょ?」
思わず葉人と威が顔を見合わせ、アイコンタクトで何のことかと問いかける。
けれど二人とも当然のように答えは持っておらず、小さく首を振り合うしかできない。
「私、本気で威の事好きだったんだよ?」
さり…と足元の砂が靴底と擦れて音を立てた。
「何、言ってる…」
「それを、暇つぶしにするなんて、酷いと思う」
当事者が言うには酷くぼんやりとした物言いで、葉人は傷つけられた事よりもそちらの方が怖かった。
「何を言ってるか分からない」
「酷いよ」
「亜矢子っ!!」
「―――酷いっ!!」
キン…と鼓膜を突く絶叫と、ざりっと土を蹴りつける音がして葉人は突き飛ばされて地面に転がる。
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