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しおりを挟む「あのっ……お疲れ様です!」
そう声をかけると、一瞬の間を置いてから「ああ」とだけ返事が返る。
薄暗い照明の中でも、佐伯の周りだけ光っているような空気感に怯んで立ち竦んだ。
「 何をしている?」
入り口から動かない僕を不審に思ったのか、ファイルを捲っていた佐伯の手が止まってちらりと興味なさげにこちらを見た。
遠くから見ることはあっても、挨拶が出来るほど近づくことは初めてで……
佐伯は早期出世だけでなく、その仕事ぶりも有名だったし社長の義理の息子と言うことでも有名で、本当に僕にとっては雲の上の人だった。
視線からして質量を持っているような雰囲気で、興味なさげなのにその視界の中に入ると落ち着かない。
「資料探しなら手つだ 」
「結構だ」
短い拒否の言葉を返し、僕から視線を外した佐伯は筋張った指を伸ばしてもう一つファイルを取り出す。
こちらに意識が向いていないのはわかっていたが、一礼してからスチール棚の間を抜けて奥へと向かった。
スチール棚に納められていない資料はすべてこの奥に積まれている段ボールの中だ。
何箱か積まれた目の前の段ボールを覗き込む。
小林が取ってくるように言いつけた資料がこの箱の中のどれかに入っているはずで……
屈み込みながらもう少し……せめて分類して入れておいてくれたら楽なのにと、愚痴りながら幾つかの容姿の束を取り出す。
一つ二つと数え、年代を確認して行くと欠けている。
「あと一つ……どこだ? 早く持って行かないとまた怒鳴られるのに……」
ぶつぶつと独り言が漏れた。
薄暗い資料室はそれでなくても薄暗くて気持ち悪い、なのに端の方は光は届かないしで正直に言ってしまうと怖いの一言に尽きてしまう。
だから気を紛らわせるために言葉が止まらなかった。
「小林先輩が悪い人じゃないのはわかるんだけど、怒鳴るか 」
「すべてこんな状態なのか?」
ひっと喉の奥から漏れそうになった悲鳴はなんとか飲み込めたが、ぺたんと尻もちを突くのは防げない。
資料室の薄暗い明かりを背負った佐伯は、逆光のせいもあるのか圧しかかるような重圧をこちらに投げかけてくる。
膝の震えを誤魔化しながら立ち上がってみるけれど、それでも佐伯の方がはるかに高い。
「っ……し、資料ですか!?」
「年代も、系統もバラバラじゃないか」
そう言ったつもりはないのかもしれないが、佐伯の声が低く朗々としているせいか飛び上がりたくなるくらい威圧的に思えた。
「そう、ですね。元々……あった資料に、後から後から挟み込んでいったようです」
「そこの箱の中身も?」
「え、あ、あの、この段ボールは……と、特に、最近の ものが入れられています」
「最近の?」
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