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しおりを挟む田舎なせいか周りに同じ性指向の人はいなかったし、話にも上らなかったからか、怯えながらではあったが平穏に過ごせていたし、それでいいと思っていた。
心のままに愛を告げる憧憬はあったけれど、それだけだ。
結果自分の中で恋人を作るなんて一生ないと思ったし、一生そう言った経験もないまま生きていくのだと思っていた。
一人暮らしを始めた時に一瞬もしかしたらとは思いもしたが、数分前に会った人間と関係が持てるほど、飢えていたわけじゃない。
『gender free』から逃げるように出たところで襲われた時は、ただただ恐怖と嫌悪感で……
押さえつけられる恐怖も、他人に体を好き勝手に触られる怖さもあった。
だから、僕にはそう言ったことはもう起こらない、起こったとしても奇跡みたいなことなんだって言い聞かせていた。
前腕に赤い痕を見つけた。
以前に襲われた時に付けられた傷は見る度に気が塞いだが、両腕に残る赤い痕は……
「起きたか」
「っ!? お、おはようございますっ」
飛び起きて振り返ると、そこには一分の隙もなくいつも通りの佐伯が立っていた。
精悍で、冷たい顔をこちらに向けて見下ろしている。
「あ の、すぐに、支度を 」
両腕を見られないように背中に回し、ぎゅっと体を縮込めた。
「ああ。少し、買い物に行ってくる。準備しておくように」
ふいと普段通りの態度で部屋を出て行ったのは佐伯の優しさなのか、はっきりとはわからなかったけれど、佐伯がいる中で着替えれば否応なく緊張するのは分かる。
佐伯が作ってくれた時間を無駄にしないように、手早く着替えて髭を剃る。
鏡の中の自分は、唇が少しはれぼったく思う程度で何か大きく変わったところはない。
あんな経験をしても、冴えない自分は冴えないままだ。
何が起こったとしても、変わることがない……
「アヒルが白鳥になるわけもないのにな」
ぽつんと呟いた言葉は諦めが混じりすぎて、自嘲にすらならなかった。
少ない荷物を詰め終えるタイミングで佐伯が帰ってきたが、朝から買い物に行かなければならなかったようには見えない。
「ありがとうございました。準備は終わっています」
頭を下げて佐伯の艶のある靴の先を見る僕に、いつもと変わりない「そうか」の一言だけが返ってきた。
僕もそうだったように、佐伯も何が変わるということはない。
昨日のことはつまり、なかったことで正解なんだ。
資料室に立ち寄った時に、棚の間から小林を見かけて声をかけた。
「先輩、お疲れ様です」
「お。久しぶりだな」
上着を脱いで腕まくりして、ネクタイは邪魔にならないようにワイシャツのポケットに突っ込まれている。
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