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しおりを挟む「え!? 場所ですか!?」
「まずは自分が細部まで思い出せる部屋を用意する!」
物理的な話ではないのはなんとなく理解できたが、それと記憶のコツが一致せずに戸惑った。
「宮殿とか広くていいかもー?」
「はぁ?」と返せたかわからない。
「そこの、んーっと。部屋にあるものに記憶を結び付けて……記憶自体を覚えるってより、キーを……」
「ごめんなさい……全然わからないです」
「だよねー、ほら、お客様だ」
店長がぐぃっとピンクの頭を押さえつけ、「ベルが鳴った」と告げて彼を入り口の方へと押しやる。
僕に向き直った店長は垂れ目を何度か瞬かせてから、これならどうかな? と提案してくれた。
「まず、顔を見た時に感想を出す。難しく考えない。丸い顔だったな、とか、綺麗な顔だったな。何かに似ているな、とか、名前と関連付けた感想ならもっといいよね、出来事でもいいかも」
思わずメモをとり始めた僕に、店長の苦笑いが飛ぶ。
「そこまで真剣に聞かれると照れ臭くなっちゃう」
「す、みません 」
「いえいえ。あとは思い出すこと。繰り返しに勝る記憶法はないと思うのよね。暇な時にしないで、時間を作って繰り返し思い出すこと」
繰り返し……と口の中で呟く。
「そう。繰り返し来てくれないと顔忘れちゃうから」
ぴっと指差され、自分のことだと思い至って顔が赤らむ。
「冗談よ~。それじゃあ飲み物なんだけど 」
二、三、味の好みを聞かれている時に、背後から聞いた声が名前を呼んだ。
「 三船?」
会社ならばなんとも思わずに返事をできただろうに、振り返った先に見えた顔に呼吸が止まった。
目つきが悪いのを気にしているんだと言っていた目が、丸くなってこちらを見ている。
「小林先輩!?」
とっさに立ち上がってあわあわと頭を下げて「お疲れ様です」と言うと、小林は慌てて椅子に座るように促してきた。
「声でかいよ」
「わ……すみません」
成り行きで隣に座られ、落ち着いてしまうと何とも言えない気まずさが落ちてくる。
僕は、自分と同じ性指向の人間が出会いやすい場所と知って来た。
出会いやすいからと小林がそうだとは限らない。
そう言う目的抜きでも来てもいい、入りやすい雰囲気のある場所だと思う、立地的にも全然……隠れ家とか知る人ぞ知るって言うような場所でもないし。
だから何も知らずに入ったと言って言い切れる……はず。
誤魔化しの言葉を決めて口を開いた。
「偶然、で 」
「こばやしさーん!この前お持ち帰りしたイケメンな子はどうだったー?」
偶然ですねの言葉が、ピンクの頭の彼に遮られて……
おしぼりを出そうとした店長の手が止まり、僕たちは気まずさに視線を逸らした。
「 もう休憩の時間じゃない?」
「ふぇ?」
「ね? ねっ!!」
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