棘の鳥籠

Kokonuca.

文字の大きさ
58 / 76

57

しおりを挟む




「タオルこれな」

 思ったよりも普通な小林に、男同士だから恥ずかしがる必要がなかったのかとほっと胸を撫で降ろす。

「着替えもいるか?」

 ぴしりと畳まれたスウェットの上下を渡され、これもイメージと違うと目を白黒させた。

「ありがとうございます。風呂、広そうですね」
「んー? 普通じゃないかなぁ」

 スラックスを脱ごうとして何気に小林の視線がそれを追いかけているのに気がつき、顔の向きと視線のズレを思わず半眼で睨んだ。

「先輩!」
「や  見てないよ」

 そう言いつつも気づかれて開き直ったのか、視線ははっきりと足に注がれている。

「見てるじゃないですか!」

 スラックスを引き上げて抗議の声を上げるも、さっと小林の顔色が変わった。
 
「  おい、なんだそれ」 
 
 先程までの軽い言い合いの声音じゃない。
 
 急に冷たさを増した声にはっと怯えて後ろによろめくと、堪え切れずに尻もちをついてしまった。
 厳しい顔を見せられ、胸を押されるような息苦しさに小さな震えが起こる。

「足の、そこ」

 唇の傷や、目の周りの腫れにばかり気が行って、そこに何があるかなんてわからない。
 恐る恐る視線を伝って足に目を遣ると、太腿の辺りに止まっていることに気が付いた。
 そこは佐伯に力任せに掴み上げられた部分で、そろりとウエストのところから覗いてみると赤から紫の内出血を見せていた。

「あ   」
「泣いてた原因は    暴力、なのか?」

 ワイシャツを引き寄せ、ぎゅっと体を縮めて首を振る。

「違います!」
「じゃあそれなんだよ!」
「これは   駅の階段から、落ちて」

 嘘臭いとは自分が一番わかる。

「…………馬鹿にすんなよ」

 絞り出された声が怖くて、握り締めた手がカタカタと震える。

「医者行くぞ、診断書取って  」
「ちがっ !」

 咄嗟に小林に伸ばした腕の内側にも乱暴に掴まれた痕が赤く見えた。
 慌ててそれを隠し、もう一度握り込む。

「  ご 合意です 」
「    」
「合意なんです」
「そう言うってことは、暴力だけじゃないってことだな」

 血の気が下がった。

「あ……」

 言い逃れのしようがなくて、じりじりと後ずさる。

「あの、 す すみませ    僕、やっぱり 帰りますっ」

 脇を抜けて駆け出そうとしたけれど、小林の腕に阻まれてたたらを踏んだ。

「 ぁ、ごめ、  すみ、すみませ   」

 ふ、ふ、と息が切れ、うまく言葉が出ない。
 肩を掴まれたけれど、恐怖が勝って振り払ってしまった。

「  やっとどもらなくなってたのにな」 

 八の字になってしまった表情は同情なのか、扱いに困ってしまったのか僕には判断がつかない。 
 ただ やっぱり、拒否されるのが怖くて、逃げ出したくて仕方がなかった。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

上司と俺のSM関係

雫@不定期更新
BL
タイトルの通りです。読む前に注意!誤字脱字あり。受けが外面は一人称私ですが、砕けると僕になります。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

【完】君に届かない声

未希かずは(Miki)
BL
 内気で友達の少ない高校生・花森眞琴は、優しくて完璧な幼なじみの長谷川匠海に密かな恋心を抱いていた。  ある日、匠海が誰かを「そばで守りたい」と話すのを耳にした眞琴。匠海の幸せのために身を引こうと、クラスの人気者・和馬に偽の恋人役を頼むが…。 すれ違う高校生二人の不器用な恋のお話です。 執着囲い込み☓健気。ハピエンです。

BL 男達の性事情

蔵屋
BL
 漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。 漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。  漁師の仕事は多岐にわたる。 例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。  陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、 多彩だ。  漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。  漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。  養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。  陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。  漁業の種類と言われる仕事がある。 漁師の仕事だ。  仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。  沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。  日本の漁師の多くがこの形態なのだ。  沖合(近海)漁業という仕事もある。 沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。  遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。  内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。  漁師の働き方は、さまざま。 漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。  出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。  休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。  個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。  漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。  専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。  資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。  漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。  食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。  地域との連携も必要である。 沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。  この物語の主人公は極楽翔太。18歳。 翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。  もう一人の主人公は木下英二。28歳。 地元で料理旅館を経営するオーナー。  翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。 この物語の始まりである。  この物語はフィクションです。 この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

処理中です...