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青い正しい夢を見る
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しおりを挟む甲高いような、なのにしわがれてひび割れて低いような……
奥様が勢いよく開けた引き戸の音と共に、喉元に奥様の爪が掠った。
「 なんで、あんたは平気なの⁉ つが、番が、亡くなって 」
絞り上げられた襟に引きずられて僕の体勢が崩れて、腕の中から洗濯籠が転がり落ちる。
「お前がっ もっときちんと仕えないからっ」
空気を裂く音がして、視界がガクンとぶれた。
頬を張られたのだと理解する頃には反対の頬を張られて、細い指に嵌められた大きな石のついた指輪が頬に引っかき傷を残す。
「 っ」
「だからっあの子はここに帰ってこなかったし!ベータなんかと所帯を持つのよっ!」
痩せた手は撓る鞭の様で、骨に響く痛みに思わず腕で顔を庇うと、今度は頭に手が振り下ろされ始める。
やめて と懇願した所で、聞く耳を持ってもらえないだろう。
「それしかっ 能がないのにっ 子供もまともに 産めないっ なんてっ!」
頭を庇うと腹を蹴られ、流石にその時には声が漏れてしまって、胃の辺りを蹴り上げられた時には自然と胃の中の物がせり上がってきて震えが止まらなかった。
目元の傷を消毒しながら、野村さんが「傷が残るかも……」と呟く。
あの後駆け付けた野村さんと旦那様のお陰でなんとか引き離しては貰えたけれど、奥様の興奮状態は未だに治まっていないようで、時折微かに「役立たずのオメガが 」と僕の事を罵る声が聞こえてくる。
その声に野村さんは肩を震わせて、悔しそうに唇を噛んで僕の手当てを再開した。
「 これから……遥歩さんはどうするの?」
「……どう?」
問いかけられた言葉の意味が分からなくて、質問に質問で返すなんて失礼な事をしてしまった。
「僕は だって、跡取りを産む為に、連れて来られたから……」
擦り込まれた思考はそう返事を返す。
野村さんは案の定痛々しい表情をして、言葉を探して探して……それからやっと口を開いた。
「もう、正美さんはいらっしゃらないから この家の跡取りを望む事は出来ないのよ?」
そう告げられた言葉が最初は理解できなくて、小さく首を傾げた僕はどんな表情をしていたのか。
ただ、それが本来の目的で、僕の義務だったのに……
それを成せないとなった今、僕はこれからどうすればいいのか……
「 もし、遥歩さんが望むなら、外に出る事も出来る筈よ?」
柔らかな言葉に包まれてはいるけれど、それは「このチャンスに逃げて」と言う事だ。
正美さんが亡くなったからか、ここから出難いと言う感情は薄れていて、その言葉はずっと曇っていた僕の思考にさっと光が差した気がした。
「自由になれるわ」
そう小さく笑う野村さんは嬉しそうだけれど悲しそうだ。
「…………僕、は 」
白い紙に書かれた番号を思い出しそうになって首を振る。
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