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お可愛いΩ お可哀想なα
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しおりを挟む今日もオレ、六華は細やかな希望を込めて、ぐるっと遠回りしてカフェ『la fluorite』の前を通りがかってみるけれど、やっぱりまだお店は閉まったままだった。
「…………」
ほんの少しだけ足を止めて窺ってみたけど、それで中から誰かが声を掛けてくれるわけじゃない。この店のマスターでもあり、友人の薫の恋人である須玖里さんがいないかなぁと思うけど暗い店内に動きはなくて……
帰り道に話す相手もいないまま、ぼんやりと薫とその隣の喜蝶の家の前まで来て、更にがっかりするハメになる。
「……売家」
門の前に掛けられた看板にはそんな二文字が大きく書かれていて、それはもうそこに喜蝶が住んでいない事をはっきりとオレに告げるには十分な言葉だった。
看板の前に立ち尽くしながら隣の薫の部屋に視線を遣るけども……こちらも静まり返っていて、人がいるようには思えない。薫の部屋もカーテンが閉まったままで少しも揺れないのだから、誰もいないって思った方がいいのかな?
仕方なく鞄から封筒を取り出して門扉横の郵便ポストへと滑り込ませる。
昨日も、学校での出来事と連絡事項と心配していることを書いて入れたんだけど、薫から連絡は入らなかった。そんなことを気にする質じゃない子だってのは分かっているんだけど、もしかしたらノートを破った物だったのが嫌だったのかな?だから連絡をくれなかったのかな?なんて考えて、今日はちゃんとした便箋に書いてみたけど……
多分、そうじゃないのはオレ自身が一番良く分かってる。
何かがあったんだ。
でも、その何かを教えてもらえるほどの仲じゃなかったって、ことなだけで……
「仲間外れで やだな 」
家への道を立ち止まり立ち止まりしながら、ざり ざり と靴底で道路の砂を蹴散らしてみるけれど、どうにもならないことはどうにもならないんだから仕方ない。
「オレって、そう言う位置なのかな」
ぽつんと呟いて見上げた先は十階建てのマンションだ。
新しい割に空き部屋の多いそのマンションの九階の一室がオレの家、この時間だときっと双子の弟の銀花と幼馴染の仁と義がリビングでグダグダしているはず。
「にゃーん」
「にゃーん」
「にゃん?」
「にゃーん」
「にゃーん」
「にゃにゃ」
「何やってんの?」
圧の強い男子高校生が三人、横並びに並んで「にゃん」「にゃん」言っている異様な光景につい口を挟んでしまった。
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