144 / 303
おまけ 20
しおりを挟むテーブルの上に置かれたカップの中にはいい匂いをさせるホットワインがたっぷりと注がれていて、その香りに少し心が軽くなるような気がする。
クラドが甲斐甲斐しく椅子を引いて手招いてくれるのでそちらに寄ると、抵抗する間もないほどの素早さでさっとオレを抱え上げて椅子に座ってしまった。
細身のデザインの椅子は二人の体重を支えられるのかとハラハラもしたが、見た目の割にはしっかりしているらしくキシリとも音を立てない。
「わっ クラド様っ」
膝の上に座らされて、不安定な体勢に思わずクラドにしがみついたけれど、そのせいでますます恥ずかしい思いをする羽目になってしまった。
筋肉質な太腿の感触が尻の下にあるのを感じ取ってしまうと落ち着かなくて、「重いでしょうから」と理由をつけてそこから降りようとするも、クラドは腕の力を緩めようとはしない。ジタバタと足をバタつかせてみても、その腕はオレを離そうとはしない。
「俺を甘やかすと思って、少しだけこうさせてくれ」
細かい傷跡の残るがっしりとした手が縋るようにオレを抱き締める。
くすぐるようにうなじに息がかかり、すり と鼻先が皮膚に触れて追いかけるように体温がジワリと広がった。
「っ 」
自分のものより幾分高い体温は、そんな風に触れられるとゾクゾクとするような感触を思い起こさせるせいか、ぐっと唇を引き結ばなくてはいけなかった。
「無体なことはしない」
「 は、はい」
掠れた声で囁かれたそれを残念と思ってしまう自分のはしたなさに恥ずかしくなり、膝の上に置いた手をもじもじと弄りながら俯く。
そうするとどちらがお互いのものかわからない心臓の音がして、それに促されるようにしてクラドに凭れ掛かった。
ふわりと柔らかにクラドの匂いがして……
胸の内から湧き上がるような衝動に身を任せてしまいたい気持ちもあるのだけれど、慣れない部屋にいやいやと首を振る。
「昼間のこと……すまなかった、怖かったろう?もう陛下もいい歳だからあんなことはないと高を括っていた」
そう言うとクラドは抱き締める手に力を込めた。
「二人きりにするべきではなかった。虎の精力を舐めていた俺の怠慢だ」
「いえっ それはいいんですっ」
そう大きい声で返すと、クラドは窺うように「ん?」と首を傾げる。
「それよりも……ヒロのことを、あんなふうに思われていたのがショックで」
原因はすべてオレの思い込みなだけに、自分自身が情けないし悔しいしで鼻の奥がツンと痛む。
「ヒロが俺達の子供だと言うことは、俺達自身が十二分にわかっていることだ。陛下がどう言おうとも問題はない」
いつも熱いと感じるほど体温の高いクラドの手が、オレのふわふわとした猫っ毛を優しく撫でて宥めようとしてくれている。
27
あなたにおすすめの小説
あなたと過ごせた日々は幸せでした
蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜
レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」
魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。
彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。
★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
【蒼き月の輪舞】 モブにいきなりモテ期がきました。そもそもコレ、BLゲームじゃなかったよな?!
黒木 鳴
BL
「これが人生に三回訪れるモテ期とかいうものなのか……?そもそもコレ、BLゲームじゃなかったよな?!そして俺はモブっ!!」アクションゲームの世界に転生した主人公ラファエル。ゲームのキャラでもない彼は清く正しいモブ人生を謳歌していた。なのにうっかりゲームキャラのイケメン様方とお近づきになってしまい……。実は有能な無自覚系お色気包容主人公が年下イケメンに懐かれ、最強隊長には迫られ、しかも王子や戦闘部隊の面々にスカウトされます。受け、攻め、人材としても色んな意味で突然のモテ期を迎えたラファエル。生態系トップのイケメン様たちに狙われたモブの運命は……?!固定CPは主人公×年下侯爵子息。くっついてからは甘めの溺愛。
2度目の異世界移転。あの時の少年がいい歳になっていて殺気立って睨んでくるんだけど。
ありま氷炎
BL
高校一年の時、道路陥没の事故に巻き込まれ、三日間記憶がない。
異世界転移した記憶はあるんだけど、夢だと思っていた。
二年後、どうやら異世界転移してしまったらしい。
しかもこれは二度目で、あれは夢ではなかったようだった。
再会した少年はすっかりいい歳になっていて、殺気立って睨んでくるんだけど。
逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦
雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、
隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。
しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです…
オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が
なかたのでした。
本当の花嫁じゃない。
だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、
だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という
お話です。よろしくお願いします<(_ _)>
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる