言えない言葉

Kokonuca.

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「本命なんか…」 

 嘉納以外にいない… 


 ぐるぐると回る思考のせいで、どこをどう通って帰ったかも分からず、夕飯と明日の朝飯を買い忘れた。 
 マーガリンだけが入った冷蔵庫の前に座り込みながら、ぽっかりとした空虚感のある頭で考え続ける。 

「オレ、誰かと会ったっけ?」 

 密会? 

 そんなこそこそしなくてはならない相手とは… 


「───────会った」 


 はっと膝を叩く。 

 いや。 

 いやいや… 

 院長は父親で、そんな対象じゃない。 

「……」 

 対象じゃないが、勿論のこと嘉納はそれを知らない。 



「…勘違い…だ」 



 急いで携帯電話を取り出すも、嘉納の言葉が甦る。 



 ───貴方の気持ちが此方に無いのは承知している 



「そう思いながら、抱いてたってことは…」 

 それは…オレの気持ちなんかいらないってことか? 

 いらなくても抱けて… 

 ───気持ちなどなくても、貴方の体は十分魅力的です 

「……ヤれたら良かったって…だけか?」 

 わぁん と、自分の声が暗い部屋に響き、思いの外大きく聞こえて飛び上がった。 



.
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