蟲歯の王

ふらふら

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一話

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 3月27日、今日は数十年ぶりにおとめ座流星群が肉眼で見れると言われている。
 数十年ぶりという言葉に魅力的を感じたのか、多くの人が外に出て星を見ようとしていた。俺、黒井有栖もその中の一人で、星をより綺麗に見るため近くの山に来ていた。

「疲れた……」

 山の中間地点にある小さな休憩所に着き、俺はため息を吐いた。
 リュックの中から、お茶を取り出し口に流し入れる。
 暑くなっていた首が少し縮む。お茶が食道をグイグイと進んでいるのだ。

「ぷっはぁ!」

 お茶の泡がビールの泡の様で、まるで居酒屋で一杯やってる様な気分になった。中学生なので行った事はないが。


 一息ついた後、俺は持ってきたラジオの電源を入れた。
 山の中だからノイズが酷いが、0時を告げる時報が聞こえた。

「はい今晩はー。今日も始まりました深夜にやってるヒミツのラジオ番組、略してヒミラジ。座右の銘は広く浅く、ラジオMCの野田です」

 安っぽいBGMが流れラジオ番組が始まった。
 このラジオ番組が終わる頃が一番流星群が見える時間帯だ。
 俺はラジオを適当に聞きながら、地面に寝転んだ。



「それでは皆さん。良い夜を」

 夜の2時を告げる時報と共にラジオ番組は終わった。
 空にはまだ流星群は流れていない。
 眠たい、そう思っていると空に赤い光が走ったのが見えた。
 それは不気味な赤だった。例えるならカサブタの固まった血をかき集めて玉にした様な鈍く赤い光。

 不思議に思っているとラジオから耳をつんざく電子音が流れ出した。

「緊急放送です!外に出ている皆さんはただちに家か安全な場所へ逃げてください!繰り返します!外に……」

 緊急放送はそこで途切れ、ノイズ音が辺りに流れた。
 突然、空を切り裂く様な音が鳴り響く。
 ふと空を見ると空にはあの赤いが、蝶の様に踊っているではないか。
 持ってきた望遠鏡を使い、それを確かめる。
 赤いそれは変則的な飛行を繰り返し、夜空を舞う。
 それをやっと捉えた時、俺は言葉を失った。

 赤いそれは流星ではなく、何万匹はいるであろうミミズ達が不規則に絡み合った一つの塊であった。しかもそれには羽がある。
 巨大なミミズの塊が、大きなモンシロチョウの羽を生やして空を飛んでいる。
 化け物が羽を動かす度に、鱗粉の様なものが散り真っ暗な空を彩った。

 呆然としていると、ラジオからまたあの喧しい電子音が聞こえた。

「緊急放送です!外にいる人は何処でもいいので屋内へ逃げてください!早く逃げ」

 そこで途切れてしまった。今度はノイズ音は無く無音が辺りを支配した。


 その日、流星群が見れると浮かれていた俺が見たのは巨大な化け物だった。
 
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