蟲歯の王

ふらふら

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二話

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 荒れ果てた四角の部屋。
 その部屋の片隅でくたびれた雑誌を読みながら欠伸をする。隣ではラジオがノイズ混じりにニュースを流している。

「それでは未だ蟲の殲滅には至らないと……」

「えぇ、ですがご安心ください。我々カナミラティは必ず蟲の」

 俺はそこでラジオの電源を切った。

「おいおい有栖、最後まで聞こうぜ」

 部屋の真ん中にあるソファから身を乗り出して、村田カナブがいやらしく笑った。下品な顔だ。

「聞いたって無駄だ。蟲の殲滅なんて出来やしない。カナミラティお得意の演説なんて聞きたくないね」

 俺は雑誌を横に置き、ため息混じりに立ち上がった。


 4年前の3月27日、日本では数十年ぶりにおとめ座流星群が見れると言われていて多くの人が喜んでいた。
 だが実際に人々が見たのは巨大な羽を生やしたミミズの塊だった。後にその化け物はロヴォスと名付けられた。
 ロヴォスは悪臭を放つ液体を撒き散らしながら、日本各地を飛び回り人々を襲った。

 その液体には細胞の機能を停止させる未知の物質が含まれていた。今ではその物質をアンチリボソーム(AR)と呼ばれている。
 液体を浴びた者、ロヴォスの一部であるミミズに触れた者は数日の内に死んだ。

 当時は何故かTV、ラジオ、携帯等の機器が使えなかった為、情報が枯渇していた。
 その影響もあってロヴォスが現れて3日も経つ頃には、日本人口の3割が消えてしまった。その中には俺の両親もいる。
 備長炭の様に黒く変色した父と母の死体は今でもハッキリと覚えてる。
 思い出すと、頭に鉛が詰めこまれた様な気分になった。
 
「おーい有栖。そんな顔すんなって!今の時代にそんな辛気臭い顔をしてたらガチムチの野郎に犯されるぜ?」

 肛門辺りに強い違和感を感じた。見ると村田が笑いながら俺の尻にカンチョーをしているではないか。

「お前な……」

 自分よりも4歳年上の男がこんな事をするものだから、色々と馬鹿らしくなる。
 だがその馬鹿らしさで、幾らか気持ちが和んだ。
 感謝しながら村田の頭を軽く小突き、俺は笑った。

 村田カナブと出会ったのは3年前、北極行きの船の警護をしている時だ。
 富裕層や小金持ちの中間層は蟲の活動範囲外である北極、南極に建てられたシェルターに逃げた。
 その北極に向かう船を警護している時、上司だったのが村田カナブだ。
 村田もロヴォスのせいで両親を亡くしている。金も家も無い俺たちは直ぐに仲良くなる事が出来た。
 それ以来、何故か俺と村田は行動を共にする事が多くなった。

 
「おっそろそろ時間か……」

 村田がこちらに向かって、そう言った。
 ひび割れた壁に掛けられた時計を見ると、丁度12時だった。仕事の時間だ。

「今日も稼ごうぜ!」

 村田は俺の背中を叩く。痛えよ。
 俺も村田の背中を叩き返した、村田はガハハと明るく笑った。
 




 
 
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