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三話
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13時45分になった。
仕事場である浜辺に集まったのは俺と村田、それと二、三回見た事のある女だ。
灰色の空に似合う閑散とした浜辺。
その浜辺には幾つかの黒いゴムボートが打ち上げられている。
その内の一つを女が手で触れながら調べ始めた。
「ビンゴ……」
女はそう言ってこちらを向いた。右手には何かを持っていた。
「ちょっとそこの君たち、この箱を開けてくれない? 」
意味ありげに村田が俺の脇腹をつつく、こういう時は、きまって俺だ。
面倒に感じながらも、女から何かを受け取った。
受け取ったのは小さな木箱だった。テニスボールぐらいの小さなサイズだ。
「よろしく頼むわね」
そう言って女はまたゴムボートを漁り始めた。
村田は「見つけてくるわー」と言って何処かへ行った。
俺たちがやっているこの仕事はゴミ掃除と言われている。
目の前にあるゴムボートは、母国を蟲によって滅ぼされた難民が乗ってきたものである。
俺たちの役目はその難民を見つけ、始末する事だ。
非人道的な行為だが、それに反論する者など誰もいない。
食料をめぐって殺し合いが起きるこの時代、雀の涙しかない食料を見ず知らずの外国人に分ける人間などいるだろうか。
誰もが生きるのに必死なのだ。
だから難民を殺す事など悪くはない、そうしなければ自分が死んでしまう。
だが時々考える。そうまでして何故自分は生きたいのだろうか。
「くっそ……」
色々と考えていたせいか、手元が狂って木箱が落ちた。
落ちた反動で木箱の蓋が開いた。
緑色の錠剤が数個入った小さなビニール袋出てきた。
「ネオドグマ(ND)錠剤か……中々レアだな」
蟲が放つ液体には細胞の機能を停止させるアンチリボソームという物質がある。それを僅かに抑える薬がこのネオドグマ錠剤だ。
売れば3日は暮らせる程の金になる。
俺はネオドグマ錠剤をズボンのポケットに入れ、他に何かないか調べた。
「何だこれ……?」
箱の隅の方に小さな紙の切れ端と、ヤスデ干からびた死骸があるのが見えた。
紙には汚くhubr、と書かれていた。
他にも何か書かれているが海水が滲んでいるせいか読めなかった。
「どういう意味だろう? それにこの死骸は」
ヤスデの死骸に触れる。瞬間。極小の足が波打つ。そして体を捻じ曲げ俺の顔めがけて飛んできた。
死んでると思っていたそれは生きていたのだ。
「ちっ!」
空中ではたき落とそうとしたが失敗した。死骸は俺の口に侵入し歯茎、右上の犬歯辺りについてしまった。
「気持ちわりぃ……」
口に入ったそれを取ろうと試みるが、素早く小さいため中々捕まえられない。
目の端に海が映る。そうだ、海水でとろう。
波打ちぎわで海水をすくい口に入れる。
口の中にいるそれが浮いていくのが分かる。俺は思いっきり吐き出した。
「くそったれ」
それは、まだピクピクと動いていた。
踏み潰した。緑色の体液が飛び出し、辺りに薬品の様な匂いが漂った。
「何なんだよ全く……」
踏み潰したそれに唾を吐く。唾には少し血が混ざっていた。
まさかと思い、歯茎に触れる。
指に薄っすらと血がついた。どうやら噛まれたらしい。
「大丈夫? 」
後ろで声がした。
見るとゴムボートを漁っていた女が心配そうに立っていた。
「えっあの……」
言葉が詰まった。どう説明すればいいのやら。面倒くさい。
「何かあったら言ってね。相談にのるから」
女はそう言ってまたボート漁りに戻った。
仕事場である浜辺に集まったのは俺と村田、それと二、三回見た事のある女だ。
灰色の空に似合う閑散とした浜辺。
その浜辺には幾つかの黒いゴムボートが打ち上げられている。
その内の一つを女が手で触れながら調べ始めた。
「ビンゴ……」
女はそう言ってこちらを向いた。右手には何かを持っていた。
「ちょっとそこの君たち、この箱を開けてくれない? 」
意味ありげに村田が俺の脇腹をつつく、こういう時は、きまって俺だ。
面倒に感じながらも、女から何かを受け取った。
受け取ったのは小さな木箱だった。テニスボールぐらいの小さなサイズだ。
「よろしく頼むわね」
そう言って女はまたゴムボートを漁り始めた。
村田は「見つけてくるわー」と言って何処かへ行った。
俺たちがやっているこの仕事はゴミ掃除と言われている。
目の前にあるゴムボートは、母国を蟲によって滅ぼされた難民が乗ってきたものである。
俺たちの役目はその難民を見つけ、始末する事だ。
非人道的な行為だが、それに反論する者など誰もいない。
食料をめぐって殺し合いが起きるこの時代、雀の涙しかない食料を見ず知らずの外国人に分ける人間などいるだろうか。
誰もが生きるのに必死なのだ。
だから難民を殺す事など悪くはない、そうしなければ自分が死んでしまう。
だが時々考える。そうまでして何故自分は生きたいのだろうか。
「くっそ……」
色々と考えていたせいか、手元が狂って木箱が落ちた。
落ちた反動で木箱の蓋が開いた。
緑色の錠剤が数個入った小さなビニール袋出てきた。
「ネオドグマ(ND)錠剤か……中々レアだな」
蟲が放つ液体には細胞の機能を停止させるアンチリボソームという物質がある。それを僅かに抑える薬がこのネオドグマ錠剤だ。
売れば3日は暮らせる程の金になる。
俺はネオドグマ錠剤をズボンのポケットに入れ、他に何かないか調べた。
「何だこれ……?」
箱の隅の方に小さな紙の切れ端と、ヤスデ干からびた死骸があるのが見えた。
紙には汚くhubr、と書かれていた。
他にも何か書かれているが海水が滲んでいるせいか読めなかった。
「どういう意味だろう? それにこの死骸は」
ヤスデの死骸に触れる。瞬間。極小の足が波打つ。そして体を捻じ曲げ俺の顔めがけて飛んできた。
死んでると思っていたそれは生きていたのだ。
「ちっ!」
空中ではたき落とそうとしたが失敗した。死骸は俺の口に侵入し歯茎、右上の犬歯辺りについてしまった。
「気持ちわりぃ……」
口に入ったそれを取ろうと試みるが、素早く小さいため中々捕まえられない。
目の端に海が映る。そうだ、海水でとろう。
波打ちぎわで海水をすくい口に入れる。
口の中にいるそれが浮いていくのが分かる。俺は思いっきり吐き出した。
「くそったれ」
それは、まだピクピクと動いていた。
踏み潰した。緑色の体液が飛び出し、辺りに薬品の様な匂いが漂った。
「何なんだよ全く……」
踏み潰したそれに唾を吐く。唾には少し血が混ざっていた。
まさかと思い、歯茎に触れる。
指に薄っすらと血がついた。どうやら噛まれたらしい。
「大丈夫? 」
後ろで声がした。
見るとゴムボートを漁っていた女が心配そうに立っていた。
「えっあの……」
言葉が詰まった。どう説明すればいいのやら。面倒くさい。
「何かあったら言ってね。相談にのるから」
女はそう言ってまたボート漁りに戻った。
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