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王子様の裏側へようこそ
10 その手あげるべからず
────お前はなんで挙手してんだよ!!
昼休み中、俺と吉田が必死に練り上げた作戦はこうだ。
個人が参加できる種目は全部で5つ。
クラス対抗リレー: 人気種目&クラスのトップ層が集まる。俺には全く関係ないし、どうでもいい。
200m走: 初っ端のメイン競技。注目度も高く、確実に目立つ。αたちと全力疾走するなど公開処刑に等しい。却下。
借り物競争: 「好きな人」とか「可愛い子」とか、お題次第で事故が起きる。論外。
二人三脚: 地味。二人の息さえ合えば、適当な順位でやり過ごせるはず。
騎馬戦: 乱戦で目立ちにくいのはいいが、身長差で役割が決まるし、何よりあれは「戦争」だ。流血沙汰になりかねない。怖いからやめた。
というわけで、俺と吉田は、二人三脚でひっそりと嵐をやり過ごそうと考え、必死の思いで手を挙げた。
───なのに!!!
「えー! 白壁くん二人三脚!? 嘘!?」
「まじか、白壁が出るなら俺もやろっかな」
白壁が手を挙げた瞬間、教室の空気が一変した。
いやいやいや!!
お前は何をやっても目立つんだから、走るのが嫌でも、大人しく借り物競争にでも出てろよ!
ふざけんなクソ!
「えー、おいおい。二人三脚人気すぎだろ。……じゃあ、希望者は全員後ろでジャンケンなー」
二人三脚の希望者が後ろに集められる。
俺は移動中、必死に白壁を説得した。
「おい! 白壁!」
「んー? どうしたの?」
「お前、なんで立候補してんだよ! 降りろって!」
「あはは、ひどいな。俺のやりたい気持ちは無視?」
「お前がいると倍率が上がるんだよ! 俺はこの種目に命かけてんだ。お前とは背負ってる重みが違うんだよ。ほら、借り物競争とかどうだ? 選抜リレーと違ってワイワイできるし、お得意の『いい顔』ができるぞ? な?」
必死に「特設ステージ」を勧める俺に、白壁はそれはもう楽しげに呟いた。
「いやー、借り物競争って選ぶ方も選ばれる方も面倒だし、なにより揉めるから嫌なんだよね。ほら、僕、みんなから好かれてるからさ。……それに何より」
白壁が、ふいっと顔を近づけてくる。
「泉名と二人三脚、したくなっちゃって」
耳元で、誘うように、囁くように。
ゾワッと全身に鳥肌が立って、俺は焦って耳を押さえた。
白壁はそれを見て、満足げにクスクス笑いながら列に向かっていく。
(……こいつ、わざと俺に被せやがったな!!)
絶対に負けられない。
吉田との「平穏な体育祭」を守るため、俺は拳に力を込めた。
……そこで、ふと気づく。
あれ? 吉田は???
振り返ると、吉田は自席に座ったまま、手を合わせて拝むようなポーズをしていた。
『ごめん、俺やっぱ騎馬戦出るわ。ジャンケンで負けて200m走に回されたら死ぬし』
口パクでそう伝えてくる戦友の姿に、俺の血の気が引く。
この、裏切り者おぉぉぉぉっ!!!!
これじゃあ、ジャンケンをする意味がない。
このまま勝ったら、相手は確実に白壁になる。
それは、まずい。
「あ、俺も辞退しまーす!」とピンと手を挙げようとした瞬間、白壁が俺の腕を強引に掴み、ジャンケンの輪に引きずり出した。
「ジャンケン……ポン!」
「えーっと、パーの人が勝ち!」
(…………)
「えー! 白壁くんと出たかった~!」
「よっしゃ! 俺パーだ!」
パーだ。
俺の手が、白壁に掴まれたまま、勝手に綺麗なパーを出されている。
ポン、と肩を叩かれた。
横を見ると、肩を震わせて楽しそうに笑いを堪えている「悪魔」がいた。
「随分と……ふふ、気合の入ったパーだったね。ふ…一緒に頑張ろうね、泉名?」
───こうして、俺の地獄の第2幕が上がるのであった。
昼休み中、俺と吉田が必死に練り上げた作戦はこうだ。
個人が参加できる種目は全部で5つ。
クラス対抗リレー: 人気種目&クラスのトップ層が集まる。俺には全く関係ないし、どうでもいい。
200m走: 初っ端のメイン競技。注目度も高く、確実に目立つ。αたちと全力疾走するなど公開処刑に等しい。却下。
借り物競争: 「好きな人」とか「可愛い子」とか、お題次第で事故が起きる。論外。
二人三脚: 地味。二人の息さえ合えば、適当な順位でやり過ごせるはず。
騎馬戦: 乱戦で目立ちにくいのはいいが、身長差で役割が決まるし、何よりあれは「戦争」だ。流血沙汰になりかねない。怖いからやめた。
というわけで、俺と吉田は、二人三脚でひっそりと嵐をやり過ごそうと考え、必死の思いで手を挙げた。
───なのに!!!
「えー! 白壁くん二人三脚!? 嘘!?」
「まじか、白壁が出るなら俺もやろっかな」
白壁が手を挙げた瞬間、教室の空気が一変した。
いやいやいや!!
お前は何をやっても目立つんだから、走るのが嫌でも、大人しく借り物競争にでも出てろよ!
ふざけんなクソ!
「えー、おいおい。二人三脚人気すぎだろ。……じゃあ、希望者は全員後ろでジャンケンなー」
二人三脚の希望者が後ろに集められる。
俺は移動中、必死に白壁を説得した。
「おい! 白壁!」
「んー? どうしたの?」
「お前、なんで立候補してんだよ! 降りろって!」
「あはは、ひどいな。俺のやりたい気持ちは無視?」
「お前がいると倍率が上がるんだよ! 俺はこの種目に命かけてんだ。お前とは背負ってる重みが違うんだよ。ほら、借り物競争とかどうだ? 選抜リレーと違ってワイワイできるし、お得意の『いい顔』ができるぞ? な?」
必死に「特設ステージ」を勧める俺に、白壁はそれはもう楽しげに呟いた。
「いやー、借り物競争って選ぶ方も選ばれる方も面倒だし、なにより揉めるから嫌なんだよね。ほら、僕、みんなから好かれてるからさ。……それに何より」
白壁が、ふいっと顔を近づけてくる。
「泉名と二人三脚、したくなっちゃって」
耳元で、誘うように、囁くように。
ゾワッと全身に鳥肌が立って、俺は焦って耳を押さえた。
白壁はそれを見て、満足げにクスクス笑いながら列に向かっていく。
(……こいつ、わざと俺に被せやがったな!!)
絶対に負けられない。
吉田との「平穏な体育祭」を守るため、俺は拳に力を込めた。
……そこで、ふと気づく。
あれ? 吉田は???
振り返ると、吉田は自席に座ったまま、手を合わせて拝むようなポーズをしていた。
『ごめん、俺やっぱ騎馬戦出るわ。ジャンケンで負けて200m走に回されたら死ぬし』
口パクでそう伝えてくる戦友の姿に、俺の血の気が引く。
この、裏切り者おぉぉぉぉっ!!!!
これじゃあ、ジャンケンをする意味がない。
このまま勝ったら、相手は確実に白壁になる。
それは、まずい。
「あ、俺も辞退しまーす!」とピンと手を挙げようとした瞬間、白壁が俺の腕を強引に掴み、ジャンケンの輪に引きずり出した。
「ジャンケン……ポン!」
「えーっと、パーの人が勝ち!」
(…………)
「えー! 白壁くんと出たかった~!」
「よっしゃ! 俺パーだ!」
パーだ。
俺の手が、白壁に掴まれたまま、勝手に綺麗なパーを出されている。
ポン、と肩を叩かれた。
横を見ると、肩を震わせて楽しそうに笑いを堪えている「悪魔」がいた。
「随分と……ふふ、気合の入ったパーだったね。ふ…一緒に頑張ろうね、泉名?」
───こうして、俺の地獄の第2幕が上がるのであった。
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