149 / 166
第四章
対面
しおりを挟む
コンコンコンッ
わたしとペルル、シロガネを抱っこして、両手が塞がっているおとしゃまの代わりに、ベアティが応接室の扉をノックする。
すると応接室でおとしゃまの弟さん家族の対応をしていたミラが扉を開け、わたし達が揃って応接室に来たことを弟さん家族に告げる。
「ヴァイマル家の皆さま並びにご友人のエミリー様がおいでになりました」
おとしゃまに抱っこされ、応接室に入っていくと、それまでソファーに座っていた弟さん家族が立ち上がり、礼の姿勢を整えるのが見える。
「久しいな、アーデルハード」
「えぇ。本当にお久しぶりです、兄上、義姉上、ウィルフリードくん。
今日はバルドリックくんにルイーザちゃん、そして末娘のエルシーアちゃんに会えるのをとても楽しみにしていたんだ。
改めて、はじめまして、こんにちは。僕は君達のお父さんの弟で、アーデルハード・フォーグル。
なかなか挨拶に来られなくてごめんね。でも、これからはよろしくね」
そうふんわりと微笑んだ、おとしゃまの弟さんもとい、アーデルハードおじ様は、腰まであるアイスブルーの髪を後ろで束ね、同じくアイスブルーの長いまつ毛で縁取られたその目は、ブルー・ジルコンの様な透き通った柔らかい青。
おとしゃまと違って体の線が細く、まるで儚げ美人という言葉がピッタリな人。
「それと、僕の家族を紹介するね。妻のハンナと娘のカーラだよ。
ハンナ、カーラ、皆さんにご挨拶──」
「ウィル様、お久しぶりですわっ!!カーラは再びウィル様にお会いできる日を指折り数えておりました…っ!!
あぁっ!!ウィル様っ!!!!」
「「カーラっ!?!?」」
アーデルハードおじ様の話をぶった切り、いきなりウィルにぃに話し掛け、抱きつこうとするカーラ。
ウィルにぃはそんなカーラからサッと身を避ける。
「私は貴女に名前、まして愛称で呼ぶ事を許した覚えはありませんが?
私の事はヴァイマル伯爵家子息とお呼びください。フォーゲル子爵令嬢。
それと、叔父上の話に割り込み、あまつさえ婚約者でも無い異性に抱きつこうなどと、どの様な教育を受ければその様な行いができるのですか?」
ウィルにぃが冷え冷えとした目でカーラを睨みつける。
あのカーラとかいう、アーデルハードおじ様の娘、わたし達がこの部屋に入って来たときからずっとウィルにぃの事しか見ていなかった。
それにこの人、7歳なのにけばけばしい化粧だし、何より香水がきつ過ぎる…。
そりゃぁ、バルにぃ、ルーねぇ、エミリーちゃんが「うげっ…」「ないわね…」「あらぁ…」ってボソッと言うはずだよ。
「ウィルフリードくんの言う通りだ!!控えなさい、カーラっ!!」
アーデルハードおじ様がカーラを窘め止めようとする。
「そんなっ!!やっとお会いできたのに、どうしてそんな酷い事を言うの!?
それにわたくし、ウィル様に喜んでいただこうと、焼き菓子を作って参りましたのっ!!ひと口だけでも食べていただければ、きっとわたくしの事を好きになりますわっ!!」
しかし、窘めようとしたアーデルハードおじ様を押しのけ、応接室のソファーに置いてあったポーチから焼き菓子の包を取り出すカーラ。
ってか、この人ウィルにぃに名前を呼ぶなって釘を刺されたはずなのに、まだ愛称で呼んてるし。神経が図太いな…。
「どうかひと口でいいので食べてくださいませっ!!」
カーラは品を作りながらウィルにぃに近づき、取り出した焼き菓子包のリボンを解く。
すると、焼き菓子のいい香りではなく、形容のしがたい、なんとも嫌な臭いが漂う。
「うっ…ぅおぇっ…」
その嫌な臭いに、思わず嘔吐いてしまう。
何この臭い…!?!?目も鼻も喉も痛い…っ!!
「ふっ…ふぇぇぇ…っ」
少しでも嫌な臭いから逃げようと、自分の顔をペルルとシロガネに埋める。
「あぁぁっ!?!?誰だぁっ!!わたくしが作った焼き菓子を見て吐きそうになったヤツわぁぁぁぁっ!!!!」
いきなりカーラが黒茶色の髪を振り乱し、テラコッタ色の目を血走らせ、周りの人に睨みを効かす。
「「止めなさいっ!!カーラ」」
アーデルハードおじ様とハンナおば様がカーラを止めようとするも、子どものものとは思えない力で暴れ回り、なかなか押さえられない様子。
その逸脱した姿は、7歳という幼い令嬢ではまずありえない。
まるで何に取り憑かれている様だ。
それに、カーラの体から立ちのぼって視える黒いモヤ見たいな物は何っ!?!?
そんな様子が恐ろしくなり、思わず「ひぃ…っ!!」と短い悲鳴を上げてしまった。
その瞬間、カーラとわたしの目が合い、
「お前かぁぁぁ~~っ!!!!」
とアーデルハードおじ様とハンナおば様の制止を振り切り、わたしに跳びかかってきた…!!
わたしとペルル、シロガネを抱っこして、両手が塞がっているおとしゃまの代わりに、ベアティが応接室の扉をノックする。
すると応接室でおとしゃまの弟さん家族の対応をしていたミラが扉を開け、わたし達が揃って応接室に来たことを弟さん家族に告げる。
「ヴァイマル家の皆さま並びにご友人のエミリー様がおいでになりました」
おとしゃまに抱っこされ、応接室に入っていくと、それまでソファーに座っていた弟さん家族が立ち上がり、礼の姿勢を整えるのが見える。
「久しいな、アーデルハード」
「えぇ。本当にお久しぶりです、兄上、義姉上、ウィルフリードくん。
今日はバルドリックくんにルイーザちゃん、そして末娘のエルシーアちゃんに会えるのをとても楽しみにしていたんだ。
改めて、はじめまして、こんにちは。僕は君達のお父さんの弟で、アーデルハード・フォーグル。
なかなか挨拶に来られなくてごめんね。でも、これからはよろしくね」
そうふんわりと微笑んだ、おとしゃまの弟さんもとい、アーデルハードおじ様は、腰まであるアイスブルーの髪を後ろで束ね、同じくアイスブルーの長いまつ毛で縁取られたその目は、ブルー・ジルコンの様な透き通った柔らかい青。
おとしゃまと違って体の線が細く、まるで儚げ美人という言葉がピッタリな人。
「それと、僕の家族を紹介するね。妻のハンナと娘のカーラだよ。
ハンナ、カーラ、皆さんにご挨拶──」
「ウィル様、お久しぶりですわっ!!カーラは再びウィル様にお会いできる日を指折り数えておりました…っ!!
あぁっ!!ウィル様っ!!!!」
「「カーラっ!?!?」」
アーデルハードおじ様の話をぶった切り、いきなりウィルにぃに話し掛け、抱きつこうとするカーラ。
ウィルにぃはそんなカーラからサッと身を避ける。
「私は貴女に名前、まして愛称で呼ぶ事を許した覚えはありませんが?
私の事はヴァイマル伯爵家子息とお呼びください。フォーゲル子爵令嬢。
それと、叔父上の話に割り込み、あまつさえ婚約者でも無い異性に抱きつこうなどと、どの様な教育を受ければその様な行いができるのですか?」
ウィルにぃが冷え冷えとした目でカーラを睨みつける。
あのカーラとかいう、アーデルハードおじ様の娘、わたし達がこの部屋に入って来たときからずっとウィルにぃの事しか見ていなかった。
それにこの人、7歳なのにけばけばしい化粧だし、何より香水がきつ過ぎる…。
そりゃぁ、バルにぃ、ルーねぇ、エミリーちゃんが「うげっ…」「ないわね…」「あらぁ…」ってボソッと言うはずだよ。
「ウィルフリードくんの言う通りだ!!控えなさい、カーラっ!!」
アーデルハードおじ様がカーラを窘め止めようとする。
「そんなっ!!やっとお会いできたのに、どうしてそんな酷い事を言うの!?
それにわたくし、ウィル様に喜んでいただこうと、焼き菓子を作って参りましたのっ!!ひと口だけでも食べていただければ、きっとわたくしの事を好きになりますわっ!!」
しかし、窘めようとしたアーデルハードおじ様を押しのけ、応接室のソファーに置いてあったポーチから焼き菓子の包を取り出すカーラ。
ってか、この人ウィルにぃに名前を呼ぶなって釘を刺されたはずなのに、まだ愛称で呼んてるし。神経が図太いな…。
「どうかひと口でいいので食べてくださいませっ!!」
カーラは品を作りながらウィルにぃに近づき、取り出した焼き菓子包のリボンを解く。
すると、焼き菓子のいい香りではなく、形容のしがたい、なんとも嫌な臭いが漂う。
「うっ…ぅおぇっ…」
その嫌な臭いに、思わず嘔吐いてしまう。
何この臭い…!?!?目も鼻も喉も痛い…っ!!
「ふっ…ふぇぇぇ…っ」
少しでも嫌な臭いから逃げようと、自分の顔をペルルとシロガネに埋める。
「あぁぁっ!?!?誰だぁっ!!わたくしが作った焼き菓子を見て吐きそうになったヤツわぁぁぁぁっ!!!!」
いきなりカーラが黒茶色の髪を振り乱し、テラコッタ色の目を血走らせ、周りの人に睨みを効かす。
「「止めなさいっ!!カーラ」」
アーデルハードおじ様とハンナおば様がカーラを止めようとするも、子どものものとは思えない力で暴れ回り、なかなか押さえられない様子。
その逸脱した姿は、7歳という幼い令嬢ではまずありえない。
まるで何に取り憑かれている様だ。
それに、カーラの体から立ちのぼって視える黒いモヤ見たいな物は何っ!?!?
そんな様子が恐ろしくなり、思わず「ひぃ…っ!!」と短い悲鳴を上げてしまった。
その瞬間、カーラとわたしの目が合い、
「お前かぁぁぁ~~っ!!!!」
とアーデルハードおじ様とハンナおば様の制止を振り切り、わたしに跳びかかってきた…!!
118
あなたにおすすめの小説
(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅
あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり?
異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました!
完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
裏の林にダンジョンが出来ました。~異世界からの転生幼女、もふもふペットと共に~
あかる
ファンタジー
私、異世界から転生してきたみたい?
とある田舎町にダンジョンが出来、そこに入った美優は、かつて魔法学校で教師をしていた自分を思い出した。
犬と猫、それと鶏のペットと一緒にダンジョンと、世界の謎に挑みます!
公爵令嬢やめて15年、噂の森でスローライフしてたら最強になりました!〜レベルカンストなので冒険に出る準備、なんて思ったけどハプニングだらけ〜
咲月ねむと
ファンタジー
息苦しい貴族社会から逃げ出して15年。
元公爵令嬢の私、リーナは「魔物の森」の奥で、相棒のもふもふフェンリルと気ままなスローライフを満喫していた。
そんなある日、ひょんなことから自分のレベルがカンストしていることに気づいてしまう。
「せっかくだし、冒険に出てみようかしら?」
軽い気持ちで始めた“冒険の準備”は、しかし、初日からハプニングの連続!
金策のために採った薬草は、国宝級の秘薬で鑑定士が気絶。
街でチンピラに絡まれれば、無自覚な威圧で撃退し、
初仕事では天災級の魔法でギルドの備品を物理的に破壊!
気づけばいきなり最高ランクの「Sランク冒険者」に認定され、
ボロボロの城壁を「日曜大工のノリ」で修理したら、神々しすぎる城塞が爆誕してしまった。
本人はいたって平和に、堅実に、お金を稼ぎたいだけなのに、規格外の生活魔法は今日も今日とて大暴走!
ついには帝国の精鋭部隊に追われる亡国の王子様まで保護してしまい、私の「冒険の準備」は、いつの間にか世界の運命を左右する壮大な旅へと変わってしまって……!?
これは、最強の力を持ってしまったおっとり元令嬢が、その力に全く気づかないまま、周囲に勘違いと畏怖と伝説を振りまいていく、勘違いスローライフ・コメディ!
本人はいつでも、至って真面目にお掃除とお料理をしたいだけなんです。信じてください!
憧れのスローライフを異世界で?
さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。
日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。
ヒロインですが、舞台にも上がれなかったので田舎暮らしをします
未羊
ファンタジー
レイチェル・ウィルソンは公爵令嬢
十二歳の時に王都にある魔法学園の入学試験を受けたものの、なんと不合格になってしまう
好きなヒロインとの交流を進める恋愛ゲームのヒロインの一人なのに、なんとその舞台に上がれることもできずに退場となってしまったのだ
傷つきはしたものの、公爵の治める領地へと移り住むことになったことをきっかけに、レイチェルは前世の夢を叶えることを計画する
今日もレイチェルは、公爵領の片隅で畑を耕したり、お店をしたりと気ままに暮らすのだった
不倫されて離婚した社畜OLが幼女転生して聖女になりましたが、王国が揉めてて大事にしてもらえないので好きに生きます
天田れおぽん
ファンタジー
ブラック企業に勤める社畜OL沙羅(サラ)は、結婚したものの不倫されて離婚した。スッキリした気分で明るい未来に期待を馳せるも、公園から飛び出てきた子どもを助けたことで、弱っていた心臓が止まってしまい死亡。同情した女神が、黒髪黒目中肉中背バツイチの沙羅を、銀髪碧眼3歳児の聖女として異世界へと転生させてくれた。
ところが王国内で聖女の処遇で揉めていて、転生先は草原だった。
サラは女神がくれた山盛りてんこ盛りのスキルを使い、異世界で知り合ったモフモフたちと暮らし始める――――
※第16話 あつまれ聖獣の森 6 が抜けていましたので2025/07/30に追加しました。
転生能無し少女のゆるっとチートな異世界交流
犬社護
ファンタジー
10歳の祝福の儀で、イリア・ランスロット伯爵令嬢は、神様からギフトを貰えなかった。その日以降、家族から【能無し・役立たず】と罵られる日々が続くも、彼女はめげることなく、3年間懸命に努力し続ける。
しかし、13歳の誕生日を迎えても、取得魔法は1個、スキルに至ってはゼロという始末。
遂に我慢の限界を超えた家族から、王都追放処分を受けてしまう。
彼女は悲しみに暮れるも一念発起し、家族から最後の餞別として貰ったお金を使い、隣国行きの列車に乗るも、今度は山間部での落雷による脱線事故が起きてしまい、その衝撃で車外へ放り出され、列車もろとも崖下へと転落していく。
転落中、彼女は前世日本人-七瀬彩奈で、12歳で水難事故に巻き込まれ死んでしまったことを思い出し、現世13歳までの記憶が走馬灯として駆け巡りながら、絶望の淵に達したところで気絶してしまう。
そんな窮地のところをランクS冒険者ベイツに助けられると、神様からギフト《異世界交流》とスキル《アニマルセラピー》を貰っていることに気づかされ、そこから神鳥ルウリと知り合い、日本の家族とも交流できたことで、人生の転機を迎えることとなる。
人は、娯楽で癒されます。
動物や従魔たちには、何もありません。
私が異世界にいる家族と交流して、動物や従魔たちに癒しを与えましょう!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる