薔薇の花束を

ユウ

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ROSE 5

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ボクが迂闊だったよ……。
超セレブ学校のお昼といえば、屋上でとか教室でとかじゃないんだよねこれが……。

セレブ御用達の食事処……まぁ、学食みたいな所なんだけど、お昼時とあってなかなかの混雑するのは当たり前の場所が、別校舎
にある。

「ご、ごめんね?お昼ご飯、屋上で食べる約束だったのに食堂になっちゃって……」

その校舎を繋ぐ一本道を彼女と並んで歩いていた。

「別に気にしないでいいよ。君が場所が変わったからと迎えに来てくれて助かったからね」

むしろ変わってくれて嬉しい。

だって他の連中はボンボンばかりなのに、外で食事をしようものなら、彼らの執事やメイドが黙ってないだろう。

考えただけでも怖いわっ!

その点、何も考えてないアリスは無邪気にボクに他愛ない会話を振ってくる。

だが、その何ものにも囚われない性格が羨ましくもある。
 
「加賀美君、ほらあそこだよ!」

食堂に着くなり僕の袖を引っ張りつつ、見ればわかるほどの人の群れに突っ込んで行く。

度胸あるのね、アリスさんよ……。
ボクの足はちょっと……いや、かなり進まないね。

「あ、アリス先輩!こんにちわ~!!」

ピョンピョン跳ねる髪がこっちに向かって来る。

「猫宮くん!よかった~、来てくれるかなって心配してたんだよ?」

ボクらに……いや、アリスに駆け寄る後輩の間違いか……。
ボクは何故かこの猫宮に嫌われているらしく、彼女が見てない間はずっと睨んでくるのだ。

ふっ……視線で殺せるならもうとっくに他の視線(ファン)に殺されてるさ!

「何言ってるんスか。アンタに会いたくて新聞部はソッコーで終わらせてきましたよ!」

可愛らしい笑顔で引っ付く猫宮。
そして忘れずに、ボクへのドヤ顔。

別に羨ましいとか微塵も思わない。
だって、ボク女子だし?

「ね、猫宮くん近いよ~!」

「え、いいじゃない……ぶ、ブニャ?!」

赤面するアリスから突如猫宮が、引き剥がされた。

「ここを何処だと思っているんですか?彼女が困っているでしょう」

猫宮の首根っこを捕まえる白兎君。
登場の仕方が既にヒーローだ。

うむ、さすが期待の生徒会書記くん。
ルールに煩いだけある。

「ケガはない……アリスちゃん?」

その後ろから従兄弟の瑞月君がアリスに膝まづき、紳士な振る舞いで丁寧に彼女の手をシルクのハンカチで拭う。

……もうぶっちゃけ、分かるよね?
そう、既に『有栖川 メアリ』の逆ハーレムは成り立っているのだ!!

え、もう5話目でENDかって?
それは無いよー、アハハ!
だってこの乙女ゲーム……好感度がむっちゃ厳しくて、ほんの少しのセリフ選択でガタ落ちも有り得るんだ。
いわゆる『無理ゲー』……良くいえば『運ゲー』かな。

まあ、ボクには関係ないよ。

なんせ、攻略されるなんて真っ平御免だし、何よりもボク自身はひっそり静かに学園生活を過ごしたいのだ!

なのに……なぜボクがココに転生したのやら……。

前世のボクは本当にどうでもいい人間で、今の世界と代わってもらえるなら、是非前世の妹と代わって欲しいくらいだ!

このゲームに食入るようにハマってたのは妹だし、僕自身このゲームについてあまり詳しくはない。

だが、一つだけよーく分かることはある…………。

今この状況はヒジョーにヤバス。

食堂にて、イケメン金持ち集団に囲まれた主人公。

これは一つのイベントストーリーでもあり、一気に攻略者の親密度を増長させることが出来るはずなのだ!

だって妹が行ってたよ……『フラグは主人公と共にあるんだよ!』と。

ボクは別に彼女と親友になりたいワケでもないし、寧ろごめんだ!

あ、焦るな自分!

確か、妹曰く『攻略なんて、男の心を掴んだら終わりよ!』らしい……。
って事はだね、逆に考えて好感度を落とすことをすればいいんだよ『主人公』がな!

「───ね、加賀美くんはどうかな?」

「……ん?」

優雅に紅茶&考え事を楽しんでいたら、不意に話しを振られた。

「なんですかー?アリス先輩の話しを聞いてなかったんですか、加賀美先輩サイてーっす」

「人の話はちゃんと聞くべきだと俺は思うぞ?」

白兎君は別にいいとして、猫宮はかなりの悪意を感じるぞ。

「あぁ、ごめん……それで話って?」

なんとか青筋を立てずに微笑むボクを褒めて欲しいくらいだよ。

「あ……そのほら!来週学年テストあるでしょ?だから皆で勉強会とかどうかなって……」

アリスが心配な顔して小首を傾げる。
勉強会……か。
ふとボクは『分岐点の見分け方』の内容を思い出していた。

『誘われたら、条件を付けろ!』

……条件か……。
あぁ、神様なんて信じてないけど、ココはちょっと感謝しとくよ。

なんせ、『高校2年生』という進級を切っ掛けに乙女ゲームの登場人物の1人になってしまったんだからね。
彼女が何を目指してENDするか見物だけど、ボクが攻略メンバーから外されるためなら、何だってするよ。
例えそれが、君の恋路の邪魔だとしても……。

だから、口元が緩むのは見逃してほしいね?

「有栖川さんが誘ってくれるなんて嬉しいです。是非ボクも参加させて頂きますよ」

僕の返事に白兎君は早速日程を手帳に書き出し、瑞月くんは長い前髪で表情は読み取れないもののどこか嬉しそうだ。
猫宮は……まぁ、案の定『来んじゃねぇ!』って顔に書いてある。

「ほ、ほんとに?!わぁ、加賀美くんには何時も断られてばかりだったから、嬉しいよ!」

無邪気に笑う彼女を横目に誓う。

ボクは一人で居たいから、恋なんて知らなくても生きて行ける。

君のせいでボクの未来がBad Endにならないようにしないとね。

さぁ、これからが本番だよ!
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