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さて。この乙女ゲーム『クリスタル・マジック』の始まりは『始業式』に始まり『卒業式』にて終わる1年間となっている。
その始まりの場所だが、あれは確か、ミモザの景色に見とれたヒロインがふらりと立ち寄り、ランダム攻略者と「中庭」で出会うシーンなのである。
まぁ、出会う攻略者と言っても私の婚約者をいれて4人と結構少ない。
なんでもこのゲームは短期プレイを中心に作り上げられたものらしい。
ウキウキで購入した私が言うのもあれですが、結構一人一人のストーリーは短い!
けれど『皆様美しい!萌をありがとう!』の一言で片付くのが私なのである……。
まぁ、前世の気持ちは片隅に置き、そろそろ頃合いだ。
そっと中庭の中心にある植木の茂みに隠れた私はカミラをセットしスタンバイOK。
どんとこいですわ!
そこへ砂を踏む足音がこちらへと聞こえてきた。
「来ましたわね……!」
流行る心臓を抑えつつ、茂みの隙間から様子を伺う。
先に中庭に現れた人物はやはりヒロインの少女だった。
「わぁ……ミモザがいっぱい!」
晴天の下でくるくると回る少女は天真爛漫に笑っていた。
「あ、これ花壇に植えているのってもしかして……ガーベラ?ふふ、春が感じられる中庭なのね」
ちょこんとガーベラの花壇にしゃがみこみ、甘い笑顔で見つめる1人の少女。
そっとカミラに記念撮影は忘れずに……と。
「誰かいるのか?」
「……え?」
砂利を踏む音にビクリと少女の肩がはね、声のする方へと顔を向ける。
「あなたは……?」
一瞬、時が止まった。
太陽の光に反射して金髪が輝き、エメラルドグリーンの瞳が少女を捉えた。
弧を描いた口元からフッと笑う声が漏れる。
「私はシャーロック・リタージュだ。好きに呼ぶといいよ。さて、君は誰だい?」
シャーロック様の問いにぽかんとする少女。
まぁ突然綺麗な美男子が現れたら誰だって驚きますもの。
「あ、私はそのリリア・イングランド……と申します!ちょっと早めに来てしまったので散策をしていたんですけど、ここの場所に目を奪われてしまいまして……」
照れながら言うヒロインことリリア様。
可愛い姿にもう1枚、いや連写ですわね!
あぁ帰宅したあとはアルバム制作をしなくてはいけませんわね。
「そうか……。確かにここはガーベラやミモザが綺麗だな……」
「はい……綺麗ですね」
シャーロック様とリリア様が仲良く咲き誇るミモザを見上げる。
絵になる2人の間になんとも言えない甘い雰囲気……が流れている。
王子スチルを集めるとはリリア様なかなかやりますな。
「あの……ところで、えとシャーロック……くん?貴方はどうしてここに?」
「ん?私は人探しをしていてね……。入学式が始まるから呼ぼうかと思っていたんだ」
シャーロック様からの発言で私は夢から覚めた。
そう言えば私も入学式に向かわなければなりませんでしたわ!
別に忘れていた訳ではありませんわよ?ただ少しこの時が止まればなぁーなんて思っていただけですから。
しかし、ここで立ち去るのは困難。
なぜなら、この中庭を通って講堂を突き抜けた向こうに会場があるのです。
早速私はピーンチ!という状況ですわね。
「……ならもう会場に向かわれているのではないのでしょうか?私もそろそろ向かわないと行けませんし……」
そこへ助け舟を出すリリア様。
貴方は女神ですか!
「そうですね……。あの人も戻っているだろうから行きましょうか。宜しければ一緒に向かいますか?」
スっと手を差し出すシャーロック様。
「え……あ、はい!」
戸惑いながらもその手を取り、手を引かれながら会場に向かう2人を見送る。
「……ふぅ……やっとイベントクリア、ですわ!」
茂みから出た私は制服に付いた土や葉っぱを払うとカミラをしまいつつ、天を仰ぐ。
「これは満足ですわ……」
流石入学式イベント。
美男美女がミモザの木を見上げ、最後に手を取り合い会場に急ぐ。
リリア様……。
その名前はヒロイン初期の名前であるので覚えやすい。
これからリリア様にはシャーロック様のお相手として頑張ってもらわないと……。
私もお二人が仲睦まじくなれるように頑張りましょう。
そして、我が『見守る会』に華々しい歴史を飾ることでしょう。
そんな明日からの楽しみに私の口角が上がるのを感じつつ会場へと歩を進めるのだった。
その始まりの場所だが、あれは確か、ミモザの景色に見とれたヒロインがふらりと立ち寄り、ランダム攻略者と「中庭」で出会うシーンなのである。
まぁ、出会う攻略者と言っても私の婚約者をいれて4人と結構少ない。
なんでもこのゲームは短期プレイを中心に作り上げられたものらしい。
ウキウキで購入した私が言うのもあれですが、結構一人一人のストーリーは短い!
けれど『皆様美しい!萌をありがとう!』の一言で片付くのが私なのである……。
まぁ、前世の気持ちは片隅に置き、そろそろ頃合いだ。
そっと中庭の中心にある植木の茂みに隠れた私はカミラをセットしスタンバイOK。
どんとこいですわ!
そこへ砂を踏む足音がこちらへと聞こえてきた。
「来ましたわね……!」
流行る心臓を抑えつつ、茂みの隙間から様子を伺う。
先に中庭に現れた人物はやはりヒロインの少女だった。
「わぁ……ミモザがいっぱい!」
晴天の下でくるくると回る少女は天真爛漫に笑っていた。
「あ、これ花壇に植えているのってもしかして……ガーベラ?ふふ、春が感じられる中庭なのね」
ちょこんとガーベラの花壇にしゃがみこみ、甘い笑顔で見つめる1人の少女。
そっとカミラに記念撮影は忘れずに……と。
「誰かいるのか?」
「……え?」
砂利を踏む音にビクリと少女の肩がはね、声のする方へと顔を向ける。
「あなたは……?」
一瞬、時が止まった。
太陽の光に反射して金髪が輝き、エメラルドグリーンの瞳が少女を捉えた。
弧を描いた口元からフッと笑う声が漏れる。
「私はシャーロック・リタージュだ。好きに呼ぶといいよ。さて、君は誰だい?」
シャーロック様の問いにぽかんとする少女。
まぁ突然綺麗な美男子が現れたら誰だって驚きますもの。
「あ、私はそのリリア・イングランド……と申します!ちょっと早めに来てしまったので散策をしていたんですけど、ここの場所に目を奪われてしまいまして……」
照れながら言うヒロインことリリア様。
可愛い姿にもう1枚、いや連写ですわね!
あぁ帰宅したあとはアルバム制作をしなくてはいけませんわね。
「そうか……。確かにここはガーベラやミモザが綺麗だな……」
「はい……綺麗ですね」
シャーロック様とリリア様が仲良く咲き誇るミモザを見上げる。
絵になる2人の間になんとも言えない甘い雰囲気……が流れている。
王子スチルを集めるとはリリア様なかなかやりますな。
「あの……ところで、えとシャーロック……くん?貴方はどうしてここに?」
「ん?私は人探しをしていてね……。入学式が始まるから呼ぼうかと思っていたんだ」
シャーロック様からの発言で私は夢から覚めた。
そう言えば私も入学式に向かわなければなりませんでしたわ!
別に忘れていた訳ではありませんわよ?ただ少しこの時が止まればなぁーなんて思っていただけですから。
しかし、ここで立ち去るのは困難。
なぜなら、この中庭を通って講堂を突き抜けた向こうに会場があるのです。
早速私はピーンチ!という状況ですわね。
「……ならもう会場に向かわれているのではないのでしょうか?私もそろそろ向かわないと行けませんし……」
そこへ助け舟を出すリリア様。
貴方は女神ですか!
「そうですね……。あの人も戻っているだろうから行きましょうか。宜しければ一緒に向かいますか?」
スっと手を差し出すシャーロック様。
「え……あ、はい!」
戸惑いながらもその手を取り、手を引かれながら会場に向かう2人を見送る。
「……ふぅ……やっとイベントクリア、ですわ!」
茂みから出た私は制服に付いた土や葉っぱを払うとカミラをしまいつつ、天を仰ぐ。
「これは満足ですわ……」
流石入学式イベント。
美男美女がミモザの木を見上げ、最後に手を取り合い会場に急ぐ。
リリア様……。
その名前はヒロイン初期の名前であるので覚えやすい。
これからリリア様にはシャーロック様のお相手として頑張ってもらわないと……。
私もお二人が仲睦まじくなれるように頑張りましょう。
そして、我が『見守る会』に華々しい歴史を飾ることでしょう。
そんな明日からの楽しみに私の口角が上がるのを感じつつ会場へと歩を進めるのだった。
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