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椰子ふみの

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第一章

髪飾り

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「一応、見せておくね」

 フランチェスカさんがテーブルの上にドサリと封筒の山を置いた。

「マリア宛ての手紙。お茶会やパーティーへの招待状に仕事の依頼状、見合いの申込書」
「え? 私に? て、勝手に読んだんですか?」
「号外に載ったからね。読んだのは怪しい差し出し人の分だけさ。こちらで確認して、不要なものは捨ててしまうよ」
「あ、あの、仕事の依頼は確認したいのですが」
「悪いけど、まともな仕事はなかったよ。差し出し人を見ると、ゴシップ好きな貴族ばかり。仕事の振りをして、卒業パーティーの様子を聞き出すのが狙いさ。招待状も一緒だね」
「そうなんですか」

 がっかり。お店を開いた時にお得意さんになってくれるかもと期待してしまった。

「見合いは気にならないのかい?」
「それも話を聞き出すためなんじゃないんですか?」
「いや、これは金目当て、コネ目当てだね。流行のかんざしがマリアの発案だということが目敏い人間にはわかっているし、婚約がなくなったエスメラルダさんとつながりたい人間は多いからね」
「はあ。私、結婚するなら好きな人としたいんですよ。私の国ではそれが普通でした」
「ジェシーは?」

 ドキリとする。ジェシーさんは女の子みんなに優しいから、勘違いしたらダメなんだよね。

「今はそれどころじゃないんです。開店してから、色々考えます」
「面白くないねえ」

 私がにらむとフランチェスカさんは別に手紙を差し出した。

「マリアが読んでいい手紙はこの二通だけ」

 どちらも高級感あふれる封筒。厚みといいい、香りといい、ただものではない。
 薔薇のような封蝋のある封筒を開けてみると、ガブリエルさんからだった。

「十二月三十一日にボロワ家で年越しパーティーをするのでお越しください。だそうです。年越しパーティーって、一般的なんですか?」
「そうだね、一年の無事を神に感謝し、次の一年の幸福を願うので家族と一緒に過ごす人が多いね」
「デルバールはどうするんですか? お休みですか?」
「いや、盛大にパーティーをするよ。この街には独身男性が多いからね。癒やしてやるのさ」
「それなら、ガブリエルさんの招待はお断りします。パーティーの手伝いをさせてください」
「別に気にしなくていいよ。ガブリエルさんのパーティーに行けば、マリアも顔を売ることができて、店を開いてから助かるかもしれない」

 ちょっと、顔を売るということには惹かれるけど。

「お世話になっているのに出て行こうとしているんだから、きちんと仕事はしたいんです」
「わかった。じゃあ、頼むよ。後で招待状への返事の書き方は教えるから」

 私はうなずくと、もう一通の手紙を開けた。差し出し人はエスメラダさん。侍女たちの髪型のデザインを頼みたいのとよかったらパーティーにも出てもらいたいという。
 侍女たちって、たくさんいるよね。面白そう。パーティーの日は二十日。

「フランチェスカさん、エスメラルダさんの侍女の髪型デザインを頼まれたので行ってきていいですか? それに二十日にパーティーがあるそうです。参加してもいいですか?」

 参加して、また、フランチェスカさんを見て、力をもらいたい。

「もちろん。この手紙を持ってきたお使いはよかったら、今から一緒にエスメラルダさんのところに行ってほしいと待っているから」
「待たせてるんですか? すぐに行きます」

 アーネットさんから色々、お試し用のドレスを渡されたので、最近の私はすぐに出かけられる格好をしている。ただ、パンツスタイルのドレスはしばらくエスメラルダさん専用にしたいそうで、もらえなかった。
 お使いって、誰だろう。レオさんのわけないし。

「レオさん!」

 馬車の前にレオさんが立っていたからびっくりした。

「マリアさん、もう、私のことは目に入らないのかな」
「ハロルドさん! お二人で来られたんですか?」
「そう、私が手紙を届けに来たんだけど、どうしても、レオがついてくるって言うから」
「友人の護衛だ。ありがたく思え」
「あれ、ありがたく思うのはレオの方じゃない? 辺境領に出発する前に会いたかったんでしょ」

 ハロルドさんがからかうように言った。

「お仕事に戻られるんですね。寂しいです」
「あ、うん。俺もだ」

 照れ臭くなったのか、レオさんの耳が赤い。

「それより、マリアさんに頼みがあるんだろう」

 ハロルドさんをつついた。

「そう。大事な頼みなんだ。まずは馬車へどうぞ」

 どうぞと言ったのはハロルドさんだけど、レオさんが手を出してくれたので、そのエスコートで馬車に乗った。いつものワゴンも載せてもらう。レオさんとハロルドさんは私の向かいの席に座った。

「頼みというのはエスメラルダに髪飾りを贈りたいんだ。それを手伝ってほしい。短い髪に何を合わせたらいいか、わからないんだ。もちろん、報酬は払う」
「報酬はいりません。私もエスメラルダさんにお礼を渡したいぐらいなので。それでお店は決めていますか?」
「侍女からシーランがいいと聞いてきたんだが」
「あ、それなら大丈夫です。店長も知ってますから」

 最初にかんざしを作ったお店だ。あれから、何回かフランチェスカさんと一緒に行って、アクセサリーを作ってもらっている。

 シーランにつくと、店長自らが出てきた。

「すみません、この方がプレゼントを買いたいとおっしゃっていて、この間、デザインした髪飾りを持ってきていただけませんか?」
「わかりました。レオナルド様、ハロルド様、よくいらっしゃいました」

 さすが、店長。顔を見ただけで、誰かわかるの? あ、馬車の紋章でわかるのかな。
 さっと、個室に案内された。いまだに慣れないけど、レオさんやハロルドさんには買い物に来て、お茶を出されるのが普通みたい。

 テーブルの上に髪飾りが載せられたトレーが運ばれてくる。ガブリエルちゃんたちの卒業パーティーで思いついた振袖に使うような髪飾りだ。水引の代わりに糊で固めた紐で輪や流れを作ってもらった。その上の宝石の花が咲いている。

「今はサラサラした髪を見せていますが、少しコンパクトに固めて、こういう飾りをつけるとイメージが変わって、また、エスメラルダさんの新しい魅力が出てくると思うんです。特にこの中ではこちらの青系の髪飾りがいいと思います」

 ハロルドさんは悩みに悩んだ。レオさんは飽きたのか、途中で個室から出たりしていた。ハロルドさんはけっきょく、金色の流れに水色の宝石の花浮かぶ髪飾りにした。
 その水色はハロルドさんの瞳の色に似ているような気がする。

「私の国では求婚の時にかんざしや櫛をプレゼントすることがあったんですよ」

 そう言うと、ハロルドさんだけでなく、レオさんまでびっくりした顔になった。
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