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第一章
百貨店
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「ありがとうございます。すてきです」
ふふふふふ。
笑いが込み上げてしょうがない。
塗り直された真っ白な壁。アンティークな木の家具。って、アンティークではなく、この世界の今の流行なんだけど。大きな鏡。奮発したので、歪みのない高品質な鏡だ。明かりはすべて鈴蘭のような花の形だ。魔法で光るから、デザインが自由にできるらしい。もちろん、洗髪台もある。まずは一台だけだけど。
これが私のお店。
内装が終わるのは年明けだって聞いていたのに、出来上がりが早い。
ジグルドさんはニヤリと笑った。
「毎朝新聞の記事に腹が立ったのはこちらも同じでね。商人ギルドが後押ししている店舗を怪しい店扱いされて黙ってはいられませんよ」
少しでも早く店をオープンして、記事が誤報だったと世間に訴えたいらしい。
だから、小物売り場は気合が入っている。もう、品物も並べられている。メインはやっぱり、かんざし。ポップがかわいい。かわいいだけでなく、使用方法の説明のイラストもわかりやすい。ドライヤーの前には『髪つやつや』とびっくりしている女の子のポップが置かれている。
「これはカレラさんが?」
カレラさんが半笑いの顔で首を振った。
「誰だかわかります? アンディさんなんですよ」
「はい、私です」
イケオジのアンディさんが赤くなった。
うーん、見かけによらない。
「まさか、こんな才能があるとは思わなかったよ。実はギルドで経営している他の店のポップもアンディに描いてもらってるところなんだ」
ジグルドさんが嬉しそうだ。
一階を一通り見せてもらったけど、さすが、抜かりなし。きれいなだけでなく、使いやすくなっている。
「ところで、マリアさん、二階の私室、内装は済ませたけど。家具はどうするんですか」
尋ねられて、気づいた。私、自分の物って、ワゴンぐらいじゃない? 服はあるけど、タンスがない。
デルバールの私の部屋の家具はすべて元からあった借り物なので、全部新しいものを買わないといけない。
ベッド、布団、枕、タンス、机、椅子。あ、ポットや鍋、皿もない。
「あの、色々、買わなくちゃいけないんですけど、おまかせってできないですか」
「そういうサービスはお得意様にしかやってないんですよ。マリアさんの好みを覚えるにはもう少し買い物をしていただかないと」
注文すれば、支払いと配達は商人ギルドで対応しておくから。そう言われて、おすすめの百貨店に行くことになった、
「二人で買い物してると、なんだか、新婚夫婦みたいだね」
そういうジェシーさんの笑顔がキラキラしてる。イケメン過ぎて困る。
「一人で買い物に行くのは危険ですよ、それにデートの約束をしてましたよね」
デルバールで誰か買い物に付き合ってと言ったら、手を挙げたのがジェシーさんだった。ジェシーさん、デルバールに入り浸り過ぎじゃない?
そう思ってたら、青騎士の仕事でデルバールのパトロールを担当しているらしい。モテるから、うっかり、デルバールの女の子に惚れたりしないだろうと判断されたらしい。
「でも、マリアちゃんに惚れちゃったけど」
ジェシーさんは告白してから、すぐにそんなことを言う。後ろに店員さんがついてきてるのに。ジグルドさんの連絡が行き届いていて、注文をすべて控えてくれる。
「このフライパンが高いのはなぜですか?」
私は店員さんに尋ねた。私だって、目玉焼きぐらいは作るからね。デルバールを出たら、節約のためにも少しくらい自炊しないと。
「裏をご覧ください」
ひっくり返すと魔方陣が描いてある。
「焦げ付き防止です。魔石を混ぜたインクで描かれていますので、三年程度、保ちます」
「これ、ください」
「マリアちゃんの手料理、食べてみたいな」
「私、料理は下手ですよ」
私の言葉を謙遜と思って、ジェシーさんはウンウンとうなずいている。
「結婚して、家に帰ったら、おかえりって、マリアちゃんが出てきたら最高だなあ」
ジェシーさん、夢見過ぎ。
でも、ジェシーさんと結婚したら幸せだろうな。好きな人と結婚するより自分を好きな人と結婚した方が幸せになれるって、そんな話、あったよね。女性と軽い付き合いばかりしてたらしいけど、私はその頃のジェシーさんを知らないし。平民同士で身分の問題もないし。
でも、なぜ、私なんだろう。
はっ、もしかして、これがえっちゃんの言っていた『おもしれー女』?
「ジェシーさん、私、誰と結婚しても、髪結をやめるつもりはないんだ」
「もちろん、やめろなんて言わないよ。でも、うちに帰ったら、お帰りって言ってもらえたら、嬉しいな。そんな経験がないから、返って憧れてるのかも」
髪結を続けて、ジェシーさんが帰るまでに家に戻るなんてできる? 働きたいなら、パートにしたらと言う人みたいだ。
「無理。私が仕事をしている限り、無理」
つい、言い方がきつくなってしまった。
ジェシーさんがショボンとしてしまう。
「すみません、次は机と椅子を見たいんですが」
ジェシーさんに声をかけづらいので、店員さんに話しかけた。
店員さんの案内に従って、別のフロアに移動する。
コンクリートのビルっぽいけど、こういう大きい建物は土魔法で作られているらしい。
展示されている机の高さを確かめようと椅子に座り、字を書くようポーズをとってみた。
机にはいかにも高そうなペンやレターセットが置いてあるけど、それには触らない。
「そういえば、マリアちゃんはレオと連絡取ってるの? 手紙とか」
ジェシーさんがボソリと言った。
「いえ、全然。でも、年末はアスターに戻るそうです」
「詳しいんだね」
「エスメラルダさんに聞きました。エスメラルダさんたちはパーティーが終わったら、辺境領に戻るそうで、入れ替わりにレオさんがエスメラルダさんのお屋敷の留守番に入るそうです」
「ふうん」
「エスメラルダさんとレオさんって仲がいいですよね」
「気になる?」
私は首を傾げた。
「レオって、女の子には怖がられることが多いんだけど、マリアちゃんは平気なんだね」
「怖いって、外見の印象ですかね? でも、レオさん、優しい顔をしてるから、ひげを剃って、髪を整えたら、ジェシーさんみたいにモテると思いますよ」
「モテていいの?」
また、私は首をかしげてしまった。
「年末、戻ってきた時に恋人を連れていたら、どう思う?」
「おめでとうございますって言います」
そう言いながら、何だか、ちくっと胸が痛んだ気がした。
ふふふふふ。
笑いが込み上げてしょうがない。
塗り直された真っ白な壁。アンティークな木の家具。って、アンティークではなく、この世界の今の流行なんだけど。大きな鏡。奮発したので、歪みのない高品質な鏡だ。明かりはすべて鈴蘭のような花の形だ。魔法で光るから、デザインが自由にできるらしい。もちろん、洗髪台もある。まずは一台だけだけど。
これが私のお店。
内装が終わるのは年明けだって聞いていたのに、出来上がりが早い。
ジグルドさんはニヤリと笑った。
「毎朝新聞の記事に腹が立ったのはこちらも同じでね。商人ギルドが後押ししている店舗を怪しい店扱いされて黙ってはいられませんよ」
少しでも早く店をオープンして、記事が誤報だったと世間に訴えたいらしい。
だから、小物売り場は気合が入っている。もう、品物も並べられている。メインはやっぱり、かんざし。ポップがかわいい。かわいいだけでなく、使用方法の説明のイラストもわかりやすい。ドライヤーの前には『髪つやつや』とびっくりしている女の子のポップが置かれている。
「これはカレラさんが?」
カレラさんが半笑いの顔で首を振った。
「誰だかわかります? アンディさんなんですよ」
「はい、私です」
イケオジのアンディさんが赤くなった。
うーん、見かけによらない。
「まさか、こんな才能があるとは思わなかったよ。実はギルドで経営している他の店のポップもアンディに描いてもらってるところなんだ」
ジグルドさんが嬉しそうだ。
一階を一通り見せてもらったけど、さすが、抜かりなし。きれいなだけでなく、使いやすくなっている。
「ところで、マリアさん、二階の私室、内装は済ませたけど。家具はどうするんですか」
尋ねられて、気づいた。私、自分の物って、ワゴンぐらいじゃない? 服はあるけど、タンスがない。
デルバールの私の部屋の家具はすべて元からあった借り物なので、全部新しいものを買わないといけない。
ベッド、布団、枕、タンス、机、椅子。あ、ポットや鍋、皿もない。
「あの、色々、買わなくちゃいけないんですけど、おまかせってできないですか」
「そういうサービスはお得意様にしかやってないんですよ。マリアさんの好みを覚えるにはもう少し買い物をしていただかないと」
注文すれば、支払いと配達は商人ギルドで対応しておくから。そう言われて、おすすめの百貨店に行くことになった、
「二人で買い物してると、なんだか、新婚夫婦みたいだね」
そういうジェシーさんの笑顔がキラキラしてる。イケメン過ぎて困る。
「一人で買い物に行くのは危険ですよ、それにデートの約束をしてましたよね」
デルバールで誰か買い物に付き合ってと言ったら、手を挙げたのがジェシーさんだった。ジェシーさん、デルバールに入り浸り過ぎじゃない?
そう思ってたら、青騎士の仕事でデルバールのパトロールを担当しているらしい。モテるから、うっかり、デルバールの女の子に惚れたりしないだろうと判断されたらしい。
「でも、マリアちゃんに惚れちゃったけど」
ジェシーさんは告白してから、すぐにそんなことを言う。後ろに店員さんがついてきてるのに。ジグルドさんの連絡が行き届いていて、注文をすべて控えてくれる。
「このフライパンが高いのはなぜですか?」
私は店員さんに尋ねた。私だって、目玉焼きぐらいは作るからね。デルバールを出たら、節約のためにも少しくらい自炊しないと。
「裏をご覧ください」
ひっくり返すと魔方陣が描いてある。
「焦げ付き防止です。魔石を混ぜたインクで描かれていますので、三年程度、保ちます」
「これ、ください」
「マリアちゃんの手料理、食べてみたいな」
「私、料理は下手ですよ」
私の言葉を謙遜と思って、ジェシーさんはウンウンとうなずいている。
「結婚して、家に帰ったら、おかえりって、マリアちゃんが出てきたら最高だなあ」
ジェシーさん、夢見過ぎ。
でも、ジェシーさんと結婚したら幸せだろうな。好きな人と結婚するより自分を好きな人と結婚した方が幸せになれるって、そんな話、あったよね。女性と軽い付き合いばかりしてたらしいけど、私はその頃のジェシーさんを知らないし。平民同士で身分の問題もないし。
でも、なぜ、私なんだろう。
はっ、もしかして、これがえっちゃんの言っていた『おもしれー女』?
「ジェシーさん、私、誰と結婚しても、髪結をやめるつもりはないんだ」
「もちろん、やめろなんて言わないよ。でも、うちに帰ったら、お帰りって言ってもらえたら、嬉しいな。そんな経験がないから、返って憧れてるのかも」
髪結を続けて、ジェシーさんが帰るまでに家に戻るなんてできる? 働きたいなら、パートにしたらと言う人みたいだ。
「無理。私が仕事をしている限り、無理」
つい、言い方がきつくなってしまった。
ジェシーさんがショボンとしてしまう。
「すみません、次は机と椅子を見たいんですが」
ジェシーさんに声をかけづらいので、店員さんに話しかけた。
店員さんの案内に従って、別のフロアに移動する。
コンクリートのビルっぽいけど、こういう大きい建物は土魔法で作られているらしい。
展示されている机の高さを確かめようと椅子に座り、字を書くようポーズをとってみた。
机にはいかにも高そうなペンやレターセットが置いてあるけど、それには触らない。
「そういえば、マリアちゃんはレオと連絡取ってるの? 手紙とか」
ジェシーさんがボソリと言った。
「いえ、全然。でも、年末はアスターに戻るそうです」
「詳しいんだね」
「エスメラルダさんに聞きました。エスメラルダさんたちはパーティーが終わったら、辺境領に戻るそうで、入れ替わりにレオさんがエスメラルダさんのお屋敷の留守番に入るそうです」
「ふうん」
「エスメラルダさんとレオさんって仲がいいですよね」
「気になる?」
私は首を傾げた。
「レオって、女の子には怖がられることが多いんだけど、マリアちゃんは平気なんだね」
「怖いって、外見の印象ですかね? でも、レオさん、優しい顔をしてるから、ひげを剃って、髪を整えたら、ジェシーさんみたいにモテると思いますよ」
「モテていいの?」
また、私は首をかしげてしまった。
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「おめでとうございますって言います」
そう言いながら、何だか、ちくっと胸が痛んだ気がした。
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