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ジョージの光
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ジョージ・カレイド。この自分の姓が国の名前であることに誇りを持って生きてきた。
子供の頃から優秀と褒められてきたが、それも当たり前だった。自分は次の王なのだから。カレイド王国を受け継いだ時にはもっと、豊かで素晴らしい国にしてみせる。そのために勉強するのも、剣や魔法を磨くのも苦ではなかった。
それに疑問を持つようになったのはいつからだろう。
社交界にデビューし、押し寄せてくる貴族に笑顔で挨拶を続けた時?
弟や妹が勉強をサボっても許された時? いや、そもそも、サボるという発想が自分にないと気づいた時かもしれない。
王太子であることは自然だが、それ以外の部分が自分にはあるのだろうか。
ハーモニー学園に入ると、ますます、その思いは強くなった。貴族、平民区別なく勉強するために姓を名乗らない。そんなことをしても意味はない。自分の王太子としての顔は知れ渡っている。生徒会も将来の政治センスを鍛えるための練習場だ。
ただ、簡単過ぎる。狭い世界のことだ。小さな船のような、この学園の世界をたまに揺らしてみたくなる。揺れて、何かが起きた時、それに対応できて初めて練習になるのではないだろうか。
ただ、自分がいるのに問題が発生したという事実が残るのは嫌だ。だから、想像するだけだ。もし、ハーモニー学園に何か問題が起きたら。
だから、入学式の前の日にドラゴンが現れたという事件が起きた時、なぜ、自分の前に現れなかったんだろうと残念に思った。少しは手応えのある相手かもしれない。それでも、自分が勝つことを当たり前のように考えていた。
そして、入学式の日、こともあろうにぶつかってきたのがヴィオラだった。すごい速度で肋骨がやられたかと思った瞬間、、手を握ってきた。しかも、その瞬間に痛みも朝から感じていた軽い頭痛も目の疲れも消えてしまった。
まさか、新しいアピールの手段だろうか。
舞踏会でもよろめいてくる女性は多かった。優しく支えて、その名前は覚えておき、要注意リストに入れて、その後は近寄らない。そのつもりでホールまでエスコートした。それっきりのつもりだった。
「ねえ、新入生の子がイアンさんに決闘を申し込んだって本当?」
生徒会で言い出したのはアネモネだった。
「ええ。私と同じクラスのヴィオラですわ」
むっつり黙り込んだイアンの代わりにジョセフィンが答えた。
「何でも百ます計算という計算で勝負するようです」
「あら、よりによって、イアンと計算で勝負するなんて」
「単に目立ちたがりの女なんですよ」
イアンが吐き捨てるように言った。確かにそうかもしれない。初日に王太子にぶつかり、次に入試成績一位のイアンに決闘を申し込む。しかもその内容が計算。恥をかくだけだと思った。
それが見事にイアンに勝った。おまけにイアンはそれから、生徒会の一員にするように強く勧めるようになった。
確かに、面白いかと思って彼女を生徒会に勧誘してみたら、嫌そうなのがさらに面白かった。おまけに授業ではドラゴンを召喚したという。
生徒会で見るヴィオラの姿は新鮮だった。すぐに入学式での出会いがわざとじゃないことがわかった。そう、野生の鹿のようだ。自由に跳ね、ぶつかってから不思議がるのだ。何を考えているのか、ここまでわからない相手は初めてだった。
そして、武闘会。前回、軽くあしらったライルは異常に強くなっていたため、相打ちになってしまった。
ヴィオラが修行に付き合っていたことは知っていたが、まさか、私の力を削ぐことが狙いだったのか?
疑って、武闘会の打ち上げで迫ってみれば、うぶなことがわかった。とても、工作ができるような者ではなかった。それなら、私のすることは一つしかない。修行に参加して、ライルが強くなった理由を知ることだ。
そう思っていたが、すぐに後悔することになった。生徒会ではヴィオラはアネモネやジョセフィンと仲良くしていたので気づかなかったが、ヴィオラが他の男子と近づくとイライラするのだ。人の話で聞いたことがあった。嫉妬だ。このジョージ・カレイドが嫉妬だと。自分を律さねばならない。
そう思っていたのにジョセフィンの屋敷に押しかけてしまった。おまけにジョセフィンには気づかれている。
ジョセフィンと婚約の噂が起きても、ヴィオラは何も思っていないようだった。ジョセフィンよりずっと下の扱いだ。
自分の妻になるのはジョセフィンのような高位貴族の娘か他国の王女だと思っていた。ヴィオラのようなわけのわからないものではない。それなのに自分の気持ちをどうすればいいか、わからない。自分にわからないことがあるなんて。
「ヴィオラの意識がないの。助けて」
ジョセフィンが教室に駆け込んできた時、一瞬で明かりが消えたような気がした。こんなにもヴィオラが自分の光となっているとは気付いていなかった。
呪い? なぜ、ヴィオラがそんな目に。ハーモニー学園という船を揺らしてみたいと思った罰だろうか。そんな馬鹿なことまで考えてしまった。最高の神官を呼んでもらう。無事を祈る。はっきりとわかった。ヴィオラが好きだ。
グラント領に見舞いに行けるように手を貸してくれたジョセフィンには感謝しかない。
ヴィオラの顔を久しぶりに見ると、心が躍るようだった。呪いの後遺症でピンクになった髪もヴィオラなら似合う。
見舞いに来たのはヴィオラに好意を寄せる者ばかりだが、負けるものか。
トムは焦っているようだが、ヴィオラには性急なアプローチは逆効果だろう。
ゆっくりと意識させてみせる。
グラント領の発展は素晴らしく、ヴィオラとの婚約を父や母に認めさせるのは簡単だろう。ただ、それでは意味がない。
ヴィオラは光だ。明るく輝くその光を強制によって曇らせてはならない。輝くような笑顔で「喜んで」と言ってもらわなければ。
さあ、本気で落としにかかろう。
子供の頃から優秀と褒められてきたが、それも当たり前だった。自分は次の王なのだから。カレイド王国を受け継いだ時にはもっと、豊かで素晴らしい国にしてみせる。そのために勉強するのも、剣や魔法を磨くのも苦ではなかった。
それに疑問を持つようになったのはいつからだろう。
社交界にデビューし、押し寄せてくる貴族に笑顔で挨拶を続けた時?
弟や妹が勉強をサボっても許された時? いや、そもそも、サボるという発想が自分にないと気づいた時かもしれない。
王太子であることは自然だが、それ以外の部分が自分にはあるのだろうか。
ハーモニー学園に入ると、ますます、その思いは強くなった。貴族、平民区別なく勉強するために姓を名乗らない。そんなことをしても意味はない。自分の王太子としての顔は知れ渡っている。生徒会も将来の政治センスを鍛えるための練習場だ。
ただ、簡単過ぎる。狭い世界のことだ。小さな船のような、この学園の世界をたまに揺らしてみたくなる。揺れて、何かが起きた時、それに対応できて初めて練習になるのではないだろうか。
ただ、自分がいるのに問題が発生したという事実が残るのは嫌だ。だから、想像するだけだ。もし、ハーモニー学園に何か問題が起きたら。
だから、入学式の前の日にドラゴンが現れたという事件が起きた時、なぜ、自分の前に現れなかったんだろうと残念に思った。少しは手応えのある相手かもしれない。それでも、自分が勝つことを当たり前のように考えていた。
そして、入学式の日、こともあろうにぶつかってきたのがヴィオラだった。すごい速度で肋骨がやられたかと思った瞬間、、手を握ってきた。しかも、その瞬間に痛みも朝から感じていた軽い頭痛も目の疲れも消えてしまった。
まさか、新しいアピールの手段だろうか。
舞踏会でもよろめいてくる女性は多かった。優しく支えて、その名前は覚えておき、要注意リストに入れて、その後は近寄らない。そのつもりでホールまでエスコートした。それっきりのつもりだった。
「ねえ、新入生の子がイアンさんに決闘を申し込んだって本当?」
生徒会で言い出したのはアネモネだった。
「ええ。私と同じクラスのヴィオラですわ」
むっつり黙り込んだイアンの代わりにジョセフィンが答えた。
「何でも百ます計算という計算で勝負するようです」
「あら、よりによって、イアンと計算で勝負するなんて」
「単に目立ちたがりの女なんですよ」
イアンが吐き捨てるように言った。確かにそうかもしれない。初日に王太子にぶつかり、次に入試成績一位のイアンに決闘を申し込む。しかもその内容が計算。恥をかくだけだと思った。
それが見事にイアンに勝った。おまけにイアンはそれから、生徒会の一員にするように強く勧めるようになった。
確かに、面白いかと思って彼女を生徒会に勧誘してみたら、嫌そうなのがさらに面白かった。おまけに授業ではドラゴンを召喚したという。
生徒会で見るヴィオラの姿は新鮮だった。すぐに入学式での出会いがわざとじゃないことがわかった。そう、野生の鹿のようだ。自由に跳ね、ぶつかってから不思議がるのだ。何を考えているのか、ここまでわからない相手は初めてだった。
そして、武闘会。前回、軽くあしらったライルは異常に強くなっていたため、相打ちになってしまった。
ヴィオラが修行に付き合っていたことは知っていたが、まさか、私の力を削ぐことが狙いだったのか?
疑って、武闘会の打ち上げで迫ってみれば、うぶなことがわかった。とても、工作ができるような者ではなかった。それなら、私のすることは一つしかない。修行に参加して、ライルが強くなった理由を知ることだ。
そう思っていたが、すぐに後悔することになった。生徒会ではヴィオラはアネモネやジョセフィンと仲良くしていたので気づかなかったが、ヴィオラが他の男子と近づくとイライラするのだ。人の話で聞いたことがあった。嫉妬だ。このジョージ・カレイドが嫉妬だと。自分を律さねばならない。
そう思っていたのにジョセフィンの屋敷に押しかけてしまった。おまけにジョセフィンには気づかれている。
ジョセフィンと婚約の噂が起きても、ヴィオラは何も思っていないようだった。ジョセフィンよりずっと下の扱いだ。
自分の妻になるのはジョセフィンのような高位貴族の娘か他国の王女だと思っていた。ヴィオラのようなわけのわからないものではない。それなのに自分の気持ちをどうすればいいか、わからない。自分にわからないことがあるなんて。
「ヴィオラの意識がないの。助けて」
ジョセフィンが教室に駆け込んできた時、一瞬で明かりが消えたような気がした。こんなにもヴィオラが自分の光となっているとは気付いていなかった。
呪い? なぜ、ヴィオラがそんな目に。ハーモニー学園という船を揺らしてみたいと思った罰だろうか。そんな馬鹿なことまで考えてしまった。最高の神官を呼んでもらう。無事を祈る。はっきりとわかった。ヴィオラが好きだ。
グラント領に見舞いに行けるように手を貸してくれたジョセフィンには感謝しかない。
ヴィオラの顔を久しぶりに見ると、心が躍るようだった。呪いの後遺症でピンクになった髪もヴィオラなら似合う。
見舞いに来たのはヴィオラに好意を寄せる者ばかりだが、負けるものか。
トムは焦っているようだが、ヴィオラには性急なアプローチは逆効果だろう。
ゆっくりと意識させてみせる。
グラント領の発展は素晴らしく、ヴィオラとの婚約を父や母に認めさせるのは簡単だろう。ただ、それでは意味がない。
ヴィオラは光だ。明るく輝くその光を強制によって曇らせてはならない。輝くような笑顔で「喜んで」と言ってもらわなければ。
さあ、本気で落としにかかろう。
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