昨日の自分にサヨナラ

林 業

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アヤの心

1,盗人(怒気)【怒】

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アヤはのんびりとノリにご飯と刺し身を置いて巻く。

フリザードは珍しく楽しそうだなとのんびりと眺める。

「フリザード、御飯食べない?」
「生魚は少々苦手でな。あぁ。あや。おすすめのを包んでくれ」
「そうだな。卵でしょう。唐揚げでしょう」
前に座るはカヤマ、サガラ、タミヤ。
そしてアイアとフィーも混じっている。
「アイア。どうだ。うまいか」
「からーげ。うまいっす」
「いや。巻けよ」
サガラがこうやってと目の前で巻いて、口に運ぶ。
「いや。唐揚げはそのままでも」
無理矢理押し込むサガラに、アイアはしばらく咀嚼。

「うまい!」
その横で、巻くのを四苦八苦中のフィー。
タミヤが心配そうに覗き込む。
「フィーちゃん。大丈夫?」
「どうやってもはみ出したり黒い布が破けちゃうんですけど」
「ソレはのせすぎ。マグロっぽいのにハマチっぽいのにサーモンっぽいのに、ご飯も多いよ」
「お魚一気に食べたいのに」
「だったら御飯の量を減らせば」
などと世話を焼いてくれている。

ウロはアヤの足元で切り身を、我を忘れて食べている。

「はい。フリザード。まきず」
アヤはできたとフリザードに向けた瞬間、間から出てきた男に奪われる。


アヤはしばらく無言で眺め 、しかしすぐに同じのを作るとフリザードの口に押し付ける。
「落ち着け。アヤ」
アヤの手から受け取って口に運びつつ、男を見る。

火の国の国王、ロバート。
「これ、美味いな。もういっこ」
ロバートの手の平を叩く。
「盗っ人猛々しい。貴様にやる食事はない」
アヤから飛び出る言葉に、ロバートは立ち上がる。
「待て待て。一応俺、隣国。国王。これの食材を安く提供した王様」
「人様のもんを盗もうとした輩にやる飯はない」
「す、すまない。金なら払うから」
「許さん」
「アヤ。落ち着け。美味いぞ」
なだめるフリザードにアヤはフリザードを見てから、不満そうに見上げる。
「人から盗むは良くない」
「金払うから食わせてくれよ」
「私の顔に免じて許してやってくれ」
金貨二枚を取り出してくるクロードとフリザードの言葉にアヤは口を結んで黙る。
フリザードはロバートから金貨を受け取るとアイアに渡して保管させる。
「いいみたいだぞ。アヤは優しい子だからな」
よしよしとフリザードがアヤの頭を撫で回す。
「不服」
「そうかそうか。後で話を聞いてやるからな。次のを頼むな」
アヤは渋々作る。
ロバートも俺のと口に出そうとして、フリザード二睨まれる。

「なんだよ。こんなにあるんだからさぁ」

この男は知らない。
飢えも乾きも。
そこから来る苦しみも、悲しみも。
憎しみすらこの男は知らないのだ。


ひもじさに肩を寄せ合った日々。
腸が煮えくり返る、フツフツと湧き上がる。

たった一粒が明日の命を紡いできた。
盗人が、何を、言ったのか。

ドアに巻きついた鎖に手を伸ばす。

「アヤ」
フリザードが自身で作っただろう巻きずしを向けてくる。
「いらぬか?」
「いる」
素直に受け取って口にする。

「それで、ロバート。何しに来た」
「んー」
すでに三つ目の巻きずしを自分で作っているロバード。
「そうそう。この間な、リバイアサンが国に出てきてな」
「あぁ。そんな時期か」
「うちでも備えていて、それでも被害が出るだろうとなっていたんだが」
「弱かったのか?」
「いや。トップがやってきて魔法を使い、一瞬で終わらせてしまったんだ」
「アルカンシェルの?」
「あぁ」
アヤは後、半分と巻きずしを見る。
「その魔法っていうのが「氷華」というお前の自作の魔法でな。なにか知っているか?」
「いや。残念だが私は誰かに自作魔法を教えたことはまだない。氷魔法を私ほど扱える人間も知らないしな」
「んじゃあ、なんであの男使えるんだ?」
「トップは男で確定か?」
「おう。一緒に温泉入った。あそこの虎獣人も一緒だったな。一緒に討伐するのかと思ったらトップが一人でやっちまってちょっと落ち込んでたな」
「どんな感じだったんだ?」
「そうだなぁ。そこの坊主」
アヤを示し、アヤは最後のひと口と巻きずしを口へと運ぶ。
「と、クリードを足して二で割ったような色気のある二十歳ぐらいの人種だな」
「今回も人種か」
「預言者?人多い?」
「そういえば多いですよね。預言者は今はなき男神の加護持ちで男神はどちらかと言うと自分に似た人種に近い種族をを重宝しているってお話ありますからね」
フィーの説明にアヤは頷く。
「へぇ」
フリザードは次のを用意してアヤに渡す。


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