幸福からくる世界

林 業

文字の大きさ
10 / 44
ある大陸のある国にて

10

しおりを挟む
あれから一週間。
擦り傷程度だった傷も体調も二、三日で良くなったが、心配症なのか過保護なのか、まだ休養とベッドから出ることを許してもらえず。
ようやく出れたのは二日前。
その間に本にかじりついて読んでいた。

出れてから、家を探検し、広い中庭まで教えてくれたイタチ。

ご飯の匂いが漂ってくる。
椅子に座って夢中で本を読んでいれば、そろそろ片付けてね。と声がかかるので本を閉じて、近くの机へと向かう。

出てきたのは、美味しそうな肉の煮込み。
鍋をサジタリスが置き、頂きますと三人で早速口に運ぶ。
「あ。そうだ。ハルシオ」
「は、はい」
「とりあえず弟子とる許可下りたから、明日から修行始めようか」
「俺、今日からでも」
「だーめ。焦ってもできることなんてないんだから。のんびりやろうね。それに、今日はハルシオの生活品を揃えないとね」
「あ、ありがとうございます」
戸惑いながらも頭を下げている。
「じゃあ、今日から住むのか。ハルシオ。ハル、ルシオ、シオ、シオン。ハーリ。シーン。どれだ?」
サジタリスが唐突に口にする。
「え、えっと」
「どれで呼ばれたいかってことだよ。一生それで呼ばれるからね」
何を言い出すのか考えていれば通訳が入る。
「えっと、じゃあ、ルシオで」
「ルシオ。よし。わかった」
「今日お仕事大丈夫?」
「蜥蜴退治で後二、三日暇だ。今日一日は平気だが、明日あたり出かけることにする。あんま金には困ってないが仲間が、文句言う気がする」
勝手に出かけてもいいのにとぼやいている。
とはいえ、サジタリスの仲間はそれなりに実力者である。
当然、サジタリスがいなくとも十分冒険ができる。
が、やはりサジタリスがいないと冒険しても物足りないと思うらしい。
「蜥蜴?」
蜥蜴退治で潤うのか?と首を捻る。
「サジ。すごい剣の腕前なんだ。習うといいよ」
「俺、魔法とか剣の才能ないから」
「才能がなくとも護身術ぐらいは覚えておけ。この大陸で二番目の魔導具師になりたいならな。命の危険が伴う」
ぶるりと背筋に寒気が走る。
元々命の危険を感じて逃げ出したと言うのもあるが、更に過酷なのかと怖くなる。
「早々にいろんな国の弟子をとって、この大陸にも広めればいい話だ」
サジタリスの語る未来に、ルーンティルを見る。
「師匠」
「あ、師父がいいな。君達の親のように、君達の中でも実親に次ぐ程度には偉大な存在になりたい」
ハルシオは顔を歪める。
「俺の親、偉大じゃないっすけどね」
「そっか。じゃあ、なおのこと師父と、親であり先達の師として呼んでほしいな」
嬉しそうに微笑まれて、頷く。
「じゃあ、師父。師父は、その、他に弟子は?」
「何人かいたんだけど教えるの下手なのか、いろんなことを教えてたら別のことに興味持っちゃうのか、別のこと始めたがるんだよね。あ。もちろん。ハルシオも魔導具以外で興味あったら言ってね」
「あ、はい。他の方って今何されてて」
「一応弟子として引き取った一番の末っ子は医者だね。一応うちの子の一人だから君にとっては義理の兄だね」
「リーン。ほら。お前の傷を見てくれたやつだ」
「あー、あの優しそうな」
しばらく考えてから目の前の二人を見る。
大男としてはいい威圧感を与えてくるが見えても三十代、若くて二十代の、赤目のサジタリス。
同じく若々しい見た目、二十代から半ば、紫紺の瞳が優しいルーンティル。

ふつふつと湧き上がる疑問。
「師父たちっておいくつですか?」

二人は顔を見合わせて微笑むと告げる。
「秘密だ」
「サジより十上」
「ルー!」
ハルシオは目を何度か瞬きさせてから思わず叫ぶ。

嘘だろ。と。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

転生エルフの天才エンジニア、静かに暮らしたいのに騎士団長に捕まる〜俺の鉄壁理論は彼の溺愛パッチでバグだらけです〜

たら昆布
BL
転生したらエルフだった社畜エンジニアがのんびり森で暮らす話 騎士団長とのじれったい不器用BL

聖者の愛はお前だけのもの

いちみりヒビキ
BL
スパダリ聖者とツンデレ王子の王道イチャラブファンタジー。 <あらすじ> ツンデレ王子”ユリウス”の元に、希少な男性聖者”レオンハルト”がやってきた。 ユリウスは、魔法が使えないレオンハルトを偽聖者と罵るが、心の中ではレオンハルトのことが気になって仕方ない。 意地悪なのにとても優しいレオンハルト。そして、圧倒的な拳の破壊力で、数々の難題を解決していく姿に、ユリウスは惹かれ、次第に心を許していく……。 全年齢対象。

【完結】ただの狼です?神の使いです??

野々宮なつの
BL
気が付いたら高い山の上にいた白狼のディン。気ままに狼暮らしを満喫かと思いきや、どうやら白い生き物は神の使いらしい? 司祭×白狼(人間の姿になります) 神の使いなんて壮大な話と思いきや、好きな人を救いに来ただけのお話です。 全15話+おまけ+番外編 !地震と津波表現がさらっとですがあります。ご注意ください! 番外編更新中です。土日に更新します。

【完結 一気読み推奨】片想いの相手が「そろそろ恋愛したい」と言ったので、用済みの俺はニートになることにしました。

はぴねこ
BL
 高校生の頃、片想いの親友に告白した。  彼はノンケだったから玉砕して友人関係も終わるものだと思っていた。  もしかすると気持ち悪いと軽蔑される覚悟までしていたのに、彼は「今は恋愛をしている時間がないんだ」と自分の夢を語ってくれた。  彼は会社を興した祖父のことをとても尊敬していて、自分も起業したいと熱く語ってくれた。  そして、俺の手を握って「できれば親友のお前には俺の右腕になってほしい」と言われた。  同性愛者の俺のことを気持ち悪いと遠ざけることもせずに、親友のままでいてくれた彼に俺は感謝して、同じ大学に進学して、大学の頃に彼と一緒にゲームを作成する会社を起業した。  あれから二十年間、本当に二人三脚で駆け抜けてきた。  そして、昨年売り出したVRMMOが世界的に大ヒットし、ゲーム大賞を取ったことを祝うパーティーで親友が語った言葉に俺の覚悟も決まった。 「俺もそろそろ恋愛したい」  親友のその言葉に、俺は、長年の片想いを終わらせる覚悟をした。  不憫な拗らせアラフォーが”愛”へと踏み出すお話です。

追放されたおまけの聖女♂は冷徹王太子の腕の中から離してもらえない〜今さら戻れと言われても、もうこの人の魔力しか受け付けません!〜

たら昆布
BL
聖女のおまけで召喚されたと思われて追放された不憫受けが拾われて愛される話

俺の居場所を探して

夜野
BL
 小林響也は炎天下の中辿り着き、自宅のドアを開けた瞬間眩しい光に包まれお約束的に異世界にたどり着いてしまう。 そこには怪しい人達と自分と犬猿の仲の弟の姿があった。 そこで弟は聖女、自分は弟の付き人と決められ、、、 このお話しは響也と弟が対立し、こじれて決別してそれぞれお互い的に幸せを探す話しです。 シリアスで暗めなので読み手を選ぶかもしれません。 遅筆なので不定期に投稿します。 初投稿です。

君さえ笑ってくれれば最高

大根
BL
ダリオ・ジュレの悩みは1つ。「氷の貴公子」の異名を持つ婚約者、ロベルト・トンプソンがただ1度も笑顔を見せてくれないことだ。感情が顔に出やすいダリオとは対照的な彼の態度に不安を覚えたダリオは、どうにかロベルトの笑顔を引き出そうと毎週様々な作戦を仕掛けるが。 (クーデレ?溺愛美形攻め × 顔に出やすい素直平凡受け) 異世界BLです。

処理中です...