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ある大陸のある国にて
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あれから一週間。
擦り傷程度だった傷も体調も二、三日で良くなったが、心配症なのか過保護なのか、まだ休養とベッドから出ることを許してもらえず。
ようやく出れたのは二日前。
その間に本にかじりついて読んでいた。
出れてから、家を探検し、広い中庭まで教えてくれたイタチ。
ご飯の匂いが漂ってくる。
椅子に座って夢中で本を読んでいれば、そろそろ片付けてね。と声がかかるので本を閉じて、近くの机へと向かう。
出てきたのは、美味しそうな肉の煮込み。
鍋をサジタリスが置き、頂きますと三人で早速口に運ぶ。
「あ。そうだ。ハルシオ」
「は、はい」
「とりあえず弟子とる許可下りたから、明日から修行始めようか」
「俺、今日からでも」
「だーめ。焦ってもできることなんてないんだから。のんびりやろうね。それに、今日はハルシオの生活品を揃えないとね」
「あ、ありがとうございます」
戸惑いながらも頭を下げている。
「じゃあ、今日から住むのか。ハルシオ。ハル、ルシオ、シオ、シオン。ハーリ。シーン。どれだ?」
サジタリスが唐突に口にする。
「え、えっと」
「どれで呼ばれたいかってことだよ。一生それで呼ばれるからね」
何を言い出すのか考えていれば通訳が入る。
「えっと、じゃあ、ルシオで」
「ルシオ。よし。わかった」
「今日お仕事大丈夫?」
「蜥蜴退治で後二、三日暇だ。今日一日は平気だが、明日あたり出かけることにする。あんま金には困ってないが仲間が、文句言う気がする」
勝手に出かけてもいいのにとぼやいている。
とはいえ、サジタリスの仲間はそれなりに実力者である。
当然、サジタリスがいなくとも十分冒険ができる。
が、やはりサジタリスがいないと冒険しても物足りないと思うらしい。
「蜥蜴?」
蜥蜴退治で潤うのか?と首を捻る。
「サジ。すごい剣の腕前なんだ。習うといいよ」
「俺、魔法とか剣の才能ないから」
「才能がなくとも護身術ぐらいは覚えておけ。この大陸で二番目の魔導具師になりたいならな。命の危険が伴う」
ぶるりと背筋に寒気が走る。
元々命の危険を感じて逃げ出したと言うのもあるが、更に過酷なのかと怖くなる。
「早々にいろんな国の弟子をとって、この大陸にも広めればいい話だ」
サジタリスの語る未来に、ルーンティルを見る。
「師匠」
「あ、師父がいいな。君達の親のように、君達の中でも実親に次ぐ程度には偉大な存在になりたい」
ハルシオは顔を歪める。
「俺の親、偉大じゃないっすけどね」
「そっか。じゃあ、なおのこと師父と、親であり先達の師として呼んでほしいな」
嬉しそうに微笑まれて、頷く。
「じゃあ、師父。師父は、その、他に弟子は?」
「何人かいたんだけど教えるの下手なのか、いろんなことを教えてたら別のことに興味持っちゃうのか、別のこと始めたがるんだよね。あ。もちろん。ハルシオも魔導具以外で興味あったら言ってね」
「あ、はい。他の方って今何されてて」
「一応弟子として引き取った一番の末っ子は医者だね。一応うちの子の一人だから君にとっては義理の兄だね」
「リーン。ほら。お前の傷を見てくれたやつだ」
「あー、あの優しそうな」
しばらく考えてから目の前の二人を見る。
大男としてはいい威圧感を与えてくるが見えても三十代、若くて二十代の、赤目のサジタリス。
同じく若々しい見た目、二十代から半ば、紫紺の瞳が優しいルーンティル。
ふつふつと湧き上がる疑問。
「師父たちっておいくつですか?」
二人は顔を見合わせて微笑むと告げる。
「秘密だ」
「サジより十上」
「ルー!」
ハルシオは目を何度か瞬きさせてから思わず叫ぶ。
嘘だろ。と。
擦り傷程度だった傷も体調も二、三日で良くなったが、心配症なのか過保護なのか、まだ休養とベッドから出ることを許してもらえず。
ようやく出れたのは二日前。
その間に本にかじりついて読んでいた。
出れてから、家を探検し、広い中庭まで教えてくれたイタチ。
ご飯の匂いが漂ってくる。
椅子に座って夢中で本を読んでいれば、そろそろ片付けてね。と声がかかるので本を閉じて、近くの机へと向かう。
出てきたのは、美味しそうな肉の煮込み。
鍋をサジタリスが置き、頂きますと三人で早速口に運ぶ。
「あ。そうだ。ハルシオ」
「は、はい」
「とりあえず弟子とる許可下りたから、明日から修行始めようか」
「俺、今日からでも」
「だーめ。焦ってもできることなんてないんだから。のんびりやろうね。それに、今日はハルシオの生活品を揃えないとね」
「あ、ありがとうございます」
戸惑いながらも頭を下げている。
「じゃあ、今日から住むのか。ハルシオ。ハル、ルシオ、シオ、シオン。ハーリ。シーン。どれだ?」
サジタリスが唐突に口にする。
「え、えっと」
「どれで呼ばれたいかってことだよ。一生それで呼ばれるからね」
何を言い出すのか考えていれば通訳が入る。
「えっと、じゃあ、ルシオで」
「ルシオ。よし。わかった」
「今日お仕事大丈夫?」
「蜥蜴退治で後二、三日暇だ。今日一日は平気だが、明日あたり出かけることにする。あんま金には困ってないが仲間が、文句言う気がする」
勝手に出かけてもいいのにとぼやいている。
とはいえ、サジタリスの仲間はそれなりに実力者である。
当然、サジタリスがいなくとも十分冒険ができる。
が、やはりサジタリスがいないと冒険しても物足りないと思うらしい。
「蜥蜴?」
蜥蜴退治で潤うのか?と首を捻る。
「サジ。すごい剣の腕前なんだ。習うといいよ」
「俺、魔法とか剣の才能ないから」
「才能がなくとも護身術ぐらいは覚えておけ。この大陸で二番目の魔導具師になりたいならな。命の危険が伴う」
ぶるりと背筋に寒気が走る。
元々命の危険を感じて逃げ出したと言うのもあるが、更に過酷なのかと怖くなる。
「早々にいろんな国の弟子をとって、この大陸にも広めればいい話だ」
サジタリスの語る未来に、ルーンティルを見る。
「師匠」
「あ、師父がいいな。君達の親のように、君達の中でも実親に次ぐ程度には偉大な存在になりたい」
ハルシオは顔を歪める。
「俺の親、偉大じゃないっすけどね」
「そっか。じゃあ、なおのこと師父と、親であり先達の師として呼んでほしいな」
嬉しそうに微笑まれて、頷く。
「じゃあ、師父。師父は、その、他に弟子は?」
「何人かいたんだけど教えるの下手なのか、いろんなことを教えてたら別のことに興味持っちゃうのか、別のこと始めたがるんだよね。あ。もちろん。ハルシオも魔導具以外で興味あったら言ってね」
「あ、はい。他の方って今何されてて」
「一応弟子として引き取った一番の末っ子は医者だね。一応うちの子の一人だから君にとっては義理の兄だね」
「リーン。ほら。お前の傷を見てくれたやつだ」
「あー、あの優しそうな」
しばらく考えてから目の前の二人を見る。
大男としてはいい威圧感を与えてくるが見えても三十代、若くて二十代の、赤目のサジタリス。
同じく若々しい見た目、二十代から半ば、紫紺の瞳が優しいルーンティル。
ふつふつと湧き上がる疑問。
「師父たちっておいくつですか?」
二人は顔を見合わせて微笑むと告げる。
「秘密だ」
「サジより十上」
「ルー!」
ハルシオは目を何度か瞬きさせてから思わず叫ぶ。
嘘だろ。と。
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