幸福からくる世界

林 業

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パーティーは賑やかに

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家へと戻って来て、そっとハルシオの部屋を覗く。
だがいない。
何処だろうと探せば、ルーンティルとサジタリスの部屋のベッドで丸くなっている。
ウルカとオーラン、ララも側にいる。
まだまだ目が話せないとハルシオを挟んで二人で横になる。


目が覚めれば、ルーンティルに抱き締められているハルシオは硬直。
「!」
驚いたまま眺めてから、振り返ればサジタリスの目が開く。
「あ、あの。その。寂しくて。だから」
伸びてきた手に思わず体を固くして目を閉じる。
だがすぐに撫でられたと気づいて目を開ける。
「甘えろ。子供のうちは許す」
撫でられるがまま、されるがまま。
眠気に誘われ、ララが覗き込んでくる。
「あ、朝ごはん」
「別に、よくないな」
ハルシオが細くて軽いと言われている気がして思わずムッとなる。
「リーン兄さんが用意してくれてて」
「あいつ。じゃあ、飯にするか。ルー。起きろ」
「ワイン美味しいの」
「後で起こすか」
「ハルシオ。美味しいかぃ。大人になったんだからもっと飲みなさい」
「気が早い寝言だな。ルシオ。まだ飲むなよ」
「は、はい」
どんな味なんだろうなぁと興味を持ちながらも朝ごはんのためにリビングへ向かう。




朝食を食べ始めたころ遅れながらルーンティルがやってくる。

「おはよう。ハルシオ」
「おはようございます。師父」
「今日から忙しくなるぞ」
「ぞー?」
繰り返して首を傾ける。
ルーンティル先日手伝って出した招待状を取り出す。
「養い子たちが来るって言うから料理の下準備にお酒の用意。後は二、三日泊まる子もいるから寝床の準備」
「忙しい、ですね」
「ハルシオも手伝ってくれるかな」
「もちろんです」
頼ってくれたと微笑む。

「一応君にも招待状を出しておこうかな」
カードを指先で弾くと鳥になり、ハルシオの手元に来る。
そして、カードへと戻る。
これは魔法の一種らしい。

じっと伝言を見て、初めてのお手紙と頬が緩む。

眺めていれば、後で返事頂戴ね。と言われて何度も頷きながら眺める。

「サンドイッチでいいな」
「はーい」
サジタリスがご飯を渡し、お礼を言いながら受け取るとご飯を食べる。




オーランが中庭を飛んでいる。

ジャックウィリーはランタンを振りながら生えてきた植物を使い、土を操るウルカと家を作っている。
それを見ながら座って果物を破裂させているハルシオ。
ララが美味しそうと覗き込んでくるが駄目と止める。
「師父。これ、何になるんですか?」
「風の文字を刻むことによって、耐えきれないフルーツはジュースや、発酵させてお酒に。耐えれたフルーツは爆発フルーツというじゅわっとした味わいを楽しめるんだよね」
隣で一度も爆破させていないルーンティルの手元を見る。
見事に文字が刻まれる。
「よし。食べてみる?」
「いいんですか」
「どーぞ」
示され、手が離せないので直接口にする。
口の中で噛むと、じゅわじゅわと音を立て果汁が跳ねている。
面白いと楽しんでいれば、手元の果物が破裂する。
「美味しい?」
「美味しいけど、また失敗しました」
「いいのいいの。失敗すると美味しいジュースやお酒がたっくさんできるからうちの子たちには人気なんだよ。昔は毎年のようにパーティしてたから。ハルシオは今回、いろんな初体験があるよ」
失敗してもいいのか。
むしろ、失敗を喜ぶなどあるのか。と。
「いいんですか?」
「むしろ僕はうまく行き過ぎるから手伝ってくれると助かるな」
「はいっ」
「ルー。肉、持ってきたぞ」
「じゃあ、熟成させるから捌いて小屋に置いといてくれる?」
「あいよ」
肉の塊を捌いて小屋へと持っていく。
つまみ食いしたいとララがちょっかいをかけるが簡単にあしらわれる。



    
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