10 / 25
まだ未熟な
10
しおりを挟む
あれから数ヶ月、イネスはアーケロンに会っていない。
先生や使用人、父母の気遣いのおかげである。
秋が来て、冬が来て、季節ごとの仕事や遊びを交えながらも、授業を行う。
そして春が来た。
王都で行われる春の祭りは、毎年父母だけが参加しているもので、ついでに苗や種等も良さげなのがあれば買って帰っていた。
家族のお土産は当然ある。
領地で使える種は、領民が自家栽培だったり他領地への買い出し、または領民同士での交易にて賄っている。
その間イネスたちは領民の手伝いをしていた。
秋の収穫と春の間だけはアーケロンもそれどころではないらしく、虐めては来なかった。
「アーケロンってなんでいじめてくるんだろう」
流石に数週間も馬車に揺られているとやることもなくなった三人。
何か話題をと思っていればふと浮かぶ疑問をイネスは口にする。
「そりゃアレだろう」
「アレだよな。性質がわりぃけど」
「アレ?」
「当の本人、迷惑被っているお前が気づくわけないか」
首を捻れば長兄は気にすんなと欠伸している。
次男は横になっている。
父母は別の馬車にいる。
先生に至っては子どもたちの馬車の業者真似事を。
時々イネスたちにも手伝いをさせられる。
覚えていて損はないから。と。
兄たちにとっても暇つぶしにはなった。
「教えてください」
「お前の気を引きたいんだろう?」
兄はイネスに迫られ、渋々告げる。
何故それが気を引くことになるのかわからないとイネスは首を捻る。
「つまり中身は自分のことしか考えていないガキってことだ」
よくわかんないとイネスはますます首を捻る。
御者の窓が叩かれ、先生。とイネスが反応する。
「後一時間ほどで到着予定ですよ。貴族らしく姿勢を正しなさい」
「はい」
横になっていた兄たちはノロノロと体を戻す。
「先生。アーケロンは私の気を引いてどうするつもりなんですか?悪者として認識させたいってことでいいんですかね」
「その言葉にちょっと可愛そうな気もしてきます。が、正しくは好きな相手にちょっかいを掛けたいだけなんですよ。ただやり方が違うってだけで。そういうのが好きなら話は別ですけどねぇ。人の性癖はなんといいますか業が深く」
ブンブン左右に首を振る。
「わ、私は嫌です」
「わかっていますよ」
にこにこと笑うリーマンの横顔を眺める。
業者を賄えるその姿を眺めて、話題を頭の中で探して、告げる。
「先生」
「はい」
「王子様ってどんな人かな」
「殿下は貴方より二つ年上ですよ。弟君が一人。ですが弟君は兄君の補助になると張り切っていて、兄君も優秀な方ですよ。少々の鼻が伸びますが」
花?と理解して、どういう意味だろうと首を捻る。
「つまり優秀すぎて、調子に乗るということだな」
兄が外の光景をつまらなさそうに見ながら告げる。
花が伸びる。
つまり成長するのはいいことでは?と首を益々捻る。
「まぁ、そうですね。そのたびに教師一同と、兵士が集ってボコボコにします」
「それ次期王様としてどうなんだよ」
「むしろ、王妃が先導してますよ」
「こ、怖い人?王様達」
ドン引きしながら聞けば、苦笑する。
「教育熱心。なだけですよ。親としては時々厳しいですがお優しい方々ですし、王族としては名君として十分すぎるお方です」
「へぇ」
じゃあ大丈夫かなと今度の面談について考える。
「まぁ、あまり固くならず、今の段階でできる最低限の礼儀で構いませんよ。向こうもわかっていますからね」
定期連絡で何処までの成長かは伝えているというのを思い出す。
下手に背伸びしないようにと言われていたのを思い出してこくこくと頷く。
「お会い出来るのは三日後ですね。服は持ってきたもの大丈夫だそうですが、今回絶対に仕立ててしまいましょうね」
兄たちが嫌そうな顔をしたのを見抜いたのか強制すると言外に告げる。
兄が唐突に声を上げる。
業者窓から外の景色を見て驚く。
巨大な壁。
城や領民を守るために作られただろうその壁の高さに驚いて見上げる。
「すっげぇ」
兄から出た言葉に思わず同意する。
先生や使用人、父母の気遣いのおかげである。
秋が来て、冬が来て、季節ごとの仕事や遊びを交えながらも、授業を行う。
そして春が来た。
王都で行われる春の祭りは、毎年父母だけが参加しているもので、ついでに苗や種等も良さげなのがあれば買って帰っていた。
家族のお土産は当然ある。
領地で使える種は、領民が自家栽培だったり他領地への買い出し、または領民同士での交易にて賄っている。
その間イネスたちは領民の手伝いをしていた。
秋の収穫と春の間だけはアーケロンもそれどころではないらしく、虐めては来なかった。
「アーケロンってなんでいじめてくるんだろう」
流石に数週間も馬車に揺られているとやることもなくなった三人。
何か話題をと思っていればふと浮かぶ疑問をイネスは口にする。
「そりゃアレだろう」
「アレだよな。性質がわりぃけど」
「アレ?」
「当の本人、迷惑被っているお前が気づくわけないか」
首を捻れば長兄は気にすんなと欠伸している。
次男は横になっている。
父母は別の馬車にいる。
先生に至っては子どもたちの馬車の業者真似事を。
時々イネスたちにも手伝いをさせられる。
覚えていて損はないから。と。
兄たちにとっても暇つぶしにはなった。
「教えてください」
「お前の気を引きたいんだろう?」
兄はイネスに迫られ、渋々告げる。
何故それが気を引くことになるのかわからないとイネスは首を捻る。
「つまり中身は自分のことしか考えていないガキってことだ」
よくわかんないとイネスはますます首を捻る。
御者の窓が叩かれ、先生。とイネスが反応する。
「後一時間ほどで到着予定ですよ。貴族らしく姿勢を正しなさい」
「はい」
横になっていた兄たちはノロノロと体を戻す。
「先生。アーケロンは私の気を引いてどうするつもりなんですか?悪者として認識させたいってことでいいんですかね」
「その言葉にちょっと可愛そうな気もしてきます。が、正しくは好きな相手にちょっかいを掛けたいだけなんですよ。ただやり方が違うってだけで。そういうのが好きなら話は別ですけどねぇ。人の性癖はなんといいますか業が深く」
ブンブン左右に首を振る。
「わ、私は嫌です」
「わかっていますよ」
にこにこと笑うリーマンの横顔を眺める。
業者を賄えるその姿を眺めて、話題を頭の中で探して、告げる。
「先生」
「はい」
「王子様ってどんな人かな」
「殿下は貴方より二つ年上ですよ。弟君が一人。ですが弟君は兄君の補助になると張り切っていて、兄君も優秀な方ですよ。少々の鼻が伸びますが」
花?と理解して、どういう意味だろうと首を捻る。
「つまり優秀すぎて、調子に乗るということだな」
兄が外の光景をつまらなさそうに見ながら告げる。
花が伸びる。
つまり成長するのはいいことでは?と首を益々捻る。
「まぁ、そうですね。そのたびに教師一同と、兵士が集ってボコボコにします」
「それ次期王様としてどうなんだよ」
「むしろ、王妃が先導してますよ」
「こ、怖い人?王様達」
ドン引きしながら聞けば、苦笑する。
「教育熱心。なだけですよ。親としては時々厳しいですがお優しい方々ですし、王族としては名君として十分すぎるお方です」
「へぇ」
じゃあ大丈夫かなと今度の面談について考える。
「まぁ、あまり固くならず、今の段階でできる最低限の礼儀で構いませんよ。向こうもわかっていますからね」
定期連絡で何処までの成長かは伝えているというのを思い出す。
下手に背伸びしないようにと言われていたのを思い出してこくこくと頷く。
「お会い出来るのは三日後ですね。服は持ってきたもの大丈夫だそうですが、今回絶対に仕立ててしまいましょうね」
兄たちが嫌そうな顔をしたのを見抜いたのか強制すると言外に告げる。
兄が唐突に声を上げる。
業者窓から外の景色を見て驚く。
巨大な壁。
城や領民を守るために作られただろうその壁の高さに驚いて見上げる。
「すっげぇ」
兄から出た言葉に思わず同意する。
37
あなたにおすすめの小説
君の恋人
risashy
BL
朝賀千尋(あさか ちひろ)は一番の親友である茅野怜(かやの れい)に片思いをしていた。
伝えるつもりもなかった気持ちを思い余って告げてしまった朝賀。
もう終わりだ、友達でさえいられない、と思っていたのに、茅野は「付き合おう」と答えてくれて——。
不器用な二人がすれ違いながら心を通わせていくお話。
僕を惑わせるのは素直な君
秋元智也
BL
父と妹、そして兄の家族3人で暮らして来た。
なんの不自由もない。
5年前に病気で母親を亡くしてから家事一切は兄の歩夢が
全てやって居た。
そこへいきなり父親からも唐突なカミングアウト。
「俺、再婚しようと思うんだけど……」
この言葉に驚きと迷い、そして一縷の不安が過ぎる。
だが、好きになってしまったになら仕方がない。
反対する事なく母親になる人と会う事に……。
そこには兄になる青年がついていて…。
いきなりの兄の存在に戸惑いながらも興味もあった。
だが、兄の心の声がどうにもおかしくて。
自然と聞こえて来てしまう本音に戸惑うながら惹かれて
いってしまうが……。
それは兄弟で、そして家族で……同性な訳で……。
何もかも不幸にする恋愛などお互い苦しみしかなく……。
学園の俺様と、辺境地の僕
そらうみ
BL
この国の三大貴族の一つであるルーン・ホワイトが、何故か僕に構ってくる。学園生活を平穏に過ごしたいだけなのに、ルーンのせいで僕は皆の注目の的となってしまった。卒業すれば関わることもなくなるのに、ルーンは一体…何を考えているんだ?
【全12話になります。よろしくお願いします。】
刺されて始まる恋もある
神山おが屑
BL
ストーカーに困るイケメン大学生城田雪人に恋人のフリを頼まれた大学生黒川月兎、そんな雪人とデートの振りして食事に行っていたらストーカーに刺されて病院送り罪悪感からか毎日お見舞いに来る雪人、罪悪感からか毎日大学でも心配してくる雪人、罪悪感からかやたら世話をしてくる雪人、まるで本当の恋人のような距離感に戸惑う月兎そんなふたりの刺されて始まる恋の話。
ジャスミン茶は、君のかおり
霧瀬 渓
BL
アルファとオメガにランクのあるオメガバース世界。
大学2年の高位アルファ高遠裕二は、新入生の三ツ橋鷹也を助けた。
裕二の部活後輩となった鷹也は、新歓の数日後、放火でアパートを焼け出されてしまう。
困った鷹也に、裕二が条件付きで同居を申し出てくれた。
その条件は、恋人のフリをして虫除けになることだった。
魔力ゼロのポーション屋手伝い
書鈴 夏(ショベルカー)
BL
15歳で測定する魔力の量によって、人生の大部分が左右されてしまう世界。
そんな世界で、運命の日を迎えたひとりの平凡な少年──リクは、抱いた淡い期待を大きく裏切られる。魔力が前代未聞のゼロと言い渡されたのだ。
深い絶望とともに頭を抱えていたとき、森でポーション屋を営んでいるというくたびれた男が声をかける。路頭に迷っていたリクは、店で手伝いをしてはどうかという彼の誘いを受けることにする。
捨てかけた夢を拾ってもらった少年と、拾った男。ふたりが絆を深めていく、ポーション屋でのお話です。
一人称おじさんくたびれ男性×魔力ゼロ以外平凡青年のBLです。
カクヨムにも載せています。(完結済み)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる