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星からの歌を(おまけ)
アレクサンドラは色とりどりの短冊が飾られた木を見る。
いろんな願い事に、今年の願い事を考えながら昔を思い出す。
まだこの国に来た頃。
王も王妃もこちらに関わってこなかった。
世話をしてくれたリザベスとその子供たち、ルークス兄妹とはまだ仲良くしていたと思う。
ある日、ルークスが短冊を持ってきてくれた。
これに願い事を書くと叶う。と。
文字を習っていたこともあって、いい機会だと言われたので、願い事を考えてみた。
一番に出てきたのは
母に会いたい。
その気持ちだった。
それはリザベスの手前、書けなかった。
けれど、その感情だけが芽生え始めて辛かった。
精霊には心配されて、その様子を見た竜人族たちにも心配された。
お祭り当日は曇り模様だった。
曇りでもお祭り自体はするらしいのだが、それでも肩を落とすと聞く。
何もかけない短冊を片手に庭園をうろうろしていた。
「アレクサンドラ様?」
声に振り返れば、サンムーンが不思議そうに、近づいてくる。
おっかなびっくりで差し出してくる手を握る。
「どうかしましたか?」
左右に首を振る。
だが手に持った短冊に気づいたらしく見つめてくる。
「お願いが決まらないのか?」
「っ、あ」
口を開き、しかし勇気が出ない。
握ってくる手が優しいのに気づいて見つめてから告げる。
「お、か、さん、会いたい」
その言葉を絞り出し、瞬間、喉が痛む。
雨でも降ってきたのか、地面が濡れていく。
サンムーンが驚いたように目を見開き、それから目元を拭ってくれる。
それで地面が濡れたのは涙だと気付き、涙が止まるまで何度も拭ってくれる。
そして優しく触れて、そして優しく告げる。
「じゃあ、その願いを書こう」
驚いて見上げて、しかし左右に首を振る。
出来ない。
わかっているのだ。
母は死んでいる。
最後の記憶にある母が死んで引きずられていく姿が頭から離れない。
助けることもしなかった自分に会いに来るはずない。
母は生き残った自分を許さない。
会えるはずが、ない。
「今日は、星祭。空から亡くなった人が見ていると聞いている。今日なら空高くの木に括り付ければ、きっと、見てくれる」
精霊が騒いでいるのに気づく。
自分が泣いていると聞き、そして、泣かせただろうサンムーンを睨んでいる。
駄目だと叫ぶ。
それから空を見ればどんよりとした雲。
どっちにしても見てもらうことは出来ない。
「大丈夫。俺が空高くの大樹まで連れて行ってやる。だから、書いてくれ」
その言葉に短冊を見下ろす。
差し出されたペンを受け取り、流されるまま、いびつながら文字を書く。
「はは、あいたい
アレク」
書いたと同時に、巨大な竜が目の前に現れる。
白銀の竜。
綺麗だと見惚れていれば乗れと言われて、咄嗟に腕に抱きつく。
そして空高く飛び立つ。
色とりどりの短冊がついた木の、まだついていない先に結えるように言われて言われるがまま付ける。
「きっと会えるさ」
その言葉に、母を想って空を見上げる。
いつの間にか雲が消えて、夜空が輝く星と、地上には彩り鮮やかな星が光り輝いている。
綺麗だと見つめていれば眠気に襲われる。
歌が聞こえてくる。
「アレク」
手を繋いだ先にいる。
母が、いる。
「歌いましょう。辛いときも悲しいときも、歌を奏でましょう。私の愛しい子。私の母から教わった、そしてあなたに繋ぐ歌を忘れないでね。そしたら。私はあなたを見つける事が出来るのよ。何時だって見守っているからね」
歌を歌う母。
母が、笑っている。
大好きな母。
「この歌であなたのお父さんと結婚できたの」
そんな優しい思い出を紡ぐ母。
目を開けて飛び起きて、ベッドの上。
リザベスが起こそうとしていたらしいが、挨拶もそこそこに訓練所に向かう。
白銀の髪に気づいて近寄る。
「アレクサンドラ様」
驚くサンムーンに、告げる。
「母、夢いた。歌、教えてくれた。聞いて」
サンムーンの硬い手を握りしめながら告げる。
「あ、では、訓練が終わったら伺うので」
満面の笑みを浮かべて頷く。
それから毎年短冊に書く願い。
あるときは
「サンムーンに会いたい」
「愛称を呼んでほしい」
「サンムーンとお出かけしたい」
「サンムーンが戸惑うことがないと嬉しい」
そして少しずつ心惹かれていく日々。
「サンムーンと恋人になりたい」
そんなふうに願うようになった。
そして結婚した現在。
旦那様の姿を見かけて近づく。
「アレク」
優しい笑顔に近づく。
「お帰りなさい」
「只今。何を見てたんだ?」
短冊を示す。
「今年の願いは何にしたんだ?」
「ナイショ」
微笑む。
サンムーンは少し残念そうにしながら色鮮やかな短冊と輝く夜空を眺める。
その横顔を見てから今一度空を見る。
自分の短冊もその中にある。
サンムーンは見つけようとしているのだろう。
見つけてくれるかなと母から受け継いだ歌を口ずさむ。
「この先も皆と幸せの思い出を作っていけますように」
いろんな願い事に、今年の願い事を考えながら昔を思い出す。
まだこの国に来た頃。
王も王妃もこちらに関わってこなかった。
世話をしてくれたリザベスとその子供たち、ルークス兄妹とはまだ仲良くしていたと思う。
ある日、ルークスが短冊を持ってきてくれた。
これに願い事を書くと叶う。と。
文字を習っていたこともあって、いい機会だと言われたので、願い事を考えてみた。
一番に出てきたのは
母に会いたい。
その気持ちだった。
それはリザベスの手前、書けなかった。
けれど、その感情だけが芽生え始めて辛かった。
精霊には心配されて、その様子を見た竜人族たちにも心配された。
お祭り当日は曇り模様だった。
曇りでもお祭り自体はするらしいのだが、それでも肩を落とすと聞く。
何もかけない短冊を片手に庭園をうろうろしていた。
「アレクサンドラ様?」
声に振り返れば、サンムーンが不思議そうに、近づいてくる。
おっかなびっくりで差し出してくる手を握る。
「どうかしましたか?」
左右に首を振る。
だが手に持った短冊に気づいたらしく見つめてくる。
「お願いが決まらないのか?」
「っ、あ」
口を開き、しかし勇気が出ない。
握ってくる手が優しいのに気づいて見つめてから告げる。
「お、か、さん、会いたい」
その言葉を絞り出し、瞬間、喉が痛む。
雨でも降ってきたのか、地面が濡れていく。
サンムーンが驚いたように目を見開き、それから目元を拭ってくれる。
それで地面が濡れたのは涙だと気付き、涙が止まるまで何度も拭ってくれる。
そして優しく触れて、そして優しく告げる。
「じゃあ、その願いを書こう」
驚いて見上げて、しかし左右に首を振る。
出来ない。
わかっているのだ。
母は死んでいる。
最後の記憶にある母が死んで引きずられていく姿が頭から離れない。
助けることもしなかった自分に会いに来るはずない。
母は生き残った自分を許さない。
会えるはずが、ない。
「今日は、星祭。空から亡くなった人が見ていると聞いている。今日なら空高くの木に括り付ければ、きっと、見てくれる」
精霊が騒いでいるのに気づく。
自分が泣いていると聞き、そして、泣かせただろうサンムーンを睨んでいる。
駄目だと叫ぶ。
それから空を見ればどんよりとした雲。
どっちにしても見てもらうことは出来ない。
「大丈夫。俺が空高くの大樹まで連れて行ってやる。だから、書いてくれ」
その言葉に短冊を見下ろす。
差し出されたペンを受け取り、流されるまま、いびつながら文字を書く。
「はは、あいたい
アレク」
書いたと同時に、巨大な竜が目の前に現れる。
白銀の竜。
綺麗だと見惚れていれば乗れと言われて、咄嗟に腕に抱きつく。
そして空高く飛び立つ。
色とりどりの短冊がついた木の、まだついていない先に結えるように言われて言われるがまま付ける。
「きっと会えるさ」
その言葉に、母を想って空を見上げる。
いつの間にか雲が消えて、夜空が輝く星と、地上には彩り鮮やかな星が光り輝いている。
綺麗だと見つめていれば眠気に襲われる。
歌が聞こえてくる。
「アレク」
手を繋いだ先にいる。
母が、いる。
「歌いましょう。辛いときも悲しいときも、歌を奏でましょう。私の愛しい子。私の母から教わった、そしてあなたに繋ぐ歌を忘れないでね。そしたら。私はあなたを見つける事が出来るのよ。何時だって見守っているからね」
歌を歌う母。
母が、笑っている。
大好きな母。
「この歌であなたのお父さんと結婚できたの」
そんな優しい思い出を紡ぐ母。
目を開けて飛び起きて、ベッドの上。
リザベスが起こそうとしていたらしいが、挨拶もそこそこに訓練所に向かう。
白銀の髪に気づいて近寄る。
「アレクサンドラ様」
驚くサンムーンに、告げる。
「母、夢いた。歌、教えてくれた。聞いて」
サンムーンの硬い手を握りしめながら告げる。
「あ、では、訓練が終わったら伺うので」
満面の笑みを浮かべて頷く。
それから毎年短冊に書く願い。
あるときは
「サンムーンに会いたい」
「愛称を呼んでほしい」
「サンムーンとお出かけしたい」
「サンムーンが戸惑うことがないと嬉しい」
そして少しずつ心惹かれていく日々。
「サンムーンと恋人になりたい」
そんなふうに願うようになった。
そして結婚した現在。
旦那様の姿を見かけて近づく。
「アレク」
優しい笑顔に近づく。
「お帰りなさい」
「只今。何を見てたんだ?」
短冊を示す。
「今年の願いは何にしたんだ?」
「ナイショ」
微笑む。
サンムーンは少し残念そうにしながら色鮮やかな短冊と輝く夜空を眺める。
その横顔を見てから今一度空を見る。
自分の短冊もその中にある。
サンムーンは見つけようとしているのだろう。
見つけてくれるかなと母から受け継いだ歌を口ずさむ。
「この先も皆と幸せの思い出を作っていけますように」
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