もしもが叶う世界なら...

Koala(心愛良)

文字の大きさ
2 / 5
Kiyoka's story

第2話 Kiyoka-2

しおりを挟む
「え、じゃぁもし...」
という内容の薄いラジオをダラダラと聞かされながら、バスは終点に着いた。

「早~い!もう着いちゃった。」
と、残念がっているが清香にとってはいつもの3倍くらいの時間に感じる長旅でどっと疲れた。
すぐに降りたいところだが、あいにく荷物が多いため最後に降車したい。
こんな状況でも、降車口を塞き止めないようにとバカップルを気遣う自分を誉めてあげたいものだ。


人は〔もしも〕の話を妄想したり、話したりするのが好きだ。清香の友人達も「もしも芸能人の●●と出会ったら、付き合ったら、結婚したら...」とヘタしたら生涯を終えるまでの妄想で何時間も盛り上がっている。
それに当たり障りなく付き合うのだが、嬉しそうににやけたり、デレッと照れたり友人の百面相に付き合うのは悪い気はしない。(平和だな~)と思いながらいつも眺めている。
バスを降りてもなお、もしも話を続けながら前を歩くバカップルも、程よい距離感ができたからかだんだん微笑ましく思えてきた。


耳にする〔もしも〕の話は、いつも大抵この先の願望を語っているものばかりだ。
〔もしも〕の続きには、この先こんなことが起きたら、こんなことができたら、こんな風になれたらがたくさん詰まっている。
今日だって、先生から進路の話が出た時は進学、就職、目標、夢、まだ決まっていない人でさえ先を考えていた。

多分。私を除いては..

私が〔もしも〕なんて先のことを考えても無駄だと、最初に思ったのはいつだっただろうか。
正確にいえば、〔もしも〕を考えたくないと思ったのはいつだっただろうか。

あるとき、まだ十数年の人生なのに〔もしも〕の先に思い浮かぶことが過去のことしかないことに気づいた。
もしもあの時こうしていれば、もしもあんなことを言わなければ、もしも気付いていたら...
希望や願望ではなく、夢のような妄想でもなく、後悔のみ。

【もしも、あの時私が帰りたいって言わなかったら...】

小学生だった私は、やり直しのきかないワガママを言ってしまった。子どもだったからとか、そんなこと気にしてもしょうがないとか、誰かに話してしまったら私を慰めるために色々言ってくれるだろう。

そうなると、許されるために話したみたいになるのが嫌で、許されたくなくて誰にもこの後悔を話したことはない。


似たような後悔を、テレビで人気タレントが話していた時、共演者は「重く考えすぎだ!ネガティブだね。」と笑っていた。同じく笑って「ですよね~」とそのタレントは返していたが、なんとなく顔では笑って心で泣いているように見えた。
きっと、テレビ用ではなく本当の後悔だったんだろう。
清香キヨカは、母が料理をしながら耳で聴いていたであろう番組からさりげなくチャンネルを変えた。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

処理中です...