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授業編
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しおりを挟む「まず、フェリのことについて説明したらいいですかね?」
リッカの問いかけにジルはこくりと頷いた。とりあえず、課外授業で起こったこと全てを説明してくれと頼まれる。リッカとタイチは来客用のソファに座り、主にリッカが代表して報告することとなった。むしろタイチはジルやノアと同じ立場だろう。リッカからの話を、待っている。
「フェリとは、この子たち……神獣たちに案内されて出会ったんです。」
「やはり、か。神獣様はなんと?」
「泣いてる、そう聞きました。それで案内された場所にフェリがいたんです。まあ、いたというか飛び込んできたというか……。」
「森の中にいた聖獣様は気にかけていたつもりだったが……そうか、やはり配慮が足らなかったな。」
「そこはまあ……で、いろいろあった結果、こうやって僕についてきてくれてるんですけどね。」
端折り過ぎな気もするが、事情は把握できる。リッカ達とは少し離れた場所でフェリが神獣たちや、ウルにローリア、そしてノーツとルキと一緒に戯れている姿を見るに、ものすごく今が幸せであることが聞かずともわかる。リッカに拾われた(というのも何か違うような気もするが)のもあながち間違いではなかったのかもしれない。いや、神獣たちと契約しているリッカであるからこそ、その安全性は保障されているし、神獣が認めているということは信頼に値するということ。
ふわりとした笑みを浮かべながらジルは続ける。
「ふむ、経緯は分かった。聖獣様も幸せそうだしまあいいだろう。して、その後は何があったんだ?」
「それ、僕も気になってた。カガチ先生もかなり疲れた表情だったし、それに森がざわついてたんだよ?絶対に何かあってるよね?あと、何のかは分からないけど、龍種の気配もつかんでる。これも全部リッカくんが関わってるよね?」
「何故全部僕が関わってるって思うの……違うかもじゃん。」
「あれだけざわめいてて被害が出てないって時点で誰かが解決に動いたってことだからね。僕の知ってる人の中で解決できそうなのってリッカくんくらいだもん。」
「……これは、評価してくれてるってこと?」
「まあ一応ね。さ、ほら続き続き。」
少し不服そうな表情をしているがリッカはノアに促されるままに続きを話し始める。契約後、クラスの生徒たちが契約をしに行ったものの生徒の一人が魔獣を怒らせてしまい、それが連鎖し、なぜか群れが押し寄せてきたこと。それをどうにかするためにいったん原因の生徒を助けてからタイチに指示をし、自分が対応しに群れの方へ行ったところまで話すと、疲れたと言わんばかりにリッカはため息をついた。
「おい、俺もそこまでは知っているから、その後をちゃんと話してくれよ。」
「分かってるってー……普段あんまりしゃべらないからちょっと疲れちゃったんだよ。」
「……察してはいたけど、突進牛までも手籠めにするなんて……本当に好かれるんだねえ……。」
「手籠めって言わないの。ちょっと仲良くなっただけだから!なんでみんなそんなこと言うの?」
「みんなって……他に誰か言ったのかい?」
「似たようなことをカガチさんに言われた……。」
しょんぼりとした様子でそう言うリッカだが、もう半ば反論を諦めているのだろう。仲良く、とはいうものの事実でもあるのだ。自分の体質の異常さに、すでに何度も疑問は抱いている。そして、それが何故なのかもしっかり黄龍から説明を受けている。何故と考えたい気持ちともう答えが出ているという葛藤。そのリッカの気持ちが分かるのだろう。ノアは笑うこともなく、そっか……とただ頷いてくれた。一息ついて、話を続ける。
「うんまあ、で……話を続けるんだけど。群れ全体に魔法をかけるにはさすがに僕じゃできないから、すーちゃんに本来の姿に戻ってもらって群れ自体を操縦しようと思ったんだけど、その前に件の龍種の存在に気づいたんだよね。だからさっさと群れを散開させて無力化して僕がその龍種……飛竜と対峙することになったんだけど、」
「ちょっと待って。」
「……急にどうしたの?」
「いや、急にどうしたもこうも無いよ。龍種って飛竜のことだったのかい!?」
「……そんなに驚くことかな?」
「リッカ君、他の龍種ならばともかく……いや、ともかくでは片づけられないが、とにかく飛竜は龍種の中でも特に気性が荒いと言われているんだ。そんな飛竜と対峙して無傷でいられるなんて、奇跡にも等しいんだよ。」
ジルが補足するかのように言ったそれを聞いて、リッカはぱちくりと瞬きをした。まるで信じられないとでも言うような態度だ。リッカは神獣たちの方を向き朱雀を自分の元へ呼び出すと、先ほどジルがリッカに言ったことについて朱雀にも確認しているようだった。
リッカの言葉に、朱雀は呆れたように小さくため息をつく。
『そちらの御仁が言っていることは正しいんですよ、お母様。』
「でも、僕と話していた時はそんな感じしなかったけど……。」
『それはお母様があの飛竜に気に入られたからですわ。そもそも、飛竜が突進牛を追い立てていたのもおそらく何か気に障ることがあったからなのでしょうし。』
「へぇ……カイくんがそんなことするとは思えなかったけどなぁ……。」
『……大切な者の前では、誰でもいい顔をしたくなるでしょう?それと同じです。お母様はあの一瞬で気に入られてしまったのですよ。』
朱雀の言葉で大体分かってしまったのだろう。ジルとノア、それからタイチはもう察している表情だ。リッカも、自分の体質はよく理解しているので、あー……、と理解したと表情が物語っている。朱雀とリッカの会話から飛竜と何らかの交流を持ち、親しくなったということも読み取れるのでジルは話を続けるようにリッカの方を見た。目が合ったリッカは観念したように話し始める。
「まあ、はい。フェリとか、すーちゃんたちがいたこと、樹木の精たちの言葉が間接的にしろ分かったこととかも関係したのと、あと、こーちゃんのことも知ってたみたいで僕の耳飾りを見てカイくんも僕に鱗をくれて、」
「飛竜の鱗!?レアどころの話じゃすまないな……それで、飛竜は帰っていったのか?」
「そうですね。満足して帰っちゃったみたいです……。」
「……やはり、龍種が考えることはよくわからんな。」
何がどう飛竜の心に刺さったのかは分からないが、魔力だけで懐くほど、飛竜は甘くない。何かしらの要因があってリッカに好意を向けている。それにリッカが気づいているのかは分からないが、普通の魔獣なら魔力で好かれて懐かれるというのも分かる。しかし神獣聖獣含め、龍種などの稀少な魔獣たちは魔力だけでは付き従わない。これも、リッカの素質の一つなのだ。
今後のことを考えると末恐ろしいな、とジルは思うのだ。
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