空のおとしもの

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 第二章 雷雲 

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 ごろごろぴっかーん。

 遠くの方から聞こえてくる雷鳴。

 遠くの空には、真っ黒な雲、徐々にこちらへと向かってくる。

 とってもよくない予感。



「どこか、雨宿りできる場所を探さないと。」

 ごろごろぴっかーん。

 再びとどろく雷の音。

 さっきのものより大きく、より近い。

 そして、サッーと急に降り出す雨。



「地上まではあともう少しのはずだけど…。」

 地図とコンパスを見て、確認するマリア。

 地図にはポツポツと雨のシミ。

 既に天界は遥か空の上、後戻りはちょっときびしい。

「地上で雨宿りできそうな場所を探すしかないね。先を急ごう。」



 暗い雲の中を進んでいく私たち。

 時折、雷で黄色く光る雲。

 いつの間にか雷雲の中に入ってしまったみたいで、ものすごい雨と風が吹きつけてくる。

 当然、羽衣もバタバタと揺れる。

 周りのトンネルみたいな雲からは雷。

 ものすごい風で雲の中に吸い込まれていく私たち。



 ごろごろどっしゃーん。

 再び大きな雷鳴。

 真っ暗な雲の中でフラッシュする視界、びりッという音。

 視界がまっ黄色になったあと、あたしたちは意識を手放した。



 ☆☆☆



 ザザザザザっー。

 頬にあたるものすごい量の雨。

 徐々に目を開けると遥か上空にある黒い雲。

 そこから降り立つ、おびただしい数の水滴たち。

 頬をパチンとし、目を覚まさせるアタシ。

 手には土の感触。

 下にあるのは紛れもなく…地面だった。



「そっか…、着いたんだ。」

 バシャバシャと羽についた水滴を振り払い、周囲を見渡すと…。

 遠くの方にうっすらと建物の影。



「マリアー。」

 親友の名前を呼ぶアタシ。

 すると、近くの茂みから声。

「私は大丈夫。」

 頭についた葉っぱをとりながら茂みから出てくるマリア。

「それより、羽衣は?」



 落ちてきた真上を見上げるあたしたち。

 そこにはビリビリに破け、木に引っかかった羽衣があった。



 ごろごろどっしゃーん。

 視界が真っ黄色に染まるような稲光。

 そして相変わらずの大雨。

 唖然とする私たち。

 雨が目に染みる。

 もう一度頬をバチんとするあたし。

「ま、なんとかなるでしょ。」

 雨の中、えっへんと胸を張るあたし。



「それもそうね。まずはこの雨のほうが問題ね。」

 天を仰ぎ、暗い空と雨粒を見つめるマリア。

「それなら問題なしだよ。向こうに建物が見えたの。ついてきて!」

「ちょっ…。」

 マリアの手をつかみ、走り出すアタシ。

「ほら、いそぐよ☆」



 ☆☆☆



 ザッーと雨の降る中、森の中を走って行く私たち。

 ぬかるんだ、地面をブーツで蹴り上げ、前に進んで行く。

「見えた!!」

 雨粒のシャワーの先にあったのはおおっきな三角屋根の建物。

 夜だからよく見えないけどけっこう大きな感じがする。

 雨の中、急いで駆け込む私たち。



 中は真っ暗。

 ひとまず、カバンを下ろすあたしたち。

「まずは、火ね。」

 入り口は明るいけど、中は暗め。

 明るい火をたいて、あとついでに危険なものがないか確かめるのだ。

「じゃ、わたしは料理でも作ろっかな。」

 地面にカバンをおくと、大きなお鍋を取り出すマリア。

「お水はたくさんあるし、スープでも作りましょうか。」

「具材も、いくつか天界から持ってきたやつがあるし…。」

 といって干し肉とジャガイモとかを取り出す。



「じゃ、あたしは火の準備ね。」

 あたしはその辺に落ちていたまだ、濡れていない乾いた枝を集める。

 そして同じくその辺に落ちていた石を積み上げ…。

「じゃっ、じゃーん。」

 かまどの完成‼

 そこに、お水の入ったお鍋を置くマリア。

「うん、イイ感じ‼」

 あとは沸騰させて。

 その間に…。

 その辺に落ちていた手ごろなサイズの木と…。

 余ってた布を巻いて…。

 油をしみこませれば特製のトーチの完成‼

 火打石で火をつけて…。

 アチッ。



「いざ、冒険の旅へ‼」



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