後宮の元妓女は寵愛を受ける

佐倉海斗

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第二話 五年後、元妓女は動き出す

03-3.

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「水をどうぞ、陛下」

 可馨は慣れた手つきで水の入った食器を渡す。

 遠く離れた土地から取りよせたというガラスでできた食器に口をつけ、水を飲み干していく。

 ……なにも疑わないのね。

 毒を入れたわけではない。

 渡したのは普通の水だ。女官に井戸から汲ませたものである。

 ……陛下。

 命が狙われるとは思ってもいないのだろう。

 ……呪術を使えば、簡単に毒が作れるのも知らないようね。

 警戒をしていない。

 それだけ信用されているということだろう。

「言わなくても用意されているのが助かるな」

「陛下のことですもの。すべて、覚えておりますわ」

「健気なやつだ。こちらに座れ」

 梓豪に言われるがまま、可馨はベッドに腰をかける。

 ……色欲が強いこと。

 第一子である音操が亡くなったというのにもかかわらず、音操の母親である王朱亞を見舞に行くわけではない。

「王昭儀は大丈夫でしょうか……?」

 可馨は心配そうな声をあげる。

 ……大丈夫ではないだろう。

 音操のことを溺愛していた。

 皇太子に選ばれてからというものの、音操の健康を第一に考えており、食事制限までしていたほどだ。

 ……恨まれるのは覚悟の上よ。

 偶然、散歩中で出会っただけだ。

 偶然、饅頭をアレルギーと知っていながらも渡してしまっただけだ。

 それだけのことで音操は命を落としてしまった。

 ……我が子のためなら、なんだってするのが母親よ。

 朱亞もそうだろう。

 我が子のためならば、厳しい食事制限を設けていた。

 すべては音操のためだった。

 それを台無しにされた上に命まで奪われたのだ。可馨のことを恨むのもしかたがないだろう。しかし、皇帝の寵妃である可馨に手を出すことはできない。可馨に手を出せば皇帝の怒りを買うのが目に見えていた。
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