後宮の元妓女は寵愛を受ける

佐倉海斗

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第三話 手段は選ばない

02-8.

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「音繰兄上はなぜ死んだのですか」

 子涵は問いかけた。

 赤子用の寝具で眠ろうとしている雹華が相手をしてくれないことを、退屈に思いながら、なにげなく口にしてしまった。

「わかりません」

 可馨は答えた。

 原因不明の死ということになっている。小麦を食べたことにより、発作が起きて死んでしまったというのは皇族にふさわしくない死に方だ。

 だからこそ、原因不明となった。

 それを信じているかのように演じる。

 我が子にも本性を見せられなかった。

「突然、亡くなったと聞いています」

「あんなに元気だったのに?」

「はい。元気でしたが、突然、息を引き取ったそうです」

 可馨は繰り返す。

 それに子涵は納得をしていないようだった。

「どうして、あの人は母上を悪く言うのですか?」

 子涵の言葉を聞き、可馨は子涵を抱きしめた。

 ……この子は優しい。

 母親が傷つけられたことに静かな怒りを抱いている。

 ……この子が皇帝になれば。

 簡単な傀儡人形になるだろう。

 皇太后として政治に関わることもできるはずだ。楊家による政治ができあがる。

 それを想像し、笑顔を浮かべた。

「母上の優しい子」

 可馨は甘い声を出す。

 誰もが魅了されてしまうような声だった。

「あの人は心を壊してしまったかわいそうな人なのよ。だから、関わりを持たないでちょうだい」

「はい、母上。そうします」

「わかってくれて嬉しいわ。子涵は賢いのね」

 可馨は優しく抱きしめ、背中を摩る。

 すると、子涵は怖かったのか、涙を流した。

 その涙は偽りではない。可馨とは違うのだ。その素直な感性に可馨は感心すら抱いた。可馨にはないものだった。
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