悪役令息は犬猿の仲の騎士団長に溺愛される。

佐倉海斗

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第二話 『悪役令息の妹』の元婚約者に追われている

02-3.

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 王宮の警備を部下に指示し、ブラッドの隣に座ったまま、剣の手入れをしているアルバートに視線を向ける。

「休憩してくる」

「少し待ってろ。一緒に行くから」

「なんでだよ。合わせる必要ねえだろ。お前は仕事しろ」

 ブラッドは文句を言いながらも、椅子に座り直した。

 動く気力がないのだろうか。

「あー」

 ブラッドは気の抜けた声をあげる。

 視線は執務室の出入り口に向けられていた。

「最悪」

 舌打ちをしてしまいたくなるのを堪え、姿勢を直す。

 それから、気怠そうな表情を隠すこともなく、アルバートの腕を引っ張った。

「どうした?」

「面倒な奴が来る。対応してくれ」

「……あぁ。そういうことか」

 アルバートは手入れの終わった剣を仕舞う。

「寝たふりをしていろ」

 アルバートはブラッドの髪に手を伸ばす。

 それから大人しく書類に埋もれるかのように伏せたブラッドの髪を優しく撫ぜた。

 露骨なまでに仲の良さを演出しているのか。

 触れたかっただけなのか。

 それを同僚たちに問いかける隙も与えない。

 まるでタイミングを見計らっていたかのように扉が叩かれ、アルバートたちが返事をする前に開けられる。執務室の中で書類整理に追われていたコニーたちも釣られたように扉へと顔を向け、そのまま、動きが止まった。

「ウォルト王子殿下。いかがされましたか?」

 アルバートの淡々とした声を聞きながら、ブラッドは寝たふりをする。

 ……最悪だ。

 執務室を訪れたのはウォルト・エーデルワイス。

 今年十七歳になられたばかりのエーデルワイス王国第二王子だ。そして、ブラッドが溺愛している妹のキャロラインに免罪を被せ、一方的な婚約破棄をした張本人だった。

 ……わざわざ来ることはねえだろ。

 伯爵家の人間が騎士団で働いていることさえも、許せないのだろうか。
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