悪役令息は犬猿の仲の騎士団長に溺愛される。

佐倉海斗

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第二話 『悪役令息の妹』の元婚約者に追われている

04-29.

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「ごほん。ブラッド坊ちゃまもご苦労なされますな」

 周囲の凍り付くような雰囲気の中、唯一、ブラッドに声をかけたのは執事長、セバスだった。

「坊ちゃまは止めてくれ」

「では若奥様とお呼びいたいしましょうか」

「……いや、坊ちゃまで頼む」

 ブラッドはため息を零した。

 ……その二択しかないのか。

 公爵家はブラッドを快く迎え入れてくれた。それはアルバートがブラッドでなければ結婚しないと散々言っていたからなのか、カザニア伯爵家に婚約の打診をしていると知っていたからなのか、わからない。

 どちらにしても、セバスは二人の関係に対して肯定的だった。

「セバス。書類を片付ける。執務室に案内をしてくれ」

「ほお。これはありがたいお話です。アルバート坊ちゃまは書類を片付けてくれませんでしたからね」

「……あいつ、ここでもそうなのか」

 ブラッドは肩を落とした。

 ……それはそうか。

 書類仕事が大の苦手であることは知っていた。

 しかし、次期公爵として示しがつかない為、騎士団でも無理を聞いてやる代わりにペンを握らせたこともあった。その都度、ブラッドは大変な目に遭うのだが、これもアルバートの為であると心を鬼にして接してきた。

「時々なさっておりましたよ」

 セバスはにこりと笑いながら言った。

「ブラッド坊ちゃまには結婚前から苦労をおかけいたしました。そのおかげで、老体に鞭を打ってまで働かずになんとかなっております」

「そうか。そりゃあよかったな」

「はい。今後ともよろしくお願いいたします」

 セバスの言葉に対し、ブラッドは首を横に振った。

「今後は問題ない。俺が代筆できるところはすべて終わらせる」

 ブラッドはどちらかといえば文系だ。

 文官になるべきだったと言われるほどである。

 しかし、アルバートに対する対抗心から騎士団に入団した。血がにじむような努力を重ねた結果、副団長の名にふさわしい実力も兼ね備えている。

 それをセバスも聞いたことがあった。

 だからこそ、心の底からブラッドを歓迎していたのだろう。
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