24 / 75
第1話 狐塚町にはあやかしが住んでいる
02-8.
しおりを挟む
(小娘の癖に。生意気だ)
それは、敬愛する旭からの言葉を思い出したからなのだろうか。
春博よりも、香織の方が頼りになると言わんばかりの表情と言葉を思い出し、少しだけ不満に思う。
誰よりも旭の傍に居続けていると自負しているだけあり、彼からの評価を気にしているのかもしれない。
(封具でも抑えられない霊視はある。ただ、それだけだ)
香織が掛けている眼鏡を取り上げる。
触れるだけでも痛みが走る眼鏡は、強すぎる霊視の力を持った道具だった。
「かっ、返して……!!」
小さな声で文句を言いながら、取り返そうとする香織を見て、春博は口角を上げた。
「なにを怯える。これを通して見る景色はそれほどに違うのか?」
参拝客が不審な眼で見つめていることなど知らずに、春博は眼鏡を覗き込む。
(これは)
眼鏡を通じて映し出される光景は、空気中を漂う霊気のない世界。
多くの人間が見つめている世界は、春博にとっては新鮮な景色だった。
(なんて美しい世界なのだろう)
鬼には無縁の世界である。
それなのに、何故だろうか。
その世界を視ていると心が痛むのだ。
(心が引き寄せられる)
鬼の本能のままに人を喰らっていた頃に感じていたにも、確かに抱いていた痛みを思い出す。
(なんて綺麗な世界なんだろう)
霊気のない世界は、美しかった。
何も知らずに生きている人間に対して抱く感情は、憐れみや同情といった下の者へ向ける感情ではない。
どちらかと言えば、旭に対して抱く感情に近いものを感じていた。
(僕ですら、封具を使えば力が消えるのに)
香織は、霊視を抑える効果がある眼鏡をしていても春博を見つけ出した。
この時代では珍しい現象だった。
それは、敬愛する旭からの言葉を思い出したからなのだろうか。
春博よりも、香織の方が頼りになると言わんばかりの表情と言葉を思い出し、少しだけ不満に思う。
誰よりも旭の傍に居続けていると自負しているだけあり、彼からの評価を気にしているのかもしれない。
(封具でも抑えられない霊視はある。ただ、それだけだ)
香織が掛けている眼鏡を取り上げる。
触れるだけでも痛みが走る眼鏡は、強すぎる霊視の力を持った道具だった。
「かっ、返して……!!」
小さな声で文句を言いながら、取り返そうとする香織を見て、春博は口角を上げた。
「なにを怯える。これを通して見る景色はそれほどに違うのか?」
参拝客が不審な眼で見つめていることなど知らずに、春博は眼鏡を覗き込む。
(これは)
眼鏡を通じて映し出される光景は、空気中を漂う霊気のない世界。
多くの人間が見つめている世界は、春博にとっては新鮮な景色だった。
(なんて美しい世界なのだろう)
鬼には無縁の世界である。
それなのに、何故だろうか。
その世界を視ていると心が痛むのだ。
(心が引き寄せられる)
鬼の本能のままに人を喰らっていた頃に感じていたにも、確かに抱いていた痛みを思い出す。
(なんて綺麗な世界なんだろう)
霊気のない世界は、美しかった。
何も知らずに生きている人間に対して抱く感情は、憐れみや同情といった下の者へ向ける感情ではない。
どちらかと言えば、旭に対して抱く感情に近いものを感じていた。
(僕ですら、封具を使えば力が消えるのに)
香織は、霊視を抑える効果がある眼鏡をしていても春博を見つけ出した。
この時代では珍しい現象だった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
4
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる