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第1話 狐塚町にはあやかしが住んでいる
03-4.
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旭と対面する日に備え、教えられてきた挨拶に比べれば、あまりにも劣った内容であった。
アルバイトとしての巫女の仕事よりも、重要であると煩く教えられてきた言葉を話すこと、動揺を隠すこともできずに、香織は羞恥心から頬を赤く染めた。
(わたしのバカ……)
穴があったら入りたい。とは、まさにこのことだろう。
失敗してしまったことを後悔しつつも、春博か旭の言葉を待つ。
少し離れた場所からは笑い声が聞こえている。
その笑い声の主は旭だった。
(なんで、こんなことも、上手く出来ないの)
練習をしていた時は、失敗することがなかった。
神主を務めている父親や祖父も、これならば、旭を前にしても大丈夫だろうと認めていた。
しかし、本番で失敗をしてしまった。
その上、旭からは笑われてしまった。
「狐塚の娘。名を香織と申したな。お前のことは、光彦からよく聞いているよ」
羞恥心と後悔。
それから自己嫌悪も混ざり、香織は、泣きたくなった。
そんな香織の心を読んだかのように、旭は楽しそうに言葉を紡ぐ。
「そう怯えるな。俺はお前を害することはしない」
旭の笑い声と共に鈴の音が鳴る。
「お前の気が弱いのも知っている。呼び出してしまい、悪かったな」
「あ、え、えっと。……だっ、大丈夫です。その、仕事なので」
「そうかい。無理はせんようにな」
小さなその音を耳にすると、様々な負の感情の中で揺れていた心から穏やかになるのを感じた。
香織はそれを知っている。
(鈴の音――、確か、付喪神の音だったはず)
百年以上使われた道具には、魂が宿ることがある。
旭の言葉に反応をするかのように鳴り始めた鈴も、その一つであろう。
鈴が奏でるのは、お祓いの時に使われることもある神聖な音色。
心が安らいだのは、その音を耳にしたからだろうか。
アルバイトとしての巫女の仕事よりも、重要であると煩く教えられてきた言葉を話すこと、動揺を隠すこともできずに、香織は羞恥心から頬を赤く染めた。
(わたしのバカ……)
穴があったら入りたい。とは、まさにこのことだろう。
失敗してしまったことを後悔しつつも、春博か旭の言葉を待つ。
少し離れた場所からは笑い声が聞こえている。
その笑い声の主は旭だった。
(なんで、こんなことも、上手く出来ないの)
練習をしていた時は、失敗することがなかった。
神主を務めている父親や祖父も、これならば、旭を前にしても大丈夫だろうと認めていた。
しかし、本番で失敗をしてしまった。
その上、旭からは笑われてしまった。
「狐塚の娘。名を香織と申したな。お前のことは、光彦からよく聞いているよ」
羞恥心と後悔。
それから自己嫌悪も混ざり、香織は、泣きたくなった。
そんな香織の心を読んだかのように、旭は楽しそうに言葉を紡ぐ。
「そう怯えるな。俺はお前を害することはしない」
旭の笑い声と共に鈴の音が鳴る。
「お前の気が弱いのも知っている。呼び出してしまい、悪かったな」
「あ、え、えっと。……だっ、大丈夫です。その、仕事なので」
「そうかい。無理はせんようにな」
小さなその音を耳にすると、様々な負の感情の中で揺れていた心から穏やかになるのを感じた。
香織はそれを知っている。
(鈴の音――、確か、付喪神の音だったはず)
百年以上使われた道具には、魂が宿ることがある。
旭の言葉に反応をするかのように鳴り始めた鈴も、その一つであろう。
鈴が奏でるのは、お祓いの時に使われることもある神聖な音色。
心が安らいだのは、その音を耳にしたからだろうか。
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