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第1話 狐塚町にはあやかしが住んでいる
07-17.
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(以前、顔を見合わせた時とは別人のようだ)
以前、弥生と顔を合わせた時のことを思い出す。
五十年以上前のことだ。その時には、お堂に籠っていた時のように綺麗な言葉を口にしており、上品な振る舞いをしていたはずだ。
あやかしにとって、五十年はあっという間だ。
その僅かな間に性格が激変するとは考えにくい。
「いや」
旭は警戒を緩めない。
「祠を補修するために来ただけだ」
旭の言葉を聞き、弥生の表情が曇った。
それから、気を失っている人の子――、芦屋美弥を手放すわけにはいかないと言わんばかりに両腕で強く抱きしめる。
(人の子どもに執着をしているのか?)
春博は旭に庇われながらも、様子を伺う。
(番にするのならば丁寧に扱うはず。だが、あの様子では衰弱死してもおかしくはない)
死なせたくないのならば、弥生は美弥を手放さなければならない。
人質として扱うつもりならば、守るように抱きしめている必要がない。
「余計なことをしないでよ」
弥生は怒りを露にした。
「このままでいいだに」
独り言のように吐き捨て、弥生はゆっくりと立ち上がる。
「人の子と心中でも図るつもりかい?」
旭は呆れたように鼻で笑った。
「文句あっか?」
弥生は開き直ったかのように笑う。
「この子がいりゃあ、なんでもいいだ」
「その子は弥生が欲した子ではないだろう?」
「そんなことは知っとるわ」
何もかも恨んでいると言いたげな影のある両目を旭に向けた。
三百年前、見た者の心を奪うと囁かれた美貌の持ち主とは思えないほどに痩せこけてしまった弥生の目には、生気がない。
以前、弥生と顔を合わせた時のことを思い出す。
五十年以上前のことだ。その時には、お堂に籠っていた時のように綺麗な言葉を口にしており、上品な振る舞いをしていたはずだ。
あやかしにとって、五十年はあっという間だ。
その僅かな間に性格が激変するとは考えにくい。
「いや」
旭は警戒を緩めない。
「祠を補修するために来ただけだ」
旭の言葉を聞き、弥生の表情が曇った。
それから、気を失っている人の子――、芦屋美弥を手放すわけにはいかないと言わんばかりに両腕で強く抱きしめる。
(人の子どもに執着をしているのか?)
春博は旭に庇われながらも、様子を伺う。
(番にするのならば丁寧に扱うはず。だが、あの様子では衰弱死してもおかしくはない)
死なせたくないのならば、弥生は美弥を手放さなければならない。
人質として扱うつもりならば、守るように抱きしめている必要がない。
「余計なことをしないでよ」
弥生は怒りを露にした。
「このままでいいだに」
独り言のように吐き捨て、弥生はゆっくりと立ち上がる。
「人の子と心中でも図るつもりかい?」
旭は呆れたように鼻で笑った。
「文句あっか?」
弥生は開き直ったかのように笑う。
「この子がいりゃあ、なんでもいいだ」
「その子は弥生が欲した子ではないだろう?」
「そんなことは知っとるわ」
何もかも恨んでいると言いたげな影のある両目を旭に向けた。
三百年前、見た者の心を奪うと囁かれた美貌の持ち主とは思えないほどに痩せこけてしまった弥生の目には、生気がない。
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