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第四章 鳥像の門
不自然な神様7
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思った通り、作業場の神様の青い水のそばにシロキがしゃがみ込んでいた。
「シロキ、わたしから離れないで」
そう言いながら近づいた時、初めて床に落ちている神様の骨に気がついた。
何で……シロキの手の届かない空中に固定していたはずなのに。そうしたのには理由がある。今、美しい四本の手足の骨は刃物のような形をしている。
わたしが形を変えた。
シロキを造る時、最初はへらのようにして使っていた。わたしの想い描く姿に整えていくのに、神様の骨は最適だった。
細かいところまで、滑らかに仕上がっていくシロキには自分でもほれぼれした。
だが、最終段階になって困ったことが起きた。記憶を切り離すにはどうしたら良いのだろう、と。
わたしの造った神様や悪魔は勘違いしている。
彼らはわたしがわたしの記憶の全てを与えてから、それを奪っていると思い込んでいるが、実際は生命の神様の記憶だ。
トリプガイドと呼ばれている神様の水で生成される過程で記憶も取り込まれてしまう。
わたしにはこれが不都合だった。シロキが本当に複製になってしまう。
わたしはそれに耐えられない。そんな身勝手な理由で記憶を削ろうと思った。
その時、骨の片側を鋭利な状態にしてみると、驚くほど簡単に記憶を断絶できた。
奪う必要なんてなかった。ただ記憶を意味をなさないように断絶していく。
シロキに続く神様も悪魔もそうやって造った。みんな一秒にも満たない記憶の断片やある程度意味を成す記憶まで、それぞれに違た形でわたしの神様の記憶を継承している。
ある日、偶然に、つながる情報のもの同士が近づいて、大切な記憶が蘇ってしまうかもしれないし、そんな日は永久にこないかも知れない。
――そんな神様の骨が目の前で、赤く染まっている。
「どうしたんだ? 手を見せてみろ」
「大丈夫」
「駄目だ、大丈夫じゃない。造ったわたしが言うんだ。こっちに来なさい、早く」
もたもたするシロキを強引に立ち上がらせる。思った以上の出血にわたしの方が焦っている。
「どうして勝手に触ったりしたんだ。ちゃんと治してやるから少し辛抱するんだよ」
「僕、消えちゃうの?」
「お前も『僕』か」
初めて聞いたシロキの一人称がわたしの神様と同じだと余裕がないのに、口に出る。
「骨の方から僕に向かって降りて来たんだ。白くてきれいだから、触れてみた。そっと」
「ここに手を入れて」
話を聞きながらシロキの手を掴み、神様の水の中に浸す。
そっと触れただけとは思えない。掌の皮膚が大きく裂けて、指の骨がのぞいている。
それに、神様の骨の方からシロキに寄って来たって……やっぱり同じ身体同士、呼び合うのか。
そう思ってシロキの唯一わたしの神様そのものの部分、左の眼球を見た。
シロキも見つめ返してくる。
「お前は消えたりしないよ。でもこの骨には絶対に触ってはいけないよ。これは神様を殺す刀だから」
「シロキ、わたしから離れないで」
そう言いながら近づいた時、初めて床に落ちている神様の骨に気がついた。
何で……シロキの手の届かない空中に固定していたはずなのに。そうしたのには理由がある。今、美しい四本の手足の骨は刃物のような形をしている。
わたしが形を変えた。
シロキを造る時、最初はへらのようにして使っていた。わたしの想い描く姿に整えていくのに、神様の骨は最適だった。
細かいところまで、滑らかに仕上がっていくシロキには自分でもほれぼれした。
だが、最終段階になって困ったことが起きた。記憶を切り離すにはどうしたら良いのだろう、と。
わたしの造った神様や悪魔は勘違いしている。
彼らはわたしがわたしの記憶の全てを与えてから、それを奪っていると思い込んでいるが、実際は生命の神様の記憶だ。
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わたしにはこれが不都合だった。シロキが本当に複製になってしまう。
わたしはそれに耐えられない。そんな身勝手な理由で記憶を削ろうと思った。
その時、骨の片側を鋭利な状態にしてみると、驚くほど簡単に記憶を断絶できた。
奪う必要なんてなかった。ただ記憶を意味をなさないように断絶していく。
シロキに続く神様も悪魔もそうやって造った。みんな一秒にも満たない記憶の断片やある程度意味を成す記憶まで、それぞれに違た形でわたしの神様の記憶を継承している。
ある日、偶然に、つながる情報のもの同士が近づいて、大切な記憶が蘇ってしまうかもしれないし、そんな日は永久にこないかも知れない。
――そんな神様の骨が目の前で、赤く染まっている。
「どうしたんだ? 手を見せてみろ」
「大丈夫」
「駄目だ、大丈夫じゃない。造ったわたしが言うんだ。こっちに来なさい、早く」
もたもたするシロキを強引に立ち上がらせる。思った以上の出血にわたしの方が焦っている。
「どうして勝手に触ったりしたんだ。ちゃんと治してやるから少し辛抱するんだよ」
「僕、消えちゃうの?」
「お前も『僕』か」
初めて聞いたシロキの一人称がわたしの神様と同じだと余裕がないのに、口に出る。
「骨の方から僕に向かって降りて来たんだ。白くてきれいだから、触れてみた。そっと」
「ここに手を入れて」
話を聞きながらシロキの手を掴み、神様の水の中に浸す。
そっと触れただけとは思えない。掌の皮膚が大きく裂けて、指の骨がのぞいている。
それに、神様の骨の方からシロキに寄って来たって……やっぱり同じ身体同士、呼び合うのか。
そう思ってシロキの唯一わたしの神様そのものの部分、左の眼球を見た。
シロキも見つめ返してくる。
「お前は消えたりしないよ。でもこの骨には絶対に触ってはいけないよ。これは神様を殺す刀だから」
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