293 / 331
第四章 鳥像の門
不自然な神様8
しおりを挟む
わたしが直ぐに見つけて修復してやったから良いが、それでも完全に治すまでに三日かかった。
命の水の中に腕を入れ、作成した時のように丁寧に、骨と肉の形を整え、白く滑らかな皮膚で覆ってやった。
神様の骨は、使いのわたしにしか解らない微妙な加減で使わなければ、危険なものだとこの時知った。
わたしは回復したシロキを十の浄化場に一つずつ案内する事を始めた。
隅々まで時間をかけて見せて、理解させた。わたしが選別し、そこに収納した魂との交流はシロキが満足するまでやらせた。
これからのこの子の役割に最も必要なことだ。この子には地上からの魂の運搬とそれぞれの浄化場への振り分けをさせようと思っていた。
月の神様は月食の時にしか、長距離の門の移動ができないので、一度に運ぶ量は半端ではない。神様にとっては特に何ともない作業かも知れないが、それを受け取り、浄化場へ誘導するわたしには限界が近づいていた。
果たして自分が判別している罪の色が合っているのかも怪しい。
浄化の方法についてもそうだ。これもいずれ正しく実行できるものに任せたいけれど、今はまずその前段階、選別を間違えのない神様に託したい。
わたしの神様の目を持つこの子ほどの適任者はいない。
今のうちに人間の魂と、浄化場の全てを知っておいてもらいたい。
今日は初めて炎の浄化場に連れてきた。
よっぽど気に入ったのか目をキラキラさせてわたしを追い越して先を歩く。
この前まで通っていた水の地獄とは大違いだ。シロキは海を見るのを好んだが、近づくと震えて足先すら水に浸かろうとはしなかった。
「水が怖いのかい?」
「海は好き。でも僕はきっと泳げないから中に入るのは怖い」
「そうか……水が怖いわけないよな。この間ここに来た時は大雨だった」
――雨に打たれるシロキの美しさがまだ目に焼き付いていている。むしろ思い出すごとに感情が揺さぶられ、違った魅力で再現される。
水を身体中に浴びて、雨の方が歓喜の声を上げて弾けていた。雨の感情を見たことなら何度でもある。悲しみ、苦痛、怒り、戸惑い、癒し、励まし……様々な意味をその中に湛えて降る雨を知っている。
そんなわたしも初めて見る、称えるためだけに躍動して流れる雨、それを一身に受け止めるシロキの鮮やかさは、生命の光そのものだった。わたしの神様を重ねずにはいられない。
土砂降りの雨の祝福は大いに受けても、優しい雨が降っている時は濡れるのを嫌って木の下や岩陰から出ようとしない。
「冷たい雨は嫌い。強い雨は暖かいから好き」
良くわからないことを言って空を見上げて溜息をつく顔も愛おしい。わたしはこの子と会えなくなったら、またあの白い空間で独り、正気を保てるだろか。
命の水の中に腕を入れ、作成した時のように丁寧に、骨と肉の形を整え、白く滑らかな皮膚で覆ってやった。
神様の骨は、使いのわたしにしか解らない微妙な加減で使わなければ、危険なものだとこの時知った。
わたしは回復したシロキを十の浄化場に一つずつ案内する事を始めた。
隅々まで時間をかけて見せて、理解させた。わたしが選別し、そこに収納した魂との交流はシロキが満足するまでやらせた。
これからのこの子の役割に最も必要なことだ。この子には地上からの魂の運搬とそれぞれの浄化場への振り分けをさせようと思っていた。
月の神様は月食の時にしか、長距離の門の移動ができないので、一度に運ぶ量は半端ではない。神様にとっては特に何ともない作業かも知れないが、それを受け取り、浄化場へ誘導するわたしには限界が近づいていた。
果たして自分が判別している罪の色が合っているのかも怪しい。
浄化の方法についてもそうだ。これもいずれ正しく実行できるものに任せたいけれど、今はまずその前段階、選別を間違えのない神様に託したい。
わたしの神様の目を持つこの子ほどの適任者はいない。
今のうちに人間の魂と、浄化場の全てを知っておいてもらいたい。
今日は初めて炎の浄化場に連れてきた。
よっぽど気に入ったのか目をキラキラさせてわたしを追い越して先を歩く。
この前まで通っていた水の地獄とは大違いだ。シロキは海を見るのを好んだが、近づくと震えて足先すら水に浸かろうとはしなかった。
「水が怖いのかい?」
「海は好き。でも僕はきっと泳げないから中に入るのは怖い」
「そうか……水が怖いわけないよな。この間ここに来た時は大雨だった」
――雨に打たれるシロキの美しさがまだ目に焼き付いていている。むしろ思い出すごとに感情が揺さぶられ、違った魅力で再現される。
水を身体中に浴びて、雨の方が歓喜の声を上げて弾けていた。雨の感情を見たことなら何度でもある。悲しみ、苦痛、怒り、戸惑い、癒し、励まし……様々な意味をその中に湛えて降る雨を知っている。
そんなわたしも初めて見る、称えるためだけに躍動して流れる雨、それを一身に受け止めるシロキの鮮やかさは、生命の光そのものだった。わたしの神様を重ねずにはいられない。
土砂降りの雨の祝福は大いに受けても、優しい雨が降っている時は濡れるのを嫌って木の下や岩陰から出ようとしない。
「冷たい雨は嫌い。強い雨は暖かいから好き」
良くわからないことを言って空を見上げて溜息をつく顔も愛おしい。わたしはこの子と会えなくなったら、またあの白い空間で独り、正気を保てるだろか。
0
あなたにおすすめの小説
僕に仕えるメイドは世界最強の英雄です1~またクビになったけど、親代わりのメイドが慰めてくれるので悲しくなんてない!!~
あきくん☆ひろくん
ファンタジー
仕事を失い、居場所をなくした青年。
彼に仕えるのは――世界を救った英雄たちだった。
剣も魔法も得意ではない主人公は、
最強のメイドたちに守られながら生きている。
だが彼自身は、
「守られるだけの存在」でいることを良しとしなかった。
自分にできることは何か。
この世界で、どう生きていくべきか。
最強の力を持つ者たちと、
何者でもない一人の青年。
その主従関係は、やがて世界の歪みと過去へと繋がっていく。
本作は、
圧倒的な安心感のある日常パートと、
必要なときには本格的に描かれる戦い、
そして「守られる側の成長」を軸にした
完結済み長編ファンタジーです。
シリーズ作品の一編ですが、本作単体でもお楽しみいただけます。
最後まで安心して、一気読みしていただければ幸いです。
ダンジョン美食倶楽部
双葉 鳴
ファンタジー
長年レストランの下働きとして働いてきた本宝治洋一(30)は突如として現れた新オーナーの物言いにより、職を失った。
身寄りのない洋一は、飲み仲間の藤本要から「一緒にダンチューバーとして組まないか?」と誘われ、配信チャンネル【ダンジョン美食倶楽部】の料理担当兼荷物持ちを任される。
配信で明るみになる、洋一の隠された技能。
素材こそ低級モンスター、調味料も安物なのにその卓越した技術は見る者を虜にし、出来上がった料理はなんとも空腹感を促した。偶然居合わせた探索者に振る舞ったりしていくうちに【ダンジョン美食倶楽部】の名前は徐々に売れていく。
一方で洋一を追放したレストランは、SSSSランク探索者の轟美玲から「味が落ちた」と一蹴され、徐々に落ちぶれていった。
※カクヨム様で先行公開中!
※2024年3月21で第一部完!
科学×魔法で世界最強! 〜高校生科学者は異世界魔法を科学で進化させるようです〜
難波一
ファンタジー
「魔法ってのは……要はエネルギーの制御だろ?」
高校生にして超人的な科学知識を持つ天才・九条迅は、ある日、異世界アルセイア王国に「勇者」として召喚された。
だが、魔王軍との戦争に駆り出されると思いきや——
「お前、本当に勇者か? 剣も魔法も、まともに使えないのか……?」
「科学的に考えれば、魔法ってのはもっと進化できるはずだ!」
剣も魔法も素人の迅だったが、「魔法を科学的に解析し、進化させる」という異端の方法で異世界の常識を根底から覆し始める!
魔法の密度を最適化した「魔力収束砲」
魔法と人体の関係を解明し、魔力を増大させる「魔力循環トレーニング」
神経伝達を強化し、攻撃を見切る「神経加速《ニューロ・ブースト》」
次々と編み出される新技術に、世界は驚愕!
やがて、魔王軍の知将《黒の賢者》アーク・ゲオルグも迅の存在に興味を持ち始め——
「科学 vs 魔法」「知能 vs 知能」
最強の頭脳戦が今、幕を開ける——!
これは、「魔法を科学で進化させる勇者」が、異世界を変革していく物語!
※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。
クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双
四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。
「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。
教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。
友達もなく、未来への希望もない。
そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。
突如として芽生えた“成長システム”。
努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。
筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。
昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。
「なんであいつが……?」
「昨日まで笑いものだったはずだろ!」
周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。
陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。
だが、これはただのサクセスストーリーではない。
嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。
陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。
「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」
かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。
最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。
物語は、まだ始まったばかりだ。
悪役皇子、ざまぁされたので反省する ~ 馬鹿は死ななきゃ治らないって… 一度、死んだからな、同じ轍(てつ)は踏まんよ ~
shiba
ファンタジー
魂だけの存在となり、邯鄲(かんたん)の夢にて
無名の英雄
愛を知らぬ商人
気狂いの賢者など
様々な英霊達の人生を追体験した凡愚な皇子は自身の無能さを痛感する。
それゆえに悪徳貴族の嫡男に生まれ変わった後、謎の強迫観念に背中を押されるまま
幼い頃から努力を積み上げていた彼は、図らずも超越者への道を歩み出す。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
老聖女の政略結婚
那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。
六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。
しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。
相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。
子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。
穏やかな余生か、嵐の老後か――
四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。
異世界に降り立った刀匠の孫─真打─
リゥル
ファンタジー
異世界に降り立った刀匠の孫─影打─が読みやすく修正され戻ってきました。ストーリーの続きも連載されます、是非お楽しみに!
主人公、帯刀奏。彼は刀鍛冶の人間国宝である、帯刀響の孫である。
亡くなった祖父の刀を握り泣いていると、突然異世界へと召喚されてしまう。
召喚されたものの、周囲の人々の期待とは裏腹に、彼の能力が期待していたものと違い、かけ離れて脆弱だったことを知る。
そして失敗と罵られ、彼の祖父が打った形見の刀まで侮辱された。
それに怒りを覚えたカナデは、形見の刀を抜刀。
過去に、勇者が使っていたと言われる聖剣に切りかかる。
――この物語は、冒険や物作り、によって成長していく少年たちを描く物語。
カナデは、人々と触れ合い、世界を知り、祖父を超える一振りを打つことが出来るのだろうか……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる