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第四章 鳥像の門
ずっと一緒に6
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雪の中でカドと夢中で遊んだ後に、やっと湖のほとりで話をした。
この頃の鏡の地獄の湖は今とは違い、周囲の山々もどこか殺風景で、もちろん鳥の姿も見えず、寂し気な風景が広がるだけの世界だった。
ひとつ変化があったのは、カドが現れて、一色だった白が急にその種類を増したことだ。
希望の白はこんな色。初めて知る白で雲が浮いている。
「お前は鏡の中に居たんだよね?」
作成者にこの子の事を尋ねても、曖昧な表現でしか答えてくれなかった。本人に聞く方が早いだろう。
「そうみたい」
かわいい声と目線を僕にぽんっと投げかける。
覚えていないのか……やっぱり作成者が青い液体の中でやっていたことと記憶が関係しているのだろか。
――みんなが同じ記憶を共有していたら、世界は動き出さないんだよ、そうあの人は言っていた。
カドが来て、白の種類が無限だったことを知った、この感覚のことだろうか。
「シロキさん? 何を考えてるの」
「あ、ごめん。僕、良くぼーっとしてるって言われるんだ」
「あのね、俺、シロキさんとずっと前から一緒にいたよ。シロキさんが俺のことを知るずっと前から」
「お前……」
僕たちの後ろに立っていた作成者が息を呑んだ。
「――一人称が『俺』なんだ」
何なんだ、この人。そんなことで大袈裟だな。
「僕を知っているって、どういう事?」
「俺はずっとシロキさんを守ってきた記憶があるんだ。でも、もう良くわからないし、どうでもいいや。だって今、シロキさんが目の前に居るんだもん」
うん、訳がわからないけれど、僕もどうでもいい。カドがこうして僕のそばに居さえすれば、永遠に存在していたいと思う理由はもう十分だ。カドを抱き寄せる。
視界の隅に映る無表情な作成者の目が少し濡れていた。
この頃の鏡の地獄の湖は今とは違い、周囲の山々もどこか殺風景で、もちろん鳥の姿も見えず、寂し気な風景が広がるだけの世界だった。
ひとつ変化があったのは、カドが現れて、一色だった白が急にその種類を増したことだ。
希望の白はこんな色。初めて知る白で雲が浮いている。
「お前は鏡の中に居たんだよね?」
作成者にこの子の事を尋ねても、曖昧な表現でしか答えてくれなかった。本人に聞く方が早いだろう。
「そうみたい」
かわいい声と目線を僕にぽんっと投げかける。
覚えていないのか……やっぱり作成者が青い液体の中でやっていたことと記憶が関係しているのだろか。
――みんなが同じ記憶を共有していたら、世界は動き出さないんだよ、そうあの人は言っていた。
カドが来て、白の種類が無限だったことを知った、この感覚のことだろうか。
「シロキさん? 何を考えてるの」
「あ、ごめん。僕、良くぼーっとしてるって言われるんだ」
「あのね、俺、シロキさんとずっと前から一緒にいたよ。シロキさんが俺のことを知るずっと前から」
「お前……」
僕たちの後ろに立っていた作成者が息を呑んだ。
「――一人称が『俺』なんだ」
何なんだ、この人。そんなことで大袈裟だな。
「僕を知っているって、どういう事?」
「俺はずっとシロキさんを守ってきた記憶があるんだ。でも、もう良くわからないし、どうでもいいや。だって今、シロキさんが目の前に居るんだもん」
うん、訳がわからないけれど、僕もどうでもいい。カドがこうして僕のそばに居さえすれば、永遠に存在していたいと思う理由はもう十分だ。カドを抱き寄せる。
視界の隅に映る無表情な作成者の目が少し濡れていた。
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