奇跡の神様

白木

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第四章 鳥像の門

地獄2

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 横になったまま目を瞑っていたが、もぞもぞと作成者が動き出したことに直ぐに気がついた。どうしたって僕は眠れない。

「起きたの?」

 静かに起き上がり伸びもしないところが、この人を余計人形のように見せる。

「カドの膝で目が覚めるとは思っていなかったよ」

 作成者が眩しそうにカドを見上げた。カドも応えて優しく微笑む。

「さあ、務めを果たさなくては」

「早っ。もう?」

 作成者が少し呆れた目で僕を見た。

「お前は時々神様らしくないことを言うね」

 僕が一番気にしていることだ。僕の不安を感じたようにカドが手を握ってくれる。

 この子には不思議と僕の感情が伝わってしまう。握られた手は僕を慰めてくれるけれど、同時にしっかりしないと、と強く思う。

 僕が動揺する度にこの子に負担をかけてしまう。

「その務めって何なの?」

 カドが率直に聞いた。この子が発する言葉は全部純粋に聞こえて羨ましい。

「仕事は三つある。一つ目は地獄を造ること」

「何、それ?」

「浄化場が狭いんだ。これからどれだけの魂が来ても対応できるような安定した浄化場が必要だ。今ある十の浄化場をこの空間から下に押し出して、独立した『地獄』にする」

 僕とカドは周囲を見渡す。と、いってもここから浄化場を確認することは出来ないが。

 この白く、壁すら想像できない空間の中にある浄化場を全て外に出す……ここに収まり切らない大きさになるということか、凄い。

「他の二つは?」

 カドが大して衝撃を受けた様子もなく尋ねる。やっぱり凄い子だ。

「二つ目はお前たちに門を造ることだよ」

「門?」

 僕より先にカドが聞き返した。

「シロキさんに何をさせるつもり?」

「お前は勘が良いね。そんなにムキにならないでくれ。門と言っても空間のようなものだ。そしてシロキにはその空間で地上からの魂の運搬を頼みたい。それだけだ、何も危険はないよ」

「何の話? 僕が魂を運ぶの?」

 カドが一瞬疑わしそうに作成者の顔を見てから言った。

「シロキさんに無理をさせないなら……いいよ」

「お前はわたしより頼もしい使いだね」

 何だろう……完全に無視されている気がする。

 僕も仲間に入りたくて、少し大きな声を出した。

「それで三つ目はなんのさ」

 二人が同時に僕を見る。ちょっと大人気なったかな。

「――そうだね、三つ目は悪魔を造ることだ」

「それ、何?」

 今度はカドもピンときていないようでほっとした。

「わたしの代わりに浄化をしてくれる者のことだよ」

「でも、それには魂か細胞が必要なんじゃないの」

 またカドが賢いこと言うものだから、僕の安堵は一瞬で終わる。

「――それが、あるんだよ。最適な魂が。お前たちから隠して持っていたんだ。動揺させると思ってね。お前たちにその記憶はないはずだけれど、お前たちの本質が変っていない以上、初めて会ったとしても過去を新しくなぞるだろう。それが怖くて隠していた」

「……」

 この人、説明が下手だと思っていたけど、ここまでとは。

 この人は自分と他人の前提が同じだと思って話をするふしがある。カドは理解できているだろうか。幼さの残る顔に複雑な表情を浮かべている。その顔が不意に僕を見た。

「シロキさん、変わらないでね」

「僕が? 何を言っているの? 僕はずっと僕だよ」

 作成者が僕らを見る目がとても悲しそうだ。

 この二人は僕の知らないところで何かを共有している。

「――とにかく、二人ともここから動かず一緒にいるんだよ。わたしは今話した順番に勤めを果たすから。わたしもだいぶ慣れてきたよ」

 言い終わった途端、白い空間が激しく揺れた。

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