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第一章 鳥に追われる
追う鳥2
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あの鳥が現れたのは二日前の夜だった。
帰宅途中、いつものように自宅近くのコンビニに寄り、冷たい空に浮く異常に眩しい月を見上げて信号待ちをしていた。
丁度、今日あった悔しいことで心が闇に埋め尽くされそうだった。大通りの明かりはこんな時ちっとも役に立たない。月明りがかろうじて心が黒に塗りつぶされるのを押しとどめてくれている。
その空に、この時間珍しく鳥が空を旋回しているのを見た。
そりゃあ夜に活動する鳥だってたくさんいるだろう。自分がここら辺で見慣れないだけだ。
僕が思わず信号を一つ見送るほど見入ってしまったのは、その鳥の飛び方が、何か気持ちが悪かったからだ。
何だかこう、獲物を狙っているとも違う、監視しているというか……そう、探している、という感じだ。
そして、その鳥と目が合ったんだ。
「そんな訳ない――」
思わず口に出していた。
「どうした?」
アオチさんが心配そうな顔で、肩越しに僕を見た。
「あの……空を飛んでいる鳥と目が合ったことってありますか」
「……ないよ」
怪訝な顔で答えられた。この人といると、いつもこんな調子になってしまうから苦手だ。というか、僕に得意な人なんていないけど。
エレベーターが静かに止まった。
アオチさんが扉が開くまでの微妙な間すらもどかしそうに、足踏みをしている。
イラつかせるためかと思うほどゆっくり扉が開き、するりと飛び出したアオチさんの後に続く。
だだっ広いエントランスの中央で、不気味なくらい無機質な白い石のオブジェを背に、オゼさんが立っていた。
顔だけをこっちを向けて、涼し気に笑っている。まず両目があることを確認してほっとする。
「良かった、無事で。さっき鳥が恐ろしいものを咥えているのを見てさ――」
アオチさんが駆け寄りながら、さっき窓から目撃した光景を話している。
「鳥の数もどんどん増えているよな。でも人を襲うなんて今までなかった。どうなってるんだろな」
オゼさんが目玉の話を聞いても全く動じていないことに、僕の方が驚く。
話しながらもオゼさんが僕の顔をチラチラ見ていることに気がついていた。顔色の悪い僕を心配しているんだ。
何を考えているのかわからず、ずっと不気味だと思っていたこの人を始めて好ましく思った。気持ちを安易に口にしないところが心地よい。何事にもストレートなアオチさんは男女問わず人気があるけど、僕はどうしても素直に好意を示せない。
「さっさとオフィスに戻ろう。それで、早めにここを出ようぜ」
そのアオチさんが、今飛び出してきたばかりのエレベーターの方へ先頭を切った。
帰宅途中、いつものように自宅近くのコンビニに寄り、冷たい空に浮く異常に眩しい月を見上げて信号待ちをしていた。
丁度、今日あった悔しいことで心が闇に埋め尽くされそうだった。大通りの明かりはこんな時ちっとも役に立たない。月明りがかろうじて心が黒に塗りつぶされるのを押しとどめてくれている。
その空に、この時間珍しく鳥が空を旋回しているのを見た。
そりゃあ夜に活動する鳥だってたくさんいるだろう。自分がここら辺で見慣れないだけだ。
僕が思わず信号を一つ見送るほど見入ってしまったのは、その鳥の飛び方が、何か気持ちが悪かったからだ。
何だかこう、獲物を狙っているとも違う、監視しているというか……そう、探している、という感じだ。
そして、その鳥と目が合ったんだ。
「そんな訳ない――」
思わず口に出していた。
「どうした?」
アオチさんが心配そうな顔で、肩越しに僕を見た。
「あの……空を飛んでいる鳥と目が合ったことってありますか」
「……ないよ」
怪訝な顔で答えられた。この人といると、いつもこんな調子になってしまうから苦手だ。というか、僕に得意な人なんていないけど。
エレベーターが静かに止まった。
アオチさんが扉が開くまでの微妙な間すらもどかしそうに、足踏みをしている。
イラつかせるためかと思うほどゆっくり扉が開き、するりと飛び出したアオチさんの後に続く。
だだっ広いエントランスの中央で、不気味なくらい無機質な白い石のオブジェを背に、オゼさんが立っていた。
顔だけをこっちを向けて、涼し気に笑っている。まず両目があることを確認してほっとする。
「良かった、無事で。さっき鳥が恐ろしいものを咥えているのを見てさ――」
アオチさんが駆け寄りながら、さっき窓から目撃した光景を話している。
「鳥の数もどんどん増えているよな。でも人を襲うなんて今までなかった。どうなってるんだろな」
オゼさんが目玉の話を聞いても全く動じていないことに、僕の方が驚く。
話しながらもオゼさんが僕の顔をチラチラ見ていることに気がついていた。顔色の悪い僕を心配しているんだ。
何を考えているのかわからず、ずっと不気味だと思っていたこの人を始めて好ましく思った。気持ちを安易に口にしないところが心地よい。何事にもストレートなアオチさんは男女問わず人気があるけど、僕はどうしても素直に好意を示せない。
「さっさとオフィスに戻ろう。それで、早めにここを出ようぜ」
そのアオチさんが、今飛び出してきたばかりのエレベーターの方へ先頭を切った。
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