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第四章 守護鳥の夢
警告と勧告
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アオチ
「あれ? なんで鳥がいるの? そんなはずないんだけど」
何がそんなはずないだ。こうなるとこいつの言っていた話、全部の信ぴょう性が疑わしい。
「あれ、フォルムからしてタンチョウモドキだよな」
「心臓を喰う鳥な」
回収人が淡々と言い直す。
どっちだって良い。何でこんなところに現れたんだ。そいつの影はだんだん大きくなって、確実にこちらに向かってくる。俺たちの心臓を狙いに来たんじゃないよな。
そうだとしても、たった一羽だ。回収人がまたあの弓の銃で仕留めて終わるんだろう……って、
「おい、どうして突っ立ってるんだ。せめてあの手から生えてくる盾くらい出してくれよ」
回収人は全く動かず、タンチョウモドキを見つめている。
一瞬、手から剣を出すような素振りを見せたローヌも、両手を降ろした。
どうしたんだ、さっきまで俺を諦めないとか惚れそうなことを言ってくれていたのに……。
そこら中に光っている小さな星雲を蹴散らしながら、タンチョウモドキが俺たちの前に降り立った。
相変わらず動きが荒々しい。昼に甲板で見た時の恐怖が蘇る。
思わず隣にいたオオミをかばって前に立つ。そんな俺を横目に、回収人が言った。
「よお、久しぶりだな。黒いコスモスの詰まった心臓を喰う鳥」
「お久しぶりです。探しましたよ。とまり石の中にいるとは……あなたらしい」
コスモスの詰まった? さっき電車で回収人が話していた、あのタンチョウモドキがこいつか。
「お前こそ、どうしてこんなところまで追って来たんだ」
「あなたに警告と勧告に」
タンチョウモドキが俺たち全員をぐるりと見渡した。
ふかふかに見える白い胸の羽毛の下には、まだ黒いコスモスが埋まっているんだろうか。
「親切だな。何だ、教えてくれ」
「この場所は安全ではありません。神様にあなたがここにいることが知られています。これが警告です」
「まさか、俺のエトピリカが裏切ったのか?」
俺に一緒に居てくれと懇願したあいつがそんな事をするなんて、信じたくない。
「エトピリカ?」
「こいつ、監視鳥のことをそう呼ぶんだよ」
長い首を傾げたタンチョウモドキの目が「変わってますね」と言いたげだ。荷物を置いて来たので、エトピリカの画像を検索して見せてやれないのが残念だ。
「監視鳥はあなた達のことを一言も話していません。話したのはわたしの仲間たちです。あなたも忘れたわけではないでしょう、自分が神様の一番のお気に入りの回収人なことを。そうでなければあなたのやっていることは――」
「それは言うな」
回収人のこんな冷たい言い方を聞いたのは初めてだ。どんな言葉を使っても暖かさを隠せないやつだと思っていたのに。
「……それはすみません。さて、これが警告です。そして勧告は黒いコスモスを食べること」
「は?」
さすがの回収人も全く意味がわからないようだ。
「神様がここまで追って来た時に助けになります。神様につけられた傷でも黒いコスモスで完治する。逃げ切るつもりならきっと必要になります」
「だめだ」
回収人があっさり断った。
「おい、どうしてだ。せっかくタンチョウモドキが親切に……」
「それはわたしのことですか」
また長い首を傾げてそいつが俺を見た。もう、完全にちょっと頭のおかしい人間だと思われていそうだ。
「ここに黒いコスモスなんて咲いてないだろう。俺は心臓を喰う鳥なんて食わないからな」
「あ……」
このタンチョウモドキ、自分の中にまだ持っている黒いコスモスを食えと言っているのか。そしてそれにはこいつの胸を裂かなければならない。
「鳥の恩返しだと思って受け取ってくれませんか」
「鶴の恩返しみたいなことか」
オオミが黙れと言いたげな表情で俺を見ていた。この手のビジュアルの鳥は義理堅いのかと思っただけなのに。鳥にも回収人にも無視されている。
「受け取らないよ。お前も今更外に出ていくのは危ない。ここに俺たちと一緒にいろ。お前の仲間たちは可哀想に、この世界に潰される運命だが、お前はあの少年の気まぐれで、神様の制御を受けない身体だ。初めて次の世界に行く心臓を喰う鳥、悪くないじゃないか」
回収人が俺の好きな目のシワを作って笑う。タンチョウモドキは参ったと言うように、優雅に首を振った。
「こんな所まで追って来てお願いをしているのに、あなたは頑固ですね。でも警告は聞いてくれますね。油断しないでください。繰り返しますが神様はあなたの船がない事に既に気がついています。そして、わたしの仲間の告げ口で、あなたがここに入った事も知っている。必ずあなたを探しにやって来ます。その時、ここに選別が完了していない人間を見た時には――」
「強制的に俺だけが連れて行かれるんだな」
黙って聞いていたオゼがぽつりと言っ
「あれ? なんで鳥がいるの? そんなはずないんだけど」
何がそんなはずないだ。こうなるとこいつの言っていた話、全部の信ぴょう性が疑わしい。
「あれ、フォルムからしてタンチョウモドキだよな」
「心臓を喰う鳥な」
回収人が淡々と言い直す。
どっちだって良い。何でこんなところに現れたんだ。そいつの影はだんだん大きくなって、確実にこちらに向かってくる。俺たちの心臓を狙いに来たんじゃないよな。
そうだとしても、たった一羽だ。回収人がまたあの弓の銃で仕留めて終わるんだろう……って、
「おい、どうして突っ立ってるんだ。せめてあの手から生えてくる盾くらい出してくれよ」
回収人は全く動かず、タンチョウモドキを見つめている。
一瞬、手から剣を出すような素振りを見せたローヌも、両手を降ろした。
どうしたんだ、さっきまで俺を諦めないとか惚れそうなことを言ってくれていたのに……。
そこら中に光っている小さな星雲を蹴散らしながら、タンチョウモドキが俺たちの前に降り立った。
相変わらず動きが荒々しい。昼に甲板で見た時の恐怖が蘇る。
思わず隣にいたオオミをかばって前に立つ。そんな俺を横目に、回収人が言った。
「よお、久しぶりだな。黒いコスモスの詰まった心臓を喰う鳥」
「お久しぶりです。探しましたよ。とまり石の中にいるとは……あなたらしい」
コスモスの詰まった? さっき電車で回収人が話していた、あのタンチョウモドキがこいつか。
「お前こそ、どうしてこんなところまで追って来たんだ」
「あなたに警告と勧告に」
タンチョウモドキが俺たち全員をぐるりと見渡した。
ふかふかに見える白い胸の羽毛の下には、まだ黒いコスモスが埋まっているんだろうか。
「親切だな。何だ、教えてくれ」
「この場所は安全ではありません。神様にあなたがここにいることが知られています。これが警告です」
「まさか、俺のエトピリカが裏切ったのか?」
俺に一緒に居てくれと懇願したあいつがそんな事をするなんて、信じたくない。
「エトピリカ?」
「こいつ、監視鳥のことをそう呼ぶんだよ」
長い首を傾げたタンチョウモドキの目が「変わってますね」と言いたげだ。荷物を置いて来たので、エトピリカの画像を検索して見せてやれないのが残念だ。
「監視鳥はあなた達のことを一言も話していません。話したのはわたしの仲間たちです。あなたも忘れたわけではないでしょう、自分が神様の一番のお気に入りの回収人なことを。そうでなければあなたのやっていることは――」
「それは言うな」
回収人のこんな冷たい言い方を聞いたのは初めてだ。どんな言葉を使っても暖かさを隠せないやつだと思っていたのに。
「……それはすみません。さて、これが警告です。そして勧告は黒いコスモスを食べること」
「は?」
さすがの回収人も全く意味がわからないようだ。
「神様がここまで追って来た時に助けになります。神様につけられた傷でも黒いコスモスで完治する。逃げ切るつもりならきっと必要になります」
「だめだ」
回収人があっさり断った。
「おい、どうしてだ。せっかくタンチョウモドキが親切に……」
「それはわたしのことですか」
また長い首を傾げてそいつが俺を見た。もう、完全にちょっと頭のおかしい人間だと思われていそうだ。
「ここに黒いコスモスなんて咲いてないだろう。俺は心臓を喰う鳥なんて食わないからな」
「あ……」
このタンチョウモドキ、自分の中にまだ持っている黒いコスモスを食えと言っているのか。そしてそれにはこいつの胸を裂かなければならない。
「鳥の恩返しだと思って受け取ってくれませんか」
「鶴の恩返しみたいなことか」
オオミが黙れと言いたげな表情で俺を見ていた。この手のビジュアルの鳥は義理堅いのかと思っただけなのに。鳥にも回収人にも無視されている。
「受け取らないよ。お前も今更外に出ていくのは危ない。ここに俺たちと一緒にいろ。お前の仲間たちは可哀想に、この世界に潰される運命だが、お前はあの少年の気まぐれで、神様の制御を受けない身体だ。初めて次の世界に行く心臓を喰う鳥、悪くないじゃないか」
回収人が俺の好きな目のシワを作って笑う。タンチョウモドキは参ったと言うように、優雅に首を振った。
「こんな所まで追って来てお願いをしているのに、あなたは頑固ですね。でも警告は聞いてくれますね。油断しないでください。繰り返しますが神様はあなたの船がない事に既に気がついています。そして、わたしの仲間の告げ口で、あなたがここに入った事も知っている。必ずあなたを探しにやって来ます。その時、ここに選別が完了していない人間を見た時には――」
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黙って聞いていたオゼがぽつりと言っ
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