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第四章 守護鳥の夢
みんな一人
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アオチ
「……で、終わりか?」
みんなが一斉の俺の顔を見た。
「いや……ごめん。無言ちゃんの話は、その、シズカちゃんと俺が同じ立場ということだよな? 無言ちゃんのもう一つの人格だ。悲しい話だな――」
そう言いながら、ローヌを盗み見た。
こいつ、やっぱり毒殺者だったじゃないか。
「そんな目で見ないでよ……」
ローヌがうろたえている。いや、だってこいつ、毒殺者で回収人のストーカーで、もう色々だめじゃないか。
「だから、君たちの回収人にはずいぶんと怒られたよ。男たちの方は邪魔だから死んでもらった、というだけではないんだ。僕だって、ずっと一緒にいたら、別れが悲しいのは同じだよ。いつも乗って来て直ぐなんだ。僕が一人に決めるのは。今一番多くをしめている人間、本体を残すことにしてる。残りの人格は本体に殺してもらうんだ。だから、僕が自分の血を混ぜたりしたのは本当に今回が初めて――」
じわりじわりとローヌから遠ざかる俺の肩をオゼが抱いた。
こいつが本物の俺? じゃあ俺は偽物? だったら……
「オオミはどうなんだ?」
オゼに支えられたまま、直ぐ横に立つオオミを見た。
オオミが微笑む。こいつと出会ってから一番素直な笑顔だった。仕事中はいつもよそよそしかったオオミ、この船に乗ってからぐっと距離が縮まって、まるで本当の弟のように感じていた。
「安心してください、アオチさん。僕もオゼさんのもう一つの顔、欠片ですから。アオチさんと僕は一緒です」
やっぱりか。オゼと一つと言われた時より、すんなり受け入れられたのは何故だろう。
オオミは俺より昔からオゼの中にいる年下の兄さん、オゼは俺より後に生まれた人格のくせに、今身体を支配している年上の弟。
監視鳥が俺のことを『真ん中の子』、と呼んでいたのはこう言うことか。思わず笑いが漏れた。
「良かった、アオチさんが戻ってきた。僕は絶対三人で助かりたいと思っています。いえ、助かります」
こいつの方が長くオゼの中にいるんだもんな、頼りになるわけだ。
「ところで、お前、いつから気がついていたんだ」
俺の問いに、オオミが監視鳥の心臓の方を見ながら少し考え込む。
「回収人さんに『お前、殺してるな』、と言われた時でしょうか。思い当たることがあったので。僕が今までオゼさんの中にいられたのも、そのせいだと思います。僕はこれまで、何人も殺している」
今となっては予想していた答えだった。俺はどれだけ鈍いんだ。
「安心してください。アオチさんは誰も殺していない。僕はオゼさんの中に生まれる新しい人格を、僕たちのようなしっかりとした実態を持つ前に、排除してきました。それをだんだん思い出したんです。それにアオチさんもどこかで気がついていたはずです。今朝、会社で空を見ながら言ったでしょ。『三人とも助かるといいな』って」
オオミがすぐ側にいるのにとても遠く感じた。顔が赤い星雲に照らされている。もちろんオオミがオゼの人格を、つまり俺たちのようなやつらを殺してきたと聞いても、少しも嫌いになったりしない。本体を守るために必要な、嫌な役を引き受けてきたんだ。案外そのうちの何人かは俺のためだったのかも知れないとすら思った。オオミはそういうやつだから。
「僕が殺したのは――」
「無理しなくていいぞ」
放って置いたら罪の告白のように全部話し出しそうだ。
「そうじゃありません。僕が言おうとしたのは、僕の殺した中に、カオリさんとマモルくんはいない、ということです」
カオリさんと、マモルくんもオゼの一部なのか……一度も見たことが無いけれど。また混乱の渦に落ちそうだ。
「アオチのために整理してやるよ。もう少し神様の邪魔が入らなければ、だがな」
回収人が静かに言った。
「……で、終わりか?」
みんなが一斉の俺の顔を見た。
「いや……ごめん。無言ちゃんの話は、その、シズカちゃんと俺が同じ立場ということだよな? 無言ちゃんのもう一つの人格だ。悲しい話だな――」
そう言いながら、ローヌを盗み見た。
こいつ、やっぱり毒殺者だったじゃないか。
「そんな目で見ないでよ……」
ローヌがうろたえている。いや、だってこいつ、毒殺者で回収人のストーカーで、もう色々だめじゃないか。
「だから、君たちの回収人にはずいぶんと怒られたよ。男たちの方は邪魔だから死んでもらった、というだけではないんだ。僕だって、ずっと一緒にいたら、別れが悲しいのは同じだよ。いつも乗って来て直ぐなんだ。僕が一人に決めるのは。今一番多くをしめている人間、本体を残すことにしてる。残りの人格は本体に殺してもらうんだ。だから、僕が自分の血を混ぜたりしたのは本当に今回が初めて――」
じわりじわりとローヌから遠ざかる俺の肩をオゼが抱いた。
こいつが本物の俺? じゃあ俺は偽物? だったら……
「オオミはどうなんだ?」
オゼに支えられたまま、直ぐ横に立つオオミを見た。
オオミが微笑む。こいつと出会ってから一番素直な笑顔だった。仕事中はいつもよそよそしかったオオミ、この船に乗ってからぐっと距離が縮まって、まるで本当の弟のように感じていた。
「安心してください、アオチさん。僕もオゼさんのもう一つの顔、欠片ですから。アオチさんと僕は一緒です」
やっぱりか。オゼと一つと言われた時より、すんなり受け入れられたのは何故だろう。
オオミは俺より昔からオゼの中にいる年下の兄さん、オゼは俺より後に生まれた人格のくせに、今身体を支配している年上の弟。
監視鳥が俺のことを『真ん中の子』、と呼んでいたのはこう言うことか。思わず笑いが漏れた。
「良かった、アオチさんが戻ってきた。僕は絶対三人で助かりたいと思っています。いえ、助かります」
こいつの方が長くオゼの中にいるんだもんな、頼りになるわけだ。
「ところで、お前、いつから気がついていたんだ」
俺の問いに、オオミが監視鳥の心臓の方を見ながら少し考え込む。
「回収人さんに『お前、殺してるな』、と言われた時でしょうか。思い当たることがあったので。僕が今までオゼさんの中にいられたのも、そのせいだと思います。僕はこれまで、何人も殺している」
今となっては予想していた答えだった。俺はどれだけ鈍いんだ。
「安心してください。アオチさんは誰も殺していない。僕はオゼさんの中に生まれる新しい人格を、僕たちのようなしっかりとした実態を持つ前に、排除してきました。それをだんだん思い出したんです。それにアオチさんもどこかで気がついていたはずです。今朝、会社で空を見ながら言ったでしょ。『三人とも助かるといいな』って」
オオミがすぐ側にいるのにとても遠く感じた。顔が赤い星雲に照らされている。もちろんオオミがオゼの人格を、つまり俺たちのようなやつらを殺してきたと聞いても、少しも嫌いになったりしない。本体を守るために必要な、嫌な役を引き受けてきたんだ。案外そのうちの何人かは俺のためだったのかも知れないとすら思った。オオミはそういうやつだから。
「僕が殺したのは――」
「無理しなくていいぞ」
放って置いたら罪の告白のように全部話し出しそうだ。
「そうじゃありません。僕が言おうとしたのは、僕の殺した中に、カオリさんとマモルくんはいない、ということです」
カオリさんと、マモルくんもオゼの一部なのか……一度も見たことが無いけれど。また混乱の渦に落ちそうだ。
「アオチのために整理してやるよ。もう少し神様の邪魔が入らなければ、だがな」
回収人が静かに言った。
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