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第四章 守護鳥の夢
船の全て
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回収人
さっきも言ったが、オゼはいわゆる多重人格などではない。
いつもオゼの中に、同時にお前らがいる。アオチとオオミの三人で一人だ。この船に乗ってから、何を思ったのか、自分自身で殺したカオリさんとマモルまで呼び起こしていたがな。
良く観察してみろ。何かを感じるたび、他人には一人に見えていても、自分の中で色んな自分が騒ぎ出すのが解るはずだ。
それは年齢も性別もバラバラで、脈絡のない人物に思える。
でも、確かにお前だ。そいつら全員が、一人の中で同時に生きているんだ。面白いよな。
俺たちか? 神様の細胞の俺たちにそういう現象は起きないんだよ。
そして、そいつらはお前らの中で殺し合いをする。本体が、こいつは居なくても生きて行けると思った時、もしくは――自分の足を引っ張っていると思った時、つまり邪魔だと思った時だ。
オゼで言うと、カオリさんやマモルくんが、自分が大人になる過程で不要になったんだろうな。むしろ一緒にいることで、社会生活に支障が出てきたので殺したんだろ。
別人格達は本体の知らない所でも殺し合う。
オオミにとって、オゼは最近まで『知らない人』だったよな。
本体との接触がないまま、オゼの心に長く生きていた。思い出は共有していても、話したこともない本体。
それでも本能的に、オゼにとって邪魔なやつらがわかる。
そういうやつらをオオミは消して来た。アオチが現れるまではな。
アオチと出会ってから、そんな毒気は抜かれてしまった。
今度は会ったこともない本体より、アオチを守りたいという思いに傾いてしまったんだ。
オオミは自分の殺してきた死人に常に怯えていたから、面倒見の良いアオチも放っておけず、随分気にかけていたようだな。
本体のオゼだけが、一人でいることが多かった。可哀想にな。
あの船は回収人の身体から出来ているのは、知っての通りだ。
俺たちはこの旅の中で、本体が最後の一人に誰を選ぶのかを待つ。それは別に本体自身でなくても良いんだ。誰かに本体の座を譲っても良い。
回収人たちは、移動の準備に間に合うよう、船に残る人間が一人になるのを促す。――俺以外はな。
ローヌがやった自分の血液を飲ませて自殺させるなんて方法は論外だが、別の見方をすれば優しいのかもしれないな。
本体の罪の意識は軽減されるだろう。自分が選んだ、自分が消した、そんな感情を抱かなくて済むはずだ。
回収人に選ばれ、勝手に死んだ、そう思い込むことができる。
黒いコスモスを胸に詰めた心臓を喰う鳥、あいつを助けた少年なんかは、船に乗った途端、直ぐに気がついた。
自分で選ばなくてはいけないってな。回収人に負担をかけさせないように、自分であっという間に決着をつけた。
強い子だ。強さは自分との闘いだというのは間違えじゃない。むしろ言葉通りだ。
そして神様の体質の話だ。
お前らが――いや俺たちが必死に抗っている例の「次の世界に連れて行けるのは一人だけ」というルールだ。
神様を責めないでやってくれ、と前に言ったよな。あれは本心からだ。そして本体のオゼも責めないでやって欲しい。こいつはこれからお前たち以上の重荷を背負って行くんだから。
俺の心臓を喰って助かった人間が、次の世界で二度と会えない、というこの話に付け加えておく。
オオミとアオチ、そしてマモルにとって、次の世界はただ、他のやつらと再会できないだけの世界だ。こいつらは自分の中にまた新しい仲間を住まわせることになるだろう。
問題は本体のオゼだ。監視鳥の話が正しければ、本体はもう心の中に仲間を作ることは叶わない。次の世界で何度生まれ変わろうと、絶対に。つまりずっと一人だ。
オゼにとっては本当の孤独がこれから始まるんだ。
これから神様がここまで来るとすれば、その目的は二つだ。
本体であるオゼを永遠の孤独から救うため、強引に選別をすること、そして、俺を自分の身体に戻して、回収人を辞めさせることだ。
ローヌのような――というか俺以外全ての回収人は、移動が終わると神様の右手で船を収めた身体を癒して、次の移動に備える。
今回神様は俺をその役割から降ろすつもりだ。最後に会った時、神様に言われた。『僕の左眼になって。これからはずっと一緒にいて』ってな。
俺は神様の目になりたくない。自分のやっている事が酷いことだと自覚しつつも、まだ回収人を辞めたくないんだ。
さっきも言ったが、オゼはいわゆる多重人格などではない。
いつもオゼの中に、同時にお前らがいる。アオチとオオミの三人で一人だ。この船に乗ってから、何を思ったのか、自分自身で殺したカオリさんとマモルまで呼び起こしていたがな。
良く観察してみろ。何かを感じるたび、他人には一人に見えていても、自分の中で色んな自分が騒ぎ出すのが解るはずだ。
それは年齢も性別もバラバラで、脈絡のない人物に思える。
でも、確かにお前だ。そいつら全員が、一人の中で同時に生きているんだ。面白いよな。
俺たちか? 神様の細胞の俺たちにそういう現象は起きないんだよ。
そして、そいつらはお前らの中で殺し合いをする。本体が、こいつは居なくても生きて行けると思った時、もしくは――自分の足を引っ張っていると思った時、つまり邪魔だと思った時だ。
オゼで言うと、カオリさんやマモルくんが、自分が大人になる過程で不要になったんだろうな。むしろ一緒にいることで、社会生活に支障が出てきたので殺したんだろ。
別人格達は本体の知らない所でも殺し合う。
オオミにとって、オゼは最近まで『知らない人』だったよな。
本体との接触がないまま、オゼの心に長く生きていた。思い出は共有していても、話したこともない本体。
それでも本能的に、オゼにとって邪魔なやつらがわかる。
そういうやつらをオオミは消して来た。アオチが現れるまではな。
アオチと出会ってから、そんな毒気は抜かれてしまった。
今度は会ったこともない本体より、アオチを守りたいという思いに傾いてしまったんだ。
オオミは自分の殺してきた死人に常に怯えていたから、面倒見の良いアオチも放っておけず、随分気にかけていたようだな。
本体のオゼだけが、一人でいることが多かった。可哀想にな。
あの船は回収人の身体から出来ているのは、知っての通りだ。
俺たちはこの旅の中で、本体が最後の一人に誰を選ぶのかを待つ。それは別に本体自身でなくても良いんだ。誰かに本体の座を譲っても良い。
回収人たちは、移動の準備に間に合うよう、船に残る人間が一人になるのを促す。――俺以外はな。
ローヌがやった自分の血液を飲ませて自殺させるなんて方法は論外だが、別の見方をすれば優しいのかもしれないな。
本体の罪の意識は軽減されるだろう。自分が選んだ、自分が消した、そんな感情を抱かなくて済むはずだ。
回収人に選ばれ、勝手に死んだ、そう思い込むことができる。
黒いコスモスを胸に詰めた心臓を喰う鳥、あいつを助けた少年なんかは、船に乗った途端、直ぐに気がついた。
自分で選ばなくてはいけないってな。回収人に負担をかけさせないように、自分であっという間に決着をつけた。
強い子だ。強さは自分との闘いだというのは間違えじゃない。むしろ言葉通りだ。
そして神様の体質の話だ。
お前らが――いや俺たちが必死に抗っている例の「次の世界に連れて行けるのは一人だけ」というルールだ。
神様を責めないでやってくれ、と前に言ったよな。あれは本心からだ。そして本体のオゼも責めないでやって欲しい。こいつはこれからお前たち以上の重荷を背負って行くんだから。
俺の心臓を喰って助かった人間が、次の世界で二度と会えない、というこの話に付け加えておく。
オオミとアオチ、そしてマモルにとって、次の世界はただ、他のやつらと再会できないだけの世界だ。こいつらは自分の中にまた新しい仲間を住まわせることになるだろう。
問題は本体のオゼだ。監視鳥の話が正しければ、本体はもう心の中に仲間を作ることは叶わない。次の世界で何度生まれ変わろうと、絶対に。つまりずっと一人だ。
オゼにとっては本当の孤独がこれから始まるんだ。
これから神様がここまで来るとすれば、その目的は二つだ。
本体であるオゼを永遠の孤独から救うため、強引に選別をすること、そして、俺を自分の身体に戻して、回収人を辞めさせることだ。
ローヌのような――というか俺以外全ての回収人は、移動が終わると神様の右手で船を収めた身体を癒して、次の移動に備える。
今回神様は俺をその役割から降ろすつもりだ。最後に会った時、神様に言われた。『僕の左眼になって。これからはずっと一緒にいて』ってな。
俺は神様の目になりたくない。自分のやっている事が酷いことだと自覚しつつも、まだ回収人を辞めたくないんだ。
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