鳥に追われる

白木

文字の大きさ
83 / 94
第四章 守護鳥の夢

船の全て

しおりを挟む
回収人


 さっきも言ったが、オゼはいわゆる多重人格などではない。

 いつもオゼの中に、同時にお前らがいる。アオチとオオミの三人で一人だ。この船に乗ってから、何を思ったのか、自分自身で殺したカオリさんとマモルまで呼び起こしていたがな。

 良く観察してみろ。何かを感じるたび、他人には一人に見えていても、自分の中で色んな自分が騒ぎ出すのが解るはずだ。

 それは年齢も性別もバラバラで、脈絡のない人物に思える。

 でも、確かにお前だ。そいつら全員が、一人の中で同時に生きているんだ。面白いよな。

 俺たちか? 神様の細胞の俺たちにそういう現象は起きないんだよ。

 そして、そいつらはお前らの中で殺し合いをする。本体が、こいつは居なくても生きて行けると思った時、もしくは――自分の足を引っ張っていると思った時、つまり邪魔だと思った時だ。

 オゼで言うと、カオリさんやマモルくんが、自分が大人になる過程で不要になったんだろうな。むしろ一緒にいることで、社会生活に支障が出てきたので殺したんだろ。

 別人格達は本体の知らない所でも殺し合う。

 オオミにとって、オゼは最近まで『知らない人』だったよな。

 本体との接触がないまま、オゼの心に長く生きていた。思い出は共有していても、話したこともない本体。

 それでも本能的に、オゼにとって邪魔なやつらがわかる。

 そういうやつらをオオミは消して来た。アオチが現れるまではな。

 アオチと出会ってから、そんな毒気は抜かれてしまった。

 今度は会ったこともない本体より、アオチを守りたいという思いに傾いてしまったんだ。

 オオミは自分の殺してきた死人に常に怯えていたから、面倒見の良いアオチも放っておけず、随分気にかけていたようだな。

 本体のオゼだけが、一人でいることが多かった。可哀想にな。

 あの船は回収人の身体から出来ているのは、知っての通りだ。

 俺たちはこの旅の中で、本体が最後の一人に誰を選ぶのかを待つ。それは別に本体自身でなくても良いんだ。誰かに本体の座を譲っても良い。

 回収人たちは、移動の準備に間に合うよう、船に残る人間が一人になるのを促す。――俺以外はな。

 ローヌがやった自分の血液を飲ませて自殺させるなんて方法は論外だが、別の見方をすれば優しいのかもしれないな。

 本体の罪の意識は軽減されるだろう。自分が選んだ、自分が消した、そんな感情を抱かなくて済むはずだ。

 回収人に選ばれ、勝手に死んだ、そう思い込むことができる。

 黒いコスモスを胸に詰めた心臓を喰う鳥、あいつを助けた少年なんかは、船に乗った途端、直ぐに気がついた。

 自分で選ばなくてはいけないってな。回収人に負担をかけさせないように、自分であっという間に決着をつけた。

 強い子だ。強さは自分との闘いだというのは間違えじゃない。むしろ言葉通りだ。

 そして神様の体質の話だ。

 お前らが――いや俺たちが必死に抗っている例の「次の世界に連れて行けるのは一人だけ」というルールだ。

 神様を責めないでやってくれ、と前に言ったよな。あれは本心からだ。そして本体のオゼも責めないでやって欲しい。こいつはこれからお前たち以上の重荷を背負って行くんだから。 

俺の心臓を喰って助かった人間が、次の世界で二度と会えない、というこの話に付け加えておく。

オオミとアオチ、そしてマモルにとって、次の世界はただ、他のやつらと再会できないだけの世界だ。こいつらは自分の中にまた新しい仲間を住まわせることになるだろう。

問題は本体のオゼだ。監視鳥の話が正しければ、本体はもう心の中に仲間を作ることは叶わない。次の世界で何度生まれ変わろうと、絶対に。つまりずっと一人だ。

オゼにとっては本当の孤独がこれから始まるんだ。

 これから神様がここまで来るとすれば、その目的は二つだ。

 本体であるオゼを永遠の孤独から救うため、強引に選別をすること、そして、俺を自分の身体に戻して、回収人を辞めさせることだ。

 ローヌのような――というか俺以外全ての回収人は、移動が終わると神様の右手で船を収めた身体を癒して、次の移動に備える。

 今回神様は俺をその役割から降ろすつもりだ。最後に会った時、神様に言われた。『僕の左眼になって。これからはずっと一緒にいて』ってな。

 俺は神様の目になりたくない。自分のやっている事が酷いことだと自覚しつつも、まだ回収人を辞めたくないんだ。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち

ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。 クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。 それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。 そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決! その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。

【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】

絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。 下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。 ※全話オリジナル作品です。

処理中です...