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弓屋 晶都

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第1話 夢の中の出会い (3/7)

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『ねーねー、私先週からお兄ちゃんに誘われてこんなゲームしてるんだけどー』
画面にはURLが添えられている。
最近流行りの絵柄より、もうちょっとデフォルメされたような可愛い雰囲気のキャラクターの後ろに、ファンタジーな世界が広がっているようなイラスト。
RPGっぽい感じなのかな……?
『今招待キャンペーンやってるのっっ』
『えー、また登録してーって話?』
『・・・(←スタンプ)』
『やれやれだぜ(←スタンプ)』
『おねがーい! どーしても欲しいアイテムがあるのーっ』
『なにとぞなにとぞ……(←スタンプ)』

この辺りで『おかえり』のスタンプが並んでいる。
きっと既読の数が増えて、私がこの画面を開いたことに気付いたんだろう。
他の四人も全員揃っているらしかった。

私は『ただいま』とスタンプを返す。
みんな、ずっとスマホを眺めてたのかな……。
ログを見る限りそんなに量はなかったけれど、私以外に離席を告げたような子はいなかった。

『三人招待したら、OKなのーっっ』
言われて、ぎくりとする。
三人ってことは、アイカを除いた四人のうち一人以外は全員入れないとダメって事だよね……。
なんて断ろう……と思う間に、画面には新しい言葉が届く。
『私容量いっぱいだからパスー』
グループの中では一番クールでサバサバした性格の玲菜だ。
『えー』
『えーんえーん(←スタンプ)』
『入れて、招待のやつやったら、消してくれていいからーっっ』

玲菜にバッサリ断られたアイカに、アイカの一番の仲良しのひまりがスタンプを返す。
『もーしょーがないなー(←スタンプ)』
『大感謝!!(←スタンプ)』

そこへ、遥もふんわりとした彼女らしい絵柄のスタンプで返す。
『任せて~(←スタンプ)』
彼女は元々ゲームも好きだし、きっと返事が遅れたのは送られたサイトを見てたんだろうなぁ。
『ありがとーっっ!(←スタンプ)』
私もそろそろ返事を返さないと……。
どちらにしろ、玲菜が断った以上私に拒否権はなさそうだしね……。
『いいよ!』と元気に笑うスタンプに指を重ねた時、新しい言葉が届く。
『みさきも入れてくれるよね!?』
名前を出されて、苦笑を浮かべながら私はその元気そうなスタンプを送信した。

インストールしてくるね。と伝えて通話アプリを閉じる。
インストールしながら、送られたゲームの公式サイトを見る
あんまり、こういう本格的なRPGってやった事ないし、興味もないんだけどなぁ……。
まあ、友達の頼みなら仕方ないよね。
後で消せばいいだけだし……。

スマホにはまだ通知で『チュートリアルまでで良いから!』とか
『紹介者のIDのとこにー……』と説明が入ってくる。

チラと部屋の壁にかかった時計を見る。
二十時かぁ。チュートリアルってどのくらい時間かかるのかなぁ。

インストールが終わったのを見て、それを報告してからアプリを起動する。
夢のような世界と、可愛いキャラクター達。
音楽も綺麗だし、雰囲気は好きかも……。

キャラの性別、髪型、肌の色や目の色を選ぶ。
女の子で、髪は……こういう時ついついロングを選んでしまう。
自分の髪はやっと肩に付くくらいの長さなので、ロングには憧れがあったりする。
……実際こんなに伸ばしたら、毎日のお手入れが大変そうだけどね。

髪色は、ピンク、黄緑、水色、紫……とカラフルな色をタップして、結局黒髪を選んでしまった。
あんまり派手なのは自分には似合わない気がして。
けど茶色だけは選びたくなかったので、黒にした。
実際の自分はちょっと色素が薄くて髪も目も茶色っぽい。
中学に入ると、染めていないかと先生に問われた。
やってもいない事を疑われるのは、酷く嫌な気分だった。
このくらいはっきりした黒髪なら、きっと何も言われないんだろうな……。

そんなわけで、私の選んだキャラは、黒髪黒目で長い髪を後ろで緩く二つに結んだ大人しそうな子になった。
……ゲームの中でくらい、もっと派手な見た目でもいいんだろうけど……。
『戻る』のボタンに指を伸ばしてみたけれど、すぐ消しちゃうゲームなんだし、もうこのままでいいや。
次はキャラの名前かぁ。『みさみさ』でいいかな……。
私は自分の名前、実咲(みさき)の頭二文字を繰り返して入力する。
もうそろそろ子供っぽいかなとは思うんだけど、小四の頃からゲームの時にはいつもこれを使っている。
少し悩んだものの、結局私はそのまま『完了』と『はい』のボタンを押した。
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